渡部暁斗、骨折で銀メダル「よい子はマネしないように」

平昌から帰国したノルディックスキー複合の(左から)山元、渡部善、渡部暁、永井、渡部剛=羽田空港(撮影・出月俊成)
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 平昌五輪ノルディックスキー複合個人ノーマルヒルで2大会連続となる銀メダルを獲得した渡部暁斗(29)=北野建設=が24日、羽田空港着の航空機で帰国した。全試合終了後、関係者によって大会前に左肋骨(ろっこつ)を骨折していたことが明らかになったが、「自分としては言いたくなかった」と明かし、「骨折がなければ金メダルを獲れていたとは思わない。折れたことが言い訳にはならないと思っていた。骨の1本、2本くらいくれてやるという気持ちで臨んでいた」と振り返った。

 けがの状態はコーチや選手には伝えていたものの、自身の口からは最後まで公言しなかった。2月2日のW杯白馬大会のジャンプ練習で転倒し、左肋骨(ろっこつ)に亀裂が入った。ストックワークをすると痛みがあり、試合直前はクロスカントリーの練習に支障が出たものの、「悔やんだところで骨がつながるわけじゃない」と決してマイナス要因とは捉えていなかったという。

 「昨年11月のフィンランド大会でも同じ箇所を骨折して勝っているし、白馬の試合も優勝できているので。けが自体は結果やパフォーマンスの言い訳にならない」。入念な体のケアを行い、痛み止めを飲んで臨んだ14日のノーマルヒルでは最後まで優勝争いを演じた。

 負傷を押して銀メダルを獲得したが、1つ心配もある。「僕はこういう年齢(29歳)だからいいけど、この報道を見た若い子が無理して試合に出ることが懸念。よい子はマネしないように(笑)」とクギを刺し、「無理をするつもりはなかったし、出られないという判断だったら出場を辞退するつもりだったが、ドクターもOKだったので可能な限り努力した。これはイレギュラーなことで、五輪だったから無理して出た」と“フォロワー”が出ないように強調した。

 骨折の公表を控えた背景には地元への気遣いもあった。「僕としては白馬大会がネガティブに伝わるのが嫌だったし、大会関係者も(負傷は)大会を開催したせいだと思ってほしくなかった。僕は白馬で大会ができてうれしかったし、見に来てくれた人がたくさんいてうれしかった。ポジティブに捉えたかったので言いたくなかった」。決して周囲に不安を与えまい、という強い覚悟をにじませた。

 目標の金メダルには惜しくも届かなかったが、新たな教訓も得た。「物事は自分の思い通りにいかないが、けがをしていても調整方法を工夫すれば結果につながると分かった。常にその瞬間、瞬間に対して最善の選択をすれば結果はついてくると思う」。3月から再開するW杯では総合優勝のチャンスがある。「最後には頂点に立っていられるように、いいレースをしていきたい」。悔しさを抱えながらも、すがすがしく笑った。

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