【サッカー】日本代表が抱えるジレンマ

 サッカー日本代表は、12日にW杯アジア2次予選の第7節として敵地でシンガポールと対戦する。そして17日には、同じく敵地でカンボジアと対戦。この2試合で年内の代表活動は終了となる。

 1月のアジア杯では8強に終わり、当時、チームを率いていたハビエル・アギーレ前監督は、スペインリーグでの八百長疑惑で名前が挙がり、実際に捜査が始まったことで、アジア杯終了後に契約解除。後任がバヒド・ハリルホジッチ監督に決まり、2試合の親善試合(チュニジア戦、ウズベキスタン戦)で2連勝と就任の初陣を飾り、6月からは早くも18年のロシアW杯へとつながるアジア予選がスタート。初戦にはホームでシンガポールに0-0で引き分けた。

 国内組だけで臨んだ8月の東アジア杯では未勝利で終戦。10月にオマーンで行われたW杯予選のシリア戦で勝利したことで、全10節のアジア2次予選を何とか首位で折り返す…。

 今年に入り、ここまでの流れをざっと振り返ればこんなところか。ブラジルW杯終了後、1年もたたないうちに既に次のW杯予選がスタートしており、監督交代なども重なって、慌ただしく過ぎていった印象がある。

 代表チームの強化は順調に進んでいるのだろうか。チームを預かるハリルホジッチ監督は「まだまだ向上していかないといけないが、確実に向上している部分はある」と手応えを口にしているが、W杯アジア2次予選で同組のチームは、やはり格下。6月のシンガポール戦ではふがいない結果に終わったが、ここまでを振り返ると、相手との実力差は明白で、しゃく熱のオマーンで3-0と退けたシリアを“グループ最大のライバル”と位置づけるのは少し、もの悲しさも感じてしまう。

 ロシアW杯からアジア地区の予選フォーマットが変わり、W杯までの予選の試合数も増えることになる。さらには、2次予選から参加することで、これまであまり対戦する機会がなかった国と同組となっている。当然、実力差のある相手は、日本を相手に守備を固めながらカウンターを狙うという戦術をとってきており、現在の日本はこういった相手の攻略を毎試合、求められている状態だ。

 これは既に決定済みのルールの中で予選を戦う以上、どうしようもない。ただ、当然、W杯本大会では日本を相手にそのような戦術をとるチームは少ないだろう。ブラジルW杯での惨敗後、「もう一度、世界に挑戦する」と目標を定めて世界を倒すためにチームを作り直している段階としては、18年に向けた方向性と、現在求められている方向性の違い、そこにチーム強化のジレンマを抱えている。

 MF長谷部誠は「2次予選で世界基準というのを求めるのは難しい。普段プレーしているクラブでの方が、世界を感じられるのは確か」と語り、FW本田圭佑も「相手をリスペクトはしていますが」と前置きした上で「(目指しているのは)アジアの相手では試せないところもある。そういう意味ではシンガポール、カンボジアはアジア(で勝つ)のための戦い方になるのでは」と話す。W杯予選という真剣勝負の場であるが、求められているのは、W杯本大会向けではない戦術というのが実情だろう。

 それだけに長谷部は「だからこそ、2次予選でもいかに(世界に目を向けたプレーが)できるかだと思う」と語る。W杯予選だけに結果を最優先に求めるのは当然だが、その細かいプレーのベクトルが、果たして世界の方を向いているのか。それをしっかり見極めたいと思う。(デイリースポーツ・松落大樹)

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