ハリル効果が宇佐美の数字に表れた!?

 Jリーグは今季からJ1全試合で「トラッキングシステム」を導入した。トラッキングシステムとは軍事技術として使用される自動追尾(トラッキング)システムを応用したもので、スタジアムに設置した6台の専用カメラでピッチ全体を撮影し、選手、ボール、審判の動きを追尾するシステム。選手の走行距離、走行スピード、プレーの位置、ボール支配率などのデータをリアルタイムで取得することが可能で、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、プレミアリーグなど欧州主要リーグでも活用されている。

 J1では毎節全試合の走行距離とスプリント回数(時速24キロ以上で走った回数)が公開され、毎節1試合を対象にアニメーションおよびインターネットラジオ速報、各種データで試合の詳細を伝える「LIVEトラッキング」も実施している。試合観戦における新たな楽しみ方を提供し、新規ファン拡充の効果も期待される。

 例えば日本代表FW宇佐美貴史(22)=G大阪=の第6節までの走行距離とスプリント回数は

 第1節・FC東京(79分)8・23キロ 15回

 第2節・鳥栖  (90分)9・30キロ 17回

 第3節・甲府  (90分)9・98キロ 8回

 第4節・名古屋 (89分)10・04キロ 25回

 第5節・清水  (90分)10・50キロ 27回

 第6節・湘南  (89分)9・59キロ 22回

※()内は出場時間

となっている。

 代表選出前の第3節までと代表から戻った第4節以降を比較すると、平均走行距離の増加はもちろん、スプリント回数の増加が際立っている。G大阪DF岩下は宇佐美の変化について「守備の場面で走ることでの貢献度に自ら気付いて(代表から)帰ってきた」と話し、宇佐美が2得点を挙げた清水戦後には、長谷川監督も「ゴールの後も守備で献身さを見せてくれた」と評価した。

 守備意識の向上がスプリント回数の激増に繋がっているとみられ、“ハリル効果”が数字にも表れたと言える。宇佐美自身も「もっと無駄走りが必要。90分出たい、変えられたくないって思いをプレーで表現できれば」と強い自覚を口にした。

 参考までにブンデスリーガ公式HPによると、日本代表FW岡崎慎司(29)=マインツ=の直近6試合の走行距離とスプリント回数は

 第24節・ボルシアMG  (90分)11・5キロ 46回

 第25節・アウクスブルク (90分)11・29キロ 42回

 第26節・ウォルフスブルク(90分)10・87キロ 33回

 第27節・ブレーメン   (90分)10・37キロ 38回

 第28節・レーバークーゼン(90分)10・5キロ 36回

 第29節・フライブルク  (90分)11・05キロ 27回

※()内は出場時間

となっており、宇佐美を大きく上回っていることが分かる。

 もちろん、走行距離やスプリント回数でサッカー選手の価値や評価が決まることはないし、宇佐美が走るようになったことで4戦連発6試合7得点とゴールを量産しているわけでもなく、数字はあくまで目安にすぎない。ただ、宇佐美のポジティブな変化を示す一つの物差しと言えるかもしれない。

 チーム全体の走行距離に目を移すと、J1第6節は

 (1)FC東京 118・04キロ

 (2)広島   117・84キロ

 (3)新潟   116・42キロ

 (3)名古屋  116・42キロ

 (5)湘南   116・41キロ

 (6)鳥栖   116。00キロ

 (7)横浜M  115・90キロ

 (8)仙台   115・88キロ

 (9)鹿島   115・58キロ

 (10)柏    115・58キロ

 (11)清水   115・27キロ

 (12)浦和   115・13キロ

 (13)川崎   114・19キロ

 (14)神戸   113・35キロ

 (15)G大阪  111・45キロ

 (16)松本   111・05キロ

 (17)甲府   110・78キロ

 (18)山形   109・70キロ

 平均走行距離114・74キロ

 となっている。

 また、チーム全体のスプリント回数は

 (1)名古屋  234回

 (2)清水   208回

 (3)神戸   199回

 (4)G大阪  197回

 (5)新潟   187回

 (6)松本   185回

 (7)湘南   178回

 (8)山形   174回

 (9)柏    171回

 (10)FC東京 170回

 (11)浦和   166回

 (12)鹿島   164回

 (13)仙台   159回

 (14)鳥栖   156回

 (15)横浜M  150回

 (16)広島   144回

 (17)甲府   134回

 (18)川崎   133回

 平均スプリント回数172・7回

 となっている。

 ハリルホジッチ監督は14日のJ1、J2合同実行委員会の冒頭で「(走行距離が)115~120キロに達していればいいレベル」と話しており、浦和までが“合格”ということになる。ただ、走れば勝てるというわけでもなく、走行距離で対戦相手を上回ったチームの対戦成績は3勝2分け4敗と負け越している。

 直近のブンデスリーガ第29節と比較すると、チーム全体の走行距離は

 (1)フランクフルト     119・1キロ

 (2)マインツ        118・5キロ

 (3)フライブルク      117・5キロ

 (3)ホッフェンハイム    117・5キロ

 (5)シュツットガルト    117・1キロ

 (6)シャルケ        116・5キロ

 (7)アウクスブルク     115・5キロ

 (8)ヘルタ・ベルリン    114・6キロ

 (9)ボルシアMG      114・3キロ

 (10)バイエルン・ミュンヘン 113・8キロ

 (11)ケルン         113・6キロ

 (12)ウォルフスブルク    113・2キロ

 (13)ハンブルガーSV    113キロ

 (14)パーダーボルン     112・3キロ

 (15)ドルトムント      110・3キロ

 (16)ブレーメン       110・2キロ

 (17)レーバークーゼン    104・2キロ

 (18)ハノーファー      102キロ

 平均走行距離113・5キロ

 チーム全体のスプリント回数は

 (1)フランクフルト     256回

 (2)ウォルフスブルク    235回

 (3)ボルシアMG      212回

 (3)ハンブルガーSV    212回

 (3)ドルトムント      212回

 (6)シュツットガルト    210回

 (7)レーバークーゼン    206回

 (8)アウクスブルク     202回

 (9)マインツ        190回

 (9)フライブルク      190回

 (11)シャルケ        188回

 (12)ブレーメン       181回

 (13)ケルン         177回

 (14)バイエルン・ミュンヘン 175回

 (15)ヘルタ・ベルリン    173回

 (16)パーダーボルン     170回

 (17)ホッフェンハイム    156回

 (18)ハノーファー      155回

 平均スプリント回数194・4回

 となっている。

 平均走行距離ではJ1が上回ったが、ブンデスリーガがシーズン終盤を迎え、選手に疲労が蓄積しているためかもしれない。とはいえ、スプリント回数の違いは顕著で、200回超のチームがJ1では2チームにとどまったが、ブンデスでは8チームも出ており、平均スプリント回数でも20回以上の差が出ている。Jリーグに比べより速く強度の高い試合が展開されているという見方もできる。

 繰り返しになるが数字はあくまで目安に過ぎない。サッカーはゴール数で相手を上回って勝利するスポーツ。そのためいかに効果的に走るか、その質を突き詰めていくことが大切になってくる。いずれにしてもトラッキングシステムを活用して、少し違った角度からサッカーを楽しんでみるのもいいかもしれない。(デイリースポーツ・山本直弘)

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