「拍子木が聞こえねえんだけど」蔦重の最期は、史実エピソード!綾瀬はるかの「お稲荷様」が死を告げる【べらぼう】

江戸の町民文化に大きな影響を与えた稀代のプロデューサー・蔦屋重三郎の人生を、横浜流星主演で描いていく大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。12月14日の第48回(最終回)「蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」では、重三郎の人生の終盤が描かれたが、ドラマの語りに仕掛けられていた秘密と、大河ドラマの伝説となりそうなオチに、SNSが最後のお祭り状態となった。

■ 死の間際まで、仕事に励む蔦重…最終回あらすじ東洲斎写楽のブームが去ったあとも、精力的に仕事の幅を広げる重三郎だったが、不治の病と言われる脚気に倒れる。重三郎は養生するより「死の間際まで書をもって世を耕しつづけた」と言われることを望み、戯作者や絵師たちにさまざまな指図をして、年明けに数多くの本を出版した。

しかし、そんな重三郎の夢のなかに九郎助稲荷(綾瀬はるか)があらわれ、翌日の午の刻に、拍子木を合図にあの世に連れていくと告げる。

妻・てい(橋本愛)とともに迎えを待つ重三郎は、自分は陶朱公のように町を栄えさせることはできなかったと悔いる。しかし、ていは黄表紙や狂歌を通じて国中の人々の心を満たし、笑いという名の富をふるまったと称えた。

やがて多くの人が床に集まり、午の刻に意識を失った重三郎を呼び戻すため「屁」の踊りをする。そこで目を覚ました重三郎が「拍子木が聞こえねえんだけど」とつぶやいた瞬間、どこからともなく拍子木が響いた──。

■ 江戸時代は不治の病…自身の死まで商売に!蔦屋重三郎は1797年に、まだ働き盛りの47歳(数え年では48歳)で亡くなっている。死因は、末梢神経に障害が起こり、心不全を引き起こす「脚気」だ。

ビタミンB不足が原因と判明するのは、大正時代になってから。それまではガンなみの不治の病とされ、特にビタミンB不足となりやすい白米食が中心の江戸で流行したため「江戸わずらい」とも呼ばれた。ドラマでも出てきたが、玄米や雑穀中心のエリアに引っ越すと症状が改善する例も多かったという。

そのため、SNSでも「脚気」というワードが出た瞬間「日本橋に来てから蕎麦を食べず白米ばかり食べるから」「玄米と糠漬けを持ってこい。脚気に効くのは玄米と糠漬けだからな!」「今から田舎行って粟や稗などを食えーーー!!!」「今すぐ江戸にビタミンBの錠剤を届けたい・・・!」「死因が不慮の事故とか現代でも治療が難しい病気とかじゃなくて脚気なのがなんとも歯がゆいんだよなぁ」と、悔しさ爆発状態となっていた。

しかし、そこは根っからの商売人であり、笑いを取るためなら体を張ることも辞さないという、リアクション芸人並のサービス精神の持ち主である重三郎。

「これが最後の願い」というのを殺し文句に、自分が見たいと思う各作家の作品をどんどんリクエストし、さらに弱りきった姿で店に立つ(このときの横浜流星の、今にもあの世に行きそう感がすごかった・・・)など、自分の死をちゃっかりと利用しまくった。

この商魂たくましい姿に、SNSも「死ぬ人間のワガママを聞いてやってください・・・のテイで超絶豪華アンソロジーを依頼しようとしている。商売の悪魔すぎるだろ」「皆の尻タタキに使いやがったな自分の命を・・・このべらぼう編集者め!!!!(そして乗せられる馬琴先生)」「本屋の、編集者としての業だなこれは」「ここで、いろんな人が蔦重のために動いてくれる・・・彼の今まで育んできた人脈が本当に」「脚気も逃げ出す賑やかさ」など、ただただ感心するような声が集まった。

■ 最期は史実エピソード!キツネがお告げに重三郎の最期の様子は、宿屋飯盛(又吉直樹)が碑文に書いているように「自分は今日の昼時に死ぬ」と周囲の人に予言し、臨終の準備をしたものの昼が過ぎ「(芝居の終わりに鳴らす)拍子木が鳴らない。ずいぶん遅いな」と告げたあと、その日の夕方に死亡が確認された・・・と伝わっている。

脚本の森下佳子が大好きだというそのエピソードは、がっつり使われるだろうと思われたが、まさかそれが、語りの九郎助稲荷のお告げだったとは!

第1回の「明和の大火」で、重三郎に助けてもらったお礼を述べるという超絶ロングパスを決めたのち、「一つだけ何でも知りたいことにお答えします」というサービスを「本当ですか?」と思わず出てきた問いに答えてしまってチャラにするというドジっ子ぶりを見せ、

さらに「午の刻(正午頃)に迎えに来ます。合図は拍子木です」と、御臨終の準備を整えた。九郎助稲が語りの形でずっと重三郎を見守っていたのは、この役目を担っていたからなのかと、ストンと腑に落ちた。

この超展開にSNSも「助けられた時から『お礼にこの人のお迎えは自分がやろう』って決めてたのなら、ずっと蔦重のこと見守ってナレーション役になってたのにも理由ができる」「まさかここで稲荷さまが蔦重の夢枕に現れるとは思わんやんwww」「満を持して初顔合せなのにポンコツ過ぎる九郎助稲荷」「蔦屋重三郎の最期を笑えるモノにする気満々の稲荷様」「あっけらかんと『明日迎えに行くから』って言うの、まさに人ならぬものって感じ」など、驚きと笑いにあふれたコメントが飛び出していた。

■ 蔦重&てい夫婦に感動…一転、屁踊りで号泣!?そして、ここで最後の奮闘を見せたのがおていさんだ。夫が「今日の昼に死ぬ」と知ったら、普通なら泣き崩れてなにもできなさそうなのに、後継者に手代のみの吉(中川翼)を推薦したり、取引先のリストをチェックさせたり、碑文の依頼や戒名まで抜かりなく手配。

あまりのシゴデキぶりに、SNSで「死ぬ準備万端なのがシュールすぎ」「おていさんのことを考えると辛いがおもしれー夫婦すぎる」などの「臨終前コント」を楽しんだという声が。

さらに「自分は陶朱公になれなかった」という重三郎に「人々のお腹は満たさなくても心を満たした」という、これ以上はないであろう手向けの言葉には「貧しいと切り捨てられがちなエンタメをペイ・フォワードに・・・おお、今の世に通じる話だ」「おていさんの旦那さまは世の中に心の富を振舞ったと、1年通して蔦重の生涯を見てきた1視聴者の私の気持ちを代弁してくれた」「蔦重の芯の芯まで理解して寄り添い続けた、あなたもべらぼうな女房だ」「蔦重とおていさん、めちゃくちゃ素敵な夫婦だった」と、号泣するような言葉が。

しかし、そんな臨終前のしんみりムードを、今や『べらぼう』名物となった「屁踊り」を、重三郎を呼び戻すためにその場にいた全員が踊るという、いい意味で「なんだこれは?」な展開に「復活の呪文『屁!』」「屁で号泣! そんな大河ある!? (褒めてます)」「おていさんが危篤状態の重三郎を兄さんに託して、自分も屁踊りに参加するの、めちゃくちゃおもしろい」「こんな賑やかな死に際の大河初めてだ」と、SNSの号泣ムードが一転泣き笑いになった。

■ 1年間の壮大な黄表紙、拍子木が鳴り終幕このカオスな状況からどうやってオチを付けるのよ! と思ったら、重三郎の「拍子木が聞こえねえ」という苦情のような一言に、全員が「へ?」と聞き返したところに、チョーンと響く拍子木・・・

落語ばりに「おあとがよろしいようで」と言いたくなるこのラストには「なんという粋なお見送りと最期でしょう」「拍子木の回収が上手すぎて血圧上がった」「この『べらぼう』そのものが壮大な黄表紙として完結したような秀逸なラスト」などの絶賛の声の大嵐状態に。

ちなみに「なんで拍子木が聞こえなかったのか」については「拍子木乱れ打ちして『も~全然蔦重に届かないじゃないか! 屁が邪魔して!』 とプリプリしてる九郎助稲荷」など、拍子木の音が屁の合唱にかき消された説と「九郎助稲荷はみんなの『へ!』をもうちょっと見てたくて拍子木打つの遅れちゃったんじゃない?」と、九郎助稲荷のやらかし説の両方が上がっていたが、果たして・・・?

重三郎の死という一大イベントを一ミリも湿っぽく描写することなく、盛大にたわけつづけた男の人生にふさわしい、全登場人物が勢ぞろいして「屁」の大合唱とダンスで飾るという、まるでミュージカルのフィナーレのようなエンディング。

そしてラストも、拍子木の音で余韻を断ち切り、最後のテーマソングにつなげるというのが、まるで「あ・・・(命の)火が消えた」の一言で下げる落語の『死神』のように、後腐れのない粋なオチではないか。涙よりも笑いを届けることに奔走した、蔦屋重三郎にふさわしい最後だった。

大河ドラマは主人公の死で締められるのがほとんどだが(近年の例外は『光る君へ』ぐらいか)、これが多くの命を殺めてきた武将だと、己の死と笑顔で向き合うというのはレアケースだ。SNSの声のなかには「こういう最期を迎えたい」という声も多数あった。

臨終の姿までエンタメだった蔦屋重三郎という男と、その幕引きを明るく描ききった森下佳子や主演の横浜流星、そしてすべての関係者に「おもしろかったじゃねえか! このべらぼうめ!!!」という言葉を、謹んで送りたいと思う。

次の大河ドラマ『豊臣兄弟!』は1月4日からスタート。仲野太賀演じる豊臣秀長を主人公に、兄・豊臣秀吉(池松壮亮)とともに戦国の世を駆け抜け、立身出世を果たす姿を描いていく。NHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分から放送される。

第1回『二匹の猿』では、百姓として平穏に生きる小一郎(のちの豊臣秀長)のもとに、織田信長(小栗旬)の家臣となった兄・藤吉郎(のちの豊臣秀吉)が現れ、武士の世界に引き込もうとするところを、15分拡大版でお送りする。

文/吉永美和子

(Lmaga.jp)

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