ニンジン農家ら有志の奮闘、淡路島で映画館の魅力を

常設の映画館がない淡路島で、もう一度、映画の火を灯すべく、有志15人のメンバーによる「CINEMAcarrot(以下シネマキャロット)」が発足。2021年1月に島内のイベントスペース「洲本オリオン」(兵庫県洲本市)で久々の長期ロードショーを実現し、今も毎月続けている背景や思いについて訊いた。

代表を務める大田志穂さんの本業は、昔ながらの固定種のニンジンなどを育てている自然栽培の農家だ。大阪育ちの大田さんは、5年前に夫と子ども2人の家族4人で淡路島に移住。南あわじ市の地域おこし協力隊を経て、「淡路島YASAIBA(やさいば)」という屋号で、7反半もの田んぼと畑を切り盛りしながら、この活動に携わっている。

きっかけは、『なんのちゃんの第二次世界大戦』という全編淡路島ロケの河合健監督の映画だという(関西では、7月10日から順次公開)。2019年に島内で協力者が募集された際に参加し、作品作りの魅力について知った大田さん。コロナ禍でもあり、ようやく完成した淡路島で関係者に試写会の話が出たときに、「それはぜひ淡路島の『洲本オリオン』でやりたい!」と動いたことに端を発する。

改めて映画館で映画を鑑賞して、「試写会で終わらず、この先もずっと、淡路島で映画が観られる環境をつくりたい」と感じたそうだ。そこで、メンバーを集り、主婦、司会業、ブティック経営者など、これまで映画業界に縁がなかったメンバーによる「シネマキャロット」をスタート。今年1月に『なんのちゃんの第二次世界大戦』の先行上映を皮切りに、約10日前後ながらも毎月映画を上映するために企画・運営、また告知するためにビラの配布などをおこなっている。

映画のセレクトも、もともとミニシアター系の映画ファンの大田さん自身がおこなう。「淡路島の人々は人気作品などを神戸や徳島に観に行くのが当たり前になっている。それであれば、観るきっかけが少ない作品をセレクトしたいと思いました」と、邦画のフィクションとドキュメンタリーを1本ずつ選ぶ。

6月は兵庫・尼崎で在宅医師をつとめる長尾和宏医師のドキュメンタリー『けったいな町医者』と、その長尾医師の話をベースにした『痛くない死に方』(~6月22日まで)。娯楽として楽しめつつも、新たな考え方や学びを伝えてくれるような作品を、直感も活かしつつ決めているそうだ。

お客は30代から70代と年齢の幅も広く、「中高生の時のオリオンに通った懐かしく楽しい思い出がよみがえる」「どうか続けて欲しい」とたくさんの声が届いているそう。そんな思いに応えるべく、大田さんは「私たちは、淡路島の映画文化に種をまいただけ。その種に水をやりに、ぜひ皆さんに観に来て欲しい」と語る。

上映スケジュールは毎月変動し、6月は22日まで、7月は9日~19日までを予定(詳細は公式サイトにて)。料金は一般1800円、学生1500円、高校生以下・シニア・水曜のレディースデイ1100円。

取材・文/時友真理子

(Lmaga.jp)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

関西最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス