今年注目の若手俳優、倉 悠貴「リリーさんは普通のおじいちゃんみたいだった」

高校生たちのもどかしい青春を描いた、モデル・女優の池田エライザが初監督を務める映画『夏、至るころ』が、関西地区で1月29日から順次公開される。

主人公の翔を務めたのは、これからブレイクが期待される若手俳優の倉 悠貴。大阪出身の彼に、初主演映画にかける意気込みや自身の高校生活の思い出、ちょっと意外な趣味まで、ざっくばらんに話を訊いた。

取材・文/西村円香 写真/沖本明 取材協力/梅田スカイビル「空中庭園展望台」

「自分が何をしたいのか、葛藤する主人公に共感できた」──今回の『夏、至るころ』は、池田エライザさんが初めて監督を務めたという点でも注目されていますね。

以前、同じドラマに出演していたときには、接点が全然なかったのですが、今回ご連絡をいただいて驚きました。監督の演出でもっとも印象に残っているのは、パプリカのかき揚げ丼を食べるシーン。

最初は上手くできなかったのですが、監督が僕に「このとき翔は悔しかったの? 悲しかったの?」と問いかけるように聞いてくれたおかげで翔としての感情を引き出すことができました。

──主人公の翔と親友の泰我は、幼い頃から祭りの太鼓をたたいてきたという設定ですが、劇中で披露される太鼓の腕前にも驚きました。

2週間、死に物狂いで朝から晩まで練習しました! 最初は腕を振り回しているだけでもしんどかったので、これで本当に大丈夫なのか? 出来ないんじゃないかなと思っていましたが、『絶対やらないとあかん!』と本気で取り組みました。

──主人公の翔はいろんな葛藤を抱えていますが、ご自身の高校生活と比べてみていかがですか?

僕自身は、高校を卒業したらすぐ就職しようと思っていたんです。手に職をつけて安定した生活を送りたいなと思っていました。特に何に打ち込むこともなく、なんとなく生きている感じでした。

自分が何をしたいのか、何が幸せなのかって、だれしもが考えたことがあるはずだし、僕自身も未だにわからない。だからこそ、葛藤する翔にすごく共感できる部分がありました。

僕は2年前にスカウトしてもらったのですが、芸能界は本当に無縁の世界でした。親も「夢みたいな話」「ひと握りの人しか活躍できないよ」と最初は反対していたんです。

でも、友だちにスカウトの件を話したら「やったほうがいいやろ。やりたくても出来ない人もいるんやぞ」と言われて、確かにそうだなと背中を押されて。人生一度きりだし、やってみたら面白いかもって挑戦したんです。

──友だちが踏み出す勇気をくれたんですね。親友の泰我は翔を秘かにライバルだと感じていた場面もありましたが、倉さんにとってお友だちとはどんな存在ですか?

親友はいるけどライバルって感じじゃないですね。友だちって、でこぼこしているけど、気づけばいつも一緒にいるみたいな感じだと思うんです。泰我との関係性もいいですよね。でこぼこしていて、仲良くならなさそうなタイプなんですけど。

実際の性格も、翔を演じた僕はインドアで、泰我を演じた石内呂依君は活発なタイプ。呂依君とは、太鼓の練習で2週間ほど部屋も一緒で同じ飯を食って練習して・・・という共同生活をしていた感覚が撮影中も残っていたので、翔と泰我が醸し出すでこぼこ感が自然と出ていたんじゃないかと思います。

「クールなイメージを持たれることが多いのですが」──たくさん印象深いシーンがありますが、個人的にはリリー・フランキーさんとのシーンが自然で、温かみがあって好きでした。

リリーさんは、よくテレビでも拝見しているので緊張しました。でも、本当に普通のおじいちゃんみたいで、縁側で話をするシーンも不思議と緊張せず、むしろ肩の力が抜けるというか、自然体でその場にいることができるという感じでした。

最初にお話ししたパプリカのかき揚げ丼を食べるシーンが上手くできないときも、リリーさんと母親役の杉野希妃さんが、何にも言わずに見守ってくださっていて、それがつらくて泣いてしまって。

どうしたらいいんだろうと、翔の気持ちがぐちゃぐちゃになっているシーンなんですが、そこにはいつもと変わらない家族の姿がある。それって、すごい幸せなことだなぁ、温かいなぁと思いました。

『夏、至るころ』は、友だちでも家族でも、おばあちゃんと孫でも、だれと一緒に見ても何か心に来るものがあると思います。

──初めて主演を務められて、これまでと意識の変化などはありますか?

自分がメインになって作品を作れるって、なかなか出来ない経験ですよね。まだ役者としては2、3作品しか撮ったことがないので、今までは演じることへの抵抗感や不自然さがありました。でも、この作品と役に向き合うことで抵抗感や緊張はそぎ落とされていきました。

──今後、役者としてどんな役を演じたいなど、理想や目標はありますか?

目標の役者像みたいなものはないんです。人間はひとりひとり違うし、だれかを目標にするとその人に寄ってしまうので、特に考えていないんです。自分がどんな作品に出たいというより、今いただける仕事に誠実に向き合うことが大事かなと思っています。・・・良いこと言ったら恥ずかしくなっちゃった!

──最後にプライベートなことも少し伺わせてください。趣味やハマっているものはありますか?

サウナが好きです。コロナ禍なので最近は行けてないですが、サウナで整えてますね。

──予想外の趣味でした! サウナに行くようになったきっかけは?

とても悲しいことがあったときに先輩が連れて行ってくれて、それで好きになりました。汗と涙を流して、身も心もスッキリ浄化されました。

そして、お酒。お酒は人と関わるツールですし、お酒の場がすごく好きですね。オンラインで飲み会をしたりしますし、料理も好きなのでおつまみも作ります。僕のポテトサラダ、めっちゃうまいんです(笑)。

友達が「短歌や詩って面白いで」と薦めてくれたこともあったのがきっかけで、最近では俵万智さんの詩集を読んだりしています。

──趣味もそうですが、お話してみて良い意味でのギャップを感じました。

よく言われます。クールなイメージを持たれることが多いのですが、気さくなんですよ! 翔と似た部分や、暗い部分も持ち合わせてはいるんですけど、基本は明るい人間です。

映画『夏、至るころ』女優の池田エライザが原案・初監督を務めた青春映画。自然豊かな福岡県田川市を舞台に、高校3年生の翔(倉悠貴)と親友の泰我(石内呂依)が初めて自分の人生と向き合い、葛藤しながらそれぞれの一歩を選び取るまでを描く。

(Lmaga.jp)

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