「友禅」と「デザイン」を切り口にした人間国宝・森口邦彦の回顧展

友禅の技法で「重要無形文化財保持者(人間国宝)」の認定を受けている森口邦彦(1941~)。彼の業績を振りかえる大回顧展が、「京都国立近代美術館」(京都市左京区)で12月6日までおこなわれている。

森口は友禅作家の森口華弘の次男として京都に生まれた。京都市立美術大学(現 京都市立芸術大学)日本画科を卒業後、フランス政府給費留学生として約3年間、パリの国立高等装飾美術学校で学んだ。

結果、伝統的な友禅の世界にグラフィック・デザインの思考と幾何学文様を持ち込んだ彼の仕事は、他の追随を許さない独自の境地を開拓した。

本展のキュレーターである大長智広研究員は「人間国宝や伝統工芸という切り口ではなく、友禅とデザインを対等に扱うことで森口邦彦の仕事を掘り下げた」と語る。森口の創作は「歴史的に積み重ねられてきた技と感性を出発点に、社会に友禅・デザインを還元させていくための実践」と言うのだ。伝統工芸でありながらその枠を超えた普遍性を持つ仕事ということだろう。

会場には、着物、草稿、平面作品、デザインワークなど約250件を展示。昭和40年代から現在までの着物がずらりと並び、壮観の一言だ。その傍らに展示された草稿は、作家の思考を物語る。また、絵画のように展示された平面作品、三越やセーブル(フランスの磁器メーカー)など企業とコラボレートしたデザインワークも見られ、森口邦彦の世界をとことん堪能できる。

取材・文/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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