始まるGoToEat、受け入れる飲食店の現状と本音とは

10月1日にスタートした国の『Go To Eatキャンペーン』。コロナ渦のなか夢中で対応し、この日まで乗り越えてきた飲食店2店に現在の心境や、同キャンペーンに対する本音を訊いた。

日本では2月から国内の新型コロナウイルス感染症の感染者が増え始め、3月に急増。4月7日には政府から緊急事態宣言が発令された。

外出自粛や施設の休業要請なども出され、飲食店経営者たちは歓送迎会で盛り上がる4月の稼ぎ時を失い、5月25日まで約1か月半に渡って客が激減。

緊急事態宣言が解除された後、少しずつ客足は戻るものの大阪府では6月後半から再び陽性者が増え始め、7月中旬から第2波に入る。

その対応策として5人以上の飲み会自粛や、8月6日から20日までミナミ一部地域で休業・時短要請がおこなわれた。

やっと客足が戻っても再び遠のく、という繰り返しになった飲食店。その厳しさからやむなく閉業する店が続出し、街中では閉店の張り紙とテナント募集の看板が目立ち始めている。

そんななかでも持続化給付金や大阪府と各市町村が共同でおこなった休業要請給付金、貸付制度などを利用して経営を続けている飲食店もある。

■活かされたリーマンショック。厳しくても質の維持を徹底大阪市中央区で15年、「炭火焼肉 蔓牛(つるぎゅう)」を経営する藤原広斗さんの店舗もそのひとつだ。

インバウンド観光客にも人気があり、来店客の3割を占めていた同店。しかし、コロナで渡航禁止になり、3割の売り上げはすべてなくなる。現在、日本人客は戻りつつあるが経営的にはまだまだ厳しい状況が続いているという。

藤原さんは、「コロナは15年やってきたなかで一番しんどくて、どこにぶつければいいかわからない感情はあります。でもリーマンショックのとき、どれだけ経営が厳しくても、一番の売りである肉の質、高級店の姿勢を維持することを徹底していました。すると景気が良くなったときに、お客さんが増えたんです」と当時を振りかえる。

「だから、いま苦しいけれど必ず終わりが来て光が差すと信じています。1年、2年かかるかもしれないけれど、それまで不平不満は言わない。前向きに、できることをやるようにしています」と、現在の心境を話した。

■「コロナ終わったら必ず来る。辛抱しいや」常連の言葉に感謝法善寺横丁で7年、割烹屋「法善寺 山岡」を経営する山岡吾郎さんの店も経営を維持できている。

山岡さんは、「オープンしてから一貫して、インバウンド観光客は予約のみで対応していました。でも4月初旬はまったくお客さんが来ず、ずっと営業を続けるのはしんどくなっていました」という。

また、「正直、休業要請を出してもらえてよかった。自分も休みましたが、店内の細かいとこまで掃除したり、食器を補充したりできました」とも。

その後、「しばらくしてお客さんに忘れられないように、自分の腕を落とさないようにするためにテイクアウトでお弁当を始めました。このとき、久しぶりにお客さんと対話できて『コロナが終わったら必ず来るから辛抱してや』と励ましてもらえ、常連さんのありがたさを実感しました」と振りかえる。

8月のミナミエリア休業要請は、対象地域となった同店。「せっかく戻ってきた客足がまたなくなってしまって、つらかったですよ。でも期間も決まっていて協力金もあったので乗り切れました。30万はすべて経費に消えていきました」と笑う。

■府の飲食店応援とGoToEatキャンペーンは不参加の店も第2波が収まり始めると大阪府は飲食店への経済支援策として9月19日から『大阪府少人数利用飲食店応援キャンペーン』も開始。これは『Go To Eat』キャンペーンが併用できるも、キャンペーンに参加する飲食店にはガイドラインの遵守や一部は府と市の職員による立ち入り調査も実施される。

このキャンペーンに関しては、喜んで参加する店舗もあれば、あえて参加しないという店舗もあり、2極化しているのが現状だ。

もともと登録していた予約サイト「一休.COM」で参加を決めた山岡さんは、「うちの店自体、客単価が2万~3万円なのでお得感があまりないかもしれません。でも、経営者が多いうちの客層からすると、社員に自粛を促している手前もあって、これまで飲みに行きにくかった方々。だから、国が外食に前向きな雰囲気を出してくれれば、飲みに行きやすくなるので影響は大きいです」と歓迎。

また、「立ち入り調査に関しても、やった方が感染症対策が徹底できるならしたほうがいい。ですがガイドライン守ると席数が空いてしまうので利益が薄くなります。その影響が結構あり、リアルに売り上げに影響しますね」と話す。

一方で、藤原さんの店はキャンペーンには参加しない。その理由は、「参加方法が複雑というのと、今やっと常連さんが戻って来てくれて向き合えています。この半年間、本当に常連さんに支えられてたことを実感し、感謝の気持ちがある」と説明。

さらに、「インバウンド観光客で満席だったときに離れていったお客さんも戻ってきてくれている。そうなると、キャンペーンで知らない人が来て騒がしくなるよりも、まずは戻ってきてくださったお客さんにしっかり向き合いたい。そして、これからインバウンドが再開されるまでに、自分の店での受け入れ体制をどうするか、答えを出しておかないといけないですね」と語る。

スタートした『Go To Eatキャンペーン』では、「外食しよう」というムードが高まるはずだが、これから冬に向かい、インフルエンザと同時にコロナの第3波も懸念される。ただ、感染が収まっている今、ひとつ1つの店舗、ひとり1人の客が感染に気を付けながら、飲食店を応援して日本の「食」を高める一助になってほしい。

取材・文・写真/岡田由佳子

(Lmaga.jp)

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