日本初のマサラ上映から約20年…原点の2人が集った閉館前の映画館

2月22日、今月末で閉館する「布施ラインシネマ」(大阪府東大阪市)で『ペーッタ!』のマサラ上映会が開催。マサラ上映の原点となった2人が再び集う記念すべき夜だった。

2001年に大阪で初開催されたマサラ上映

マサラ上映とは、歌って踊ったり、紙吹雪をまいたり、クラッカーを鳴らしたりして楽しむ体感型の鑑賞スタイルのこと。『バーフバリ』で知名度が上がり、最近はアニメ『プロメア』やEXILEが出演する『HiGH&LOW』などインド映画以外でも開催されるようになったが、実は今回の『ペーッタ!』上映主催の「ラジニ.jp」の安田英俊さんが、2001年にインド映画普及のために実施したのがはじまりだ。

そして、マサラ上映を許可した大阪「動物園前シネフェスタ4」の当時の支配人が、今回閉館する「布施ラインシネマ」の掛谷嘉昭シニアディレクターだという。

「当時は全然インド映画が普及していなくて、ファンのみなさんとどうしたらいいか考えていたときに、『インドでは、映画見るときに叫んだり紙吹雪を散らしたり、爆竹鳴らしてお祭り騒ぎをする。それを日本風に取り入れたらおもしろいのでは?』という意見が出ました。ただ、いろんな映画館に持ちかけても断られて・・・。そんななか、唯一OKを出してくれたのが掛谷さんでした」(安田さん)

『ペーッタ!』で主演を務めるラジニカーントは、インド・タミルのスーパースター。老若男女問わず愛される存在で、映画でのスタイリッシュな演技はもちろん、実生活でも貧しい人々のためにさまざまな活動をしており、彼の生き様に熱狂的なファンが多い。

この日は『ペーッタ!』の国内初マサラ上映ということで、多くのラジニファンが訪れた(しかも2月22日でラジニの日)。20年追いかけ続けているという女性は、「ラジニ様に映画のスクリーンでウィンクを投げかけられたときにやられました。ラジニ様の飴を作ってきたのでもらってください」と、突如自作アイテムをくれた。

そして、もちろん日本人だけでなくインドから来た方もちらほら。招待席には「徳島県への研修旅行中で30分しか立ち寄れないが、『ペーッタ!』の応援のために来た」というインド人メンバーがずらり。満員になった席をうれしそうに眺め、カメラを向けていた。インド映画のために日本人がこれほど動いているということはまだ現地では知られておらず、彼らにとっては喜ばしいことだそうだ。

忘れてはならない、マサラ上映の根底にある思い

上映がはじまり、大スクリーンのなかでフェロモンたっぷりなラジニ様がウィンクを披露すると、観客からは紙吹雪が撒かれたり、銃声の音と同時にクラッカーが鳴ったり・・・と、3時間はあっという間に過ぎた。ラジニ様への愛の分だけ、会場は紙吹雪とクラッカーの残骸でいっぱいになった。

安田さんは「今日は本当にいい上映会でした。タミルから来た方々も、シャイな日本人が自国の映画で盛り上がっていたことに非常に喜んでいたようです。この上映会も、あの日掛谷さんが許可してくれなければ、無かったこと。感謝を伝えたいです」と感慨深く話す。

掛谷さんは、「最初は実際に見てみないと分からないなと思って許可しましたが、『わっ、なんじゃこりゃ!』となりました。劇場は紙吹雪だらけになるし参ったなぁと思いましたが(笑)。その後、どんどんマサラ上映は増えましたが、派生しすぎじゃないかな・・・と少し懐疑的な部分はありますね。本場のマサラ上映を始めた人たちの想いを忘れずにいてくれたらなと思います」と呼びかける。

マサラ上映は、ラジニ様ら俳優や作品への愛、リスペクトが前提にある。そしてインド映画の普及を願い、日本人に受け入れられやすい形を考案して行動した人がいて、その形を許可した勇気ある支配人がいたことを、忘れてはならない。今後もこの思いがほかの映画館でも受け継がれることを願うばかりだ。

「布施ラインシネマ」では29日まで、開業からの87年間にちなんで87本の名作を上映する「ラストショー」が開催中(1000円均一、『ドラえもん のび太の宝島』は500円)。

取材・文/小田切萌

(Lmaga.jp)

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