人間チェ・ゲバラを描出した轟悠に、男役のひとつの結晶を見る月組開幕

宝塚歌劇団の専科スター・轟悠(とどろき・ゆう)主演の月組公演ミュージカル『チェ・ゲバラ』が、8月11日に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で開幕した。

轟はこれまでアメリカ大統領のリンカーンを演じるなど、歴史的な偉人に命を吹き込んできたが、キューバ革命を成功に導いたエルネスト・ゲバラ(通称チェ・ゲバラ)の生き様も見事に舞台に描出。ゲバラが轟なのか、轟がゲバラなのか--。そんな思いを抱かせるほどに、架空の世界を超えるリアリティーがあった。

国連での「祖国か、死か!」という有名な演説シーンでは、まるで観客が聴衆となったかのようにゲバラの熱弁、熱唱に聴き入った。「我らの手で新しい歴史を!」と唱えるその声、目、こぶしの力強さ。入団35年目の轟が探求してきた男役のひとつの結晶を見た思いだ。

轟のゲバラは単なるカリスマではなく、教育水準を上げるため民と同じ目線で語らい、カストロと大らかに無二の絆を結んでいく一方、後半では憤りを爆発させる。硬軟織り交ぜて「人間ゲバラ」を生み出したからこそ、遠い国で高い理想を貫いた闘士の魂に観客も近づけたのではないだろうか。

キューバ大統領・バティスタの軍事独裁政権に反旗を翻し、ゲバラと共に戦い、のちに首相となるフィデル・カストロ役は風間柚乃(かざま・ゆの)。入団6年目の風間が、ケガで休演となった月城かなとの代打として大役を担ったが、冷静で強靭な精神のカストロを貫禄さえ見せて演じ切った。

ゲルバの妻となる勇敢なアレイダ役の天紫珠李(あまし・じゅり)、憎々しいバティスタ役の光月るう、反政府軍の一員として懸命に生きるミゲル役の蓮つかさなど、轟の熱演に引っ張られるかのように、月組出演者も健闘した。

光と闇という革命のコントラストが、踊り子レイナ(晴音アキ)とルイス(礼華はる)の愛によっても浮き上がる、巧みな原田諒の脚本・演出。南米の軽やかな音楽、ゲリラ戦で響くエレキギターの音色まで、全体を通して多彩なエッセンスが盛り込まれ、ミュージカルとしての見応えも充分だ。公演は8月19日まで。

取材・文/小野寺亜紀

(Lmaga.jp)

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