知られざる僧侶・忍性 2体目の上人像が故郷・奈良に誕生

「忍性」をご存じだろうか? 鎌倉時代、ハンセン病患者や貧民などの社会的弱者救済に生涯を捧げ、社会福祉の先駆者として知られる真言律宗の僧侶だ。歴史的な知名度はイマイチだが、その功績から「あんたは生身の菩薩や!」と後醍醐天皇より「忍性菩薩」の号を贈られたほど、実はスゴい人物である。

そんな忍性の肖像彫刻は鎌倉の極楽寺所蔵の像だけだったが、日本で2体目となる「忍性上人像」が完成。7月14日、忍性の生まれ故郷である奈良県磯城郡三宅町で「開眼法要」が営まれる。

構想から10年かけて完成したという令和の忍性上人像。奇しくも忍性の命日である7月12日、制作者で彫刻家の吉水快聞(よしみずかいもん)さんに制作秘話を伺った。

「人間臭くない拝める対象になる像」(吉水快聞)

──忍性は、師匠である西大寺の叡尊上人から「慈悲ニ過ギタ」と評されたほど、やさしい人柄のイメージがありますが、像を制作して実際どんな人物だったと思いますか?

吉水さん「それは叡尊が苦言をいってるんですよ。『人助けばかりしていないで、勉強もしろ』って。でも師匠に言われても(救済を)止めなかった、意志の強い人ですよね。アグレッシブに行動する人。ハンセン病は当時(感染が)恐れられていたのに、それでも病者をお風呂に入れたり、背負って運んだり、だから老人にしてはガタイが良いんですよ。やさしいだけじゃできない、その強さを像に入れ込みたかった」

──ほかにも見ておきたいポイントはありますか?

吉水さん「彫るのも彩色も基本的に自分でしているので、化粧技術も参考にして、実は目に下睫毛を描いています(笑)。見た人がほぉって驚くポイントですかね」

──SNSで吉水さんの忍性上人像を見たとき、西大寺所蔵の肖像画とそっくりで驚きました。「彫刻家」「文化財修復家」「僧侶」「大学の客員教授・講師」とさまざまな顔を持たれていますが、仏像をつくる人、修復する人、拝む人である吉水さんがこだわった部分は?

吉水さん「大きさなどは極楽寺の忍性像をベースに、お顔は2枚の肖像画も参考にしていますが、模刻ではなく、完全に新しいオリジナルなんです。仏師・快慶の研究もしているので、僧形八幡神像の雰囲気で『人の形だけど神さま』みたいな、人間臭くない拝める対象になる像にしています。そういう意味で難しかったのは顔。オリジナルだけど忍性って分かるようにしないといけないので」

新たに生まれた忍性上人像。その開眼法要は7月14日・昼1時から、「三宅町文化ホール」(奈良県三宅町)にて(入場無料)。

取材・文・写真/いずみゆか

 

(Lmaga.jp)

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