実はカッコいい古田新太 舞台上でこそ魅せる男の色気

『木更津キャッツアイ』『あまちゃん』『逃げるは恥だが役に立つ』など、数多くのドラマで印象的な脇役を演じる古田新太。前クールの主演ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』(NTV)では、女装の高校教師・原田のぶおをエキセントリックでも愛しい人物として演じ切り、その怪演列伝にまたひとつ伝説を残す形となった。

しかし! 世間では古田を、バラエティ番組などで見せるやんちゃな素顔も含めて、単なる「オモロいおじさん」だと思っていないだろうか? だとしたら声を大にして言っておきたい。演劇、特に時代劇の舞台で、正統派ヒーローを演じさせたときの古田新太の色気ダダ漏れ具合は、本当に「これを見ずに死ぬのはもったいない」レベルだと!

大阪の劇団「劇団☆新感線」出身の古田。高校時代には伝説のダンサーであるルドルフ・ヌレエフのバックで踊ったこともあるという身体能力の高さと、演出家のあらゆる要望に応えるズバ抜けた適応力を武器に、不動の看板役者の地位を築いた。実際、新感線がおバカコメディからシリアスな活劇まで非常に幅広いスタイルの芝居を送り出して来られたのは、センターにいる古田の存在も大きかったはずだ。

そのマルチぶりを育んだのは、古田自身が「稽古場でとにかくふざけて、面白いものを探す」と言う、小劇場演劇ならではの稽古にあるだろう。単に演出家の指示通り演じるのではなく、「あれもできるんじゃないか」「これも面白いんじゃないか」と風呂敷を広げるうちに、誰しもの想像を超えた強靭な「役」が誕生するというわけだ。それは爆笑をかっさらうオカマだったり、本気で殺意を感じる悪党だったり、誰もがほれぼれする色男だったり。ただ古田の映像出演は、のぶおのような飛び道具キャラが圧倒的に多いので、めっちゃカッコいい役も負けないぐらい絶品なんだぜってことは、意外と知られていないのでは、と危惧する。

舞台での「カッコいい古田新太」伝説は、上げていったらキリがない。一見チャラいけど、身を挺して仲間を守り続ける『髑髏城の七人』の捨之介や、泥棒だけど巨悪には真っ向から戦いを挑む『五右衛門ロック』の五右衛門など・・・、往年の時代劇や少年ジャンプのヒーローを思わせる漢気をダイナミックに、しかも粋にクールに体現するんだから、これはもう男も女も「惚れてまうやろー!」状態だ。

さらにこれが時代劇になると、演劇界でもトップクラスと評される技術の殺陣が加わるから、男前度はさらに倍増。最近の殺陣はダンスのように華やかなものが主流だけど、古田の場合は刀の重量や人を斬った感触などが観客まで伝わる、そのリアルさが絶品だ。そのニヒルな重さがヒーロー像を複雑かつ味わい深いものにするとともに、物語全体にも痛快さだけでなく、確固たるリアリティを与える。時代劇が衰退している今の日本の映像界だが、古田のこの魅力と価値を存分に活かせる作品が登場してほしいと願う。

劇団☆新感線の2016年の作品『乱鶯』は、その「時代劇の古田」の色気がとりわけ爆発した舞台だろう。元大泥棒が恩人の息子を助けるために暗躍する、その負のヒーローぶりと怒涛のアクションは、古田が演じた役のなかでも五本の指に入るカッコよさだった。

この『乱鶯』の脚本を担当した倉持裕が、再び古田を大フィーチャーするのが、劇団☆新感線の新作時代劇『けむりの軍団』だ。戦国時代末期を舞台に、素浪人の軍師(古田)が口の立つ男(池田成志)とともに、逃亡中の姫(清野菜名)を国元まで送り届けるという、映画『隠し砦の三悪人』をイメージした時代劇。全体的にはシリアスだった『乱鶯』と違い、「江戸落語のような明るいトーンになる」という。そして古田いわく「(劇中で)めちゃくちゃ戦わされてる」とのことなので、殺陣がたっぷり堪能できるのは確実だろう。

というわけで、この機会にぜひ舞台での古田新太のカッコよさを目撃して・・・と断言したいが「いや、演劇は敷居が高くて」という人は、舞台映像を映画館で楽しめる「ゲキ×シネ」からオススメする。7月には『髑髏城の七人〈アカドクロ〉』(2004年)と『髑髏城の七人~Season花』(2017年)が、関西で上映。『アカドクロ』は正統派ヒーローの捨之介、『花』はトリッキーな刀鍛冶の贋鉄斎と真逆の役を演じているので、「オモロいおじさん」な『花』を観てから『アカドクロ』を観ると、そのカッコよさがいっそう尊く見えるはずだ。

文/吉永美和子

(Lmaga.jp)

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