オメでたい頭でなにより・赤飯「最初に買ったCDは嘉門達夫さん。僕のDNAはそこにある」

2016年8月より本格的に活動開始、昨年4月にメジャーデビューを果たした5人組ラウドロックバンド・オメでたい頭でなにより。「楽しく、幸せに騒げる、底抜けに自由でオメでたいバンド」をコンセプトに掲げ、日本の文化や遊び、邦楽・洋楽・童謡などのオマージュなどさまざまなユーモアを詰め込んだ世界観でリスナーを魅了。ゴールデンボンバーの鬼龍院翔が「僕たちにとって怖い存在」と認める彼らがついに1stフルアルバムをリリースした。バンド名をそのままタイトルにした今回のアルバムには、どんな仕掛けがあるのか。ボーカリストの赤飯に話を訊いた。

取材・文/田辺ユウキ 写真/森 好弘

「最初に買ったCDは嘉門達夫さんの『替え歌メドレー2』。僕のDNAはそこにある」(赤飯)

──今回の1stフルアルバム『オメでたい頭でなにより1』ですが、面白さのなかにも緩急がある作品になっていますね。

僕らの今までのライブは全力で走り抜ける感じだったので、箸休め的な曲も欲しかったんです。アルバムもライブをイメージして、中盤あたりにそういった新曲も作りました。間口が広くて誰が聴いても「めっちゃいいやん」という名作・名盤みたいなものを僕らも作ろうと思ってたけど、やっぱりクセが出ちゃった。怪作・奇作ですね。

──とは言っても、6曲目の『We will luck you』など、誰もが知るイントロやメロディラインに影響を受けている曲が多いですし、そういう意味での間口の広さはあります。

みんなが知っているもののほうが取っ掛かりになるし、なにかを共有できる。もちろん、コピーやカバーではなく、しっかり自分たちなりの解釈をして。ただ僕自身、元々オマージュが大好きで、0から何かを生むのは向いていないと思っていました。

──そうなんですか。

どちらかと言うと1を100にするほうが得意。モノマネや替え歌が好きだし、最初に買ったCDは嘉門達夫さんの『替え歌メドレー2』だった。僕のDNAはそこにある。だから、既にあるネタやアイデアを自分たちなりに、新しいものへ生まれ変わらせたり、肉付けして膨らませたりすることも多くて。

──物事を共有する、というのは今の時代って結構難しいことです。今は、たとえばウェブの記事とかでも自分の読みたいものだけ選べたりする。好きなものだけ選択できるようになっている。

そうですね。それに関連する話ですが、今回収録している『ピ』という曲。これは10代、20代ならすぐにピンとくるはずなんです。ラブソングという情報だけ受け取れたら、「ピ」の意味に繋がる。流行語にもなりましたし。逆に10曲目の『歌謡サスペンス劇場~わたしがやりました~(オメワンVer.)』の「歌サス(=火サスをモチーフにした言葉)」というフレーズは、若い子が聞いてもピンとこないはず。それを親御さんが教えてあげるとか。それが共有に結びつく。

──なるほど。

僕は昭和カルチャーも大好きなんですが、その理由は、1つのものを家族みんなが共有して楽しんでいたところ。テレビは一家に一台で全員でテレビ番組を観て、翌日、会社や学校に行ったらその話で盛り上がる。今はそういうことって少ないじゃないですか。あの感覚を復活させたい。

「できてへんやん!ってツッコンでもらえてたら勝ち(笑)」(赤飯)

──言葉って確かに世代ギャップをあらわすものです。僕は40代なんですが、「ピ」って語尾につけないですもんね。

言葉もそうですが、そういう世代間のギャップってやっぱり必要。ギャップが生まれると、そこから会話が生まれる。そうすると接点が生まれる。音楽を通して、世代と世代を繋ぐことができれば理想的です。

──音楽的に誰もが知っているモチーフを散りばめながら、一方でじっくり考えないと気づかない仕掛けがたくさんあるわけですね。

では逆質問しますが、3曲目の『鯛アップ(TVサイズ)』で気づくことってないですか?

──え、なんですかね。(しばし考えて)ヒントをもらえますか。

お気づきにならないですか? 曲の秒数を見ましたか? これ、90秒なんです。それで、「TVサイズ」という副題がついている。つまり、そういうことです。で、「ご希望の尺」という歌い出しがあるけど、最後はフレーズを繰り返しながらフェイドアウトしていく。つまり、ご希望の尺に足りなかったから、水増しして無理やり90秒に仕上げているんです。「できてへんやん!」ってツッコんでもらえてたら勝ちですね(笑)。じゃあ次の質問です、5曲目『言葉のあやや』でピンとくることってありますか?

──地獄みたいなインタビューになってきました・・・(笑)。「あやや」って、あの「あやや」のことですよね。

そうそう。最初はもっと『桃色片想い』っぽいフレーズも入れていたんですけど、そこは結局なくなりました。それでも一カ所、あやや要素をはっきり入れているところがあるので、そこはみなさん、聴いて見つけ出してください。

──なるほど、そこの箇所ですね。この曲は世に流通しているありがちなキャッチコピー、宣伝文句に対するディスも入っています。

ラップのところは、(メンバーの)ぽにきんぐだむが作っているんですけど、彼曰く「SNSで膨大な量の文字が流れてくるけど、それに対して真意を問う人が少ない。みんなちゃんと考えることなく、ガバガバと情報を受け入れている。それに対する警鐘だ」とのことです。確かに、みんな考えることをしなくなった。先ほどの世代間のズレは仕方ないと思うんですけど、でもちょっと自分で考えたら分かることすら、すぐ他人に答えを求めようとする。もっと積極的に自分自身で考えたり調べたりして、何もかも受け身にならない姿勢というものがあると、いろんな物事の見え方が変わってくると思いますし、楽しくなると思います。探求する喜びというか。まぁ個人差はあるでしょうけど。

──「分かりやすいものを作る」と、「みんなで共有できるものを作る」は違いますね。9曲目『終わらない恋からの脱出(妄想LIVE Ver.)』も、いろいろと想像を膨らませて聴くことができます。これって、あの人気アーティストがモデルになっていると思いますけど。そういうことを、みんなで話しながら聴くと確かに楽しそう。

まさにそうです。ちなみにこれが始めに言っていた、アルバムの箸休め的なポジションになっています。「手拍子しながらゆったり聴ける曲ってどうやったら作れるんだろう」と考えていたとき、そのアーティストさんのライブ映像を観て「こういうことじゃないか」とヒントをもらって。それでその方の「楽曲あるある」をどんどん固めていきました。

──一方で、作品全体を通して感じることとして、今の世の中はどういう風に渡り悪いていくか、そこについて触れている印象です。1曲目の『ザ・レジスタンス』は特にそれが顕著ですね。

以前、我々の曲について「本当にヘコんでいるときに聴くとよりしんどくなる」と聞いたことがあって。明るくしすぎると、押しつけになるんだなと気づいたんです。本当にしんどいとき、「元気出せよ」って言われたら何か腹立つじゃないですか(笑)。ポジティブで塗り固めたら、大多数は元気になれるはず。でも、そこからはみ出た人も無視してはいけない。加えて、以前発表した曲では夢を持っている人を応援していたんですが、この曲では、夢を持っている人、夢がない人、両方を肯定したかったんです。

──この1枚は、オメでたい頭でなによりが何をやろうとしているか、何を考えているかがすごく分かりますね。

セルフタイトルのアルバムなので、バンドの人となりがうかがえるはず。とても面白い作品だと思いますし、いろんなことを考えながら聴いて欲しいです。

(Lmaga.jp)

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