【追悼】勝谷誠彦さん 地元・大阪での素顔 京橋で酩酊する姿勢とは

評論家の勝谷誠彦氏が28日未明、急性肝不全で亡くなられた。57歳という若さだった。テレビやラジオ、雑誌を通じて、世相を斬り続けた辛口コラムニスト/コメンテーターの勝谷氏だったが、果たして本当の姿はどんなものだったのか。勝谷氏がコラムを連載していた月刊誌『Meets Regional』(京阪神エルマガジン社)の編集長が追悼の意を込めて、その生き方を明かした。

「いきなり酒。しかも日本酒。そして冷酒。」

辛口コメンテイター、という肩書きで語られることの多いカツヤさん(連載時の表記。以後この呼び方をさせていただきます)ですが、本当に辛口だったのでしょうか? 生き方は、辛口だった気もしなくもないですが。

『Meets Regional』に異動して、カツヤさんの連載担当になったのが、2010年(連載が始まったのは2009年)。以来、今年の4月に連載が終わるまでの約8年間、毎月やりとりをしてきました。担当になった当初は、ご多分に漏れず、「おっかない人なんじゃないか、メンドクサイ人なんじゃないか」という恐れが無かったと言えば、ウソになります。

担当が変わると、ご挨拶に伺うのがこの業界の習わし。カツヤさんから指定されたのは、収録終わりのタイミングゆえ読売テレビのロビー、ではなく大阪・京橋駅前の鮨屋だったと思います。時間は朝の11時前。ランチがてらお鮨を食べながらなのかと思いきや、いきなり酒。しかも日本酒。そして冷酒。

けっきょくアテを少しと、鮨を2~3貫ほどつまんで、あとは飲んで喋ってという、酒とも人とも向き合うスタイル。1時間ほどで「お昼で混んでくるから、出ようか。じゃあね、連載ヨロシクねー」と、大きなショルダーバッグで身体を傾けながら、あっという間に京橋の喧噪へと消えていってしまいました。

「待つ側の気持ちがよく分かっていた」

その後、何度もカツヤさんと飲むことになるのですが、キレがいいと言いますか、しつこく長っ尻では飲まない。毎朝メルマガを配信していたこともあって、遅くとも21時までには解散、というのがカツヤさんとの飲みのパターンでした。良くも悪くも、せっかち。そういう意味では、カツヤさんと飲みに行くのは、終わりが見えているので気楽ではありました。ただちょっとでも筋の通らないことを言うと、ビシビシ突っ込まれるので緊張感はありましたけれども。

せっかち、なのはすべてにおいてで、連載の締め切りに遅れるどころか前号の作業が終わってないのに、次号の原稿が来てしまうという素早さでした。カツヤさんがよく言っていたのは「いつ来るかどうかもわからない原稿を待つのはシンドイやろ?」でした。自身が編集者だったこともあって、待つ側の気持ちがよく分かっていたのでしょう。

連載のほかに、特集ページに登場してもらうことも、しばしばありました。そのときも、「こうしたほうがオモロイやろ」と次々にアイデアを出してくれました。もちろん、せっかちなので、そのアイデアに対してこちらが素早く反応しないと怒られるのですが。いずれにせよ、読者を楽しませるためにはどうしたらいいか? を常に考えられていたように思います。

「面白がらせることに一生懸命」

せっかちエピソードの極みは、2011年に京橋特集をしたときのこと。冒頭にあるとおり京橋を酒戦場にされていたカツヤさんに、京橋についての原稿をお願いしました。「せっかくなら、何軒かを実際に回ってルポっぽく書こうよ」と、お店をハシゴして撮影することになりました。

ガールズバーの女の子を取材していた別班に偶然出会って、そのまま一緒に撮影するというハプニングがあったのですが、そういうのも「京橋っぽいよね。ええ写真撮れたよね」と上機嫌でした。撮影はつつがなく終了。普通ならばスタッフとそのまま「ちょっと一杯行きますか」となるのですが、20時を過ぎていたので例によって「帰るわ」とホテルへ戻られました。我々撮影班は、そのまま「ちょっと一杯」。

そこで終われば、それこそ普通の話ですが、「ちょっと一杯」が終わって会社に戻ったら、先ほど撮影したロケの原稿がメールで届いていました。分かれてから、1時間ちょっと。編集者として20年、こんな体験をしたことはありません。面白がらせることに一生懸命なのがカツヤさんなんじゃないかなと、そのとき思いました。捨て身のエンタテイナーという言葉と共に。

もうカツヤさんの原稿を頂くことも、怒られることもできませんが、私の記憶のなかにはしっかりと刻まれています。おそらくカツヤさんに関わったことのあるひとは、みんなそうじゃないでしょうか。

どうぞ安らかに。

月刊誌『Meets Regional』編集長・竹村匡己

(Lmaga.jp)

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