元男役トップ・壮一帆が退団後初の本格的ショー、ゼロからの出発

2014年に宝塚歌劇団を退団した、元雪組トップスター・壮 一帆(そうかずほ)。和洋幅広くこなす芸域と、伸びのある歌声やダンスで魅了する壮が、退団後初となる本格的なショー『GEM CLUBII』に出演する。日本のショーシーンを牽引してきた演出家・玉野和紀による作品で、ショーハウスを舞台に様々な才能がスパークするステージだ。女優として次々と舞台に出演する壮に、今作はもちろん、退団後新たに抱いた想い、地元関西について話を聞いた。

取材・文・写真(人物)/小野寺亜紀

「女性として役作りをするのはゼロから」(壮 一帆)

──女優活動を始められて2年、男装の麗人・川島芳子(音楽劇『魔都夜曲』)や花魁の浮雲(『戯伝写楽 2018』)など幅広い役柄を演じてこられました。

この2年、作品に役に、そして共演者の方に恵まれていたと思います。私は宝塚を卒業したとき、「もう全部やり尽くした」と思っていたのですが、「いやいや何も・・・」と痛感しました。女性として役作りをするのはゼロからで、今やっと2歳になった気分。男役では男性を軸に芝居を考えてきたので、全然違う作業だなと思いました。

──やはり男と女は違う生き物だと?

そう、「女心って何?」というところから始まりました(笑)。でも、学ぶことがたくさんあるのはとてもうれしいこと。まだまだ先が長くて、壁も高い。そこであがきながら自分を磨いていくことができる、こんなに素晴らしいことはないです。この世界を選んで良かったと思います。

──女性としての「美」を磨くことも意識されたのでしょうか?

そうですね。まず気負うことなくスカートを履けるようになりました。最初は、スカート姿の自分を鏡で見ると何かヘンだったんですよ。男役のときはズボンばかりを履いていたので、退団間近は普通にメンズの服を着ることができるようになり、衣裳でもラインの補正素材をほとんど入れなくてもいいようになりました。歩き方などから、筋肉のつき方がそうなるんでしょうね。そこから今やっと、スカートも違和感がなくなり、もっと買い揃えたいと思うように。

──例えば何かを見ても、感じ方が変わったというようなことは?

ありましたね。お芝居やドラマでも、女性のほうを見るようになりました。でもやっぱりクセで、「自分が男役だったらこの役をやりたいな」とまだ考えちゃうんです。普通の女優さんにはない物事の捉え方、表現はあると思うので、そこは活かせたらと思います。

──退団後、ほかに驚かれたことは?

宝塚歌劇団は家族のような仲間意識があるので、必要なら共演者にアドバイスもするのですが、退団後の舞台ではみなさんプロ意識を持ち、自分のやり方でされているので、そのアドバイスが失礼になることもあるのではないかなと。そんな部分からも、スイッチを切り替えなければと感じましたね。

──昨年はミニアルバム『SO BAR』をリリースされ、ご自身で作詞もされていました。

作詞ってある意味自分の人生を切り取る作業なんだなと思いました。とても恥ずかしかったです。一番自分らしいと思ったのが、牛乳へのリスペクトを込めた『牛乳』という曲。私は「今までありがとう」というような歌詞を書くのは全然似合わない(苦笑)。でも身近なことに対して、ほかの人が感じないようなことを、自分なりの解釈で言葉にする作業はおもしろかったです。

「ショーを楽しんでいる私を見ていただきたい」(壮 一帆)

──次に出演される『GEM CLUBII』は、玉野和紀さんが10年以上続けてこられた『CLUB SEVEN』のDNAを受け継ぐショー。盛りだくさんでハードそうですね。

ワクワクするような選曲で、私も懐かしいパンチのある歌謡曲からアニメの曲まで歌います! ショーハウスのオーナーで、若い原石(=GEM)を見つける役どころなので、あまり踊らないのかと思っていたらそうでもなくて。2部はショー形式なのですが、先日まず、最後に繰り返すステップの振付を受けて、数分のナンバーなのに口から内臓が飛び出るかというぐらいハードでした。でもこれが踊りこむうちに慣れて、激しい心拍数にも耐えうる身体になるんですよ(笑)。

──玉野さんの振付はステップの種類も多い感じですよね。

多いです! でもジャズダンスの要素が入っていて、私はヒップホップ系よりもジャズダンス派なのでありがたいです。それにおそれ多くも玉野さんとタップダンスのデュエットを踊らせていただきます。(タップの第一人者)玉野さんはさすが素晴らしく、分かりやすくコツを教えてくださるのでありがたいです。

──ダンサー、シンガーとしても新たな壮さんを拝見できそうです!

今、踊り方はもちろん歌い方も男役からシフトチェンジしているところです。肘を張ってはダメ、身体をキュッとひねる動きが必要とか色々あります。気持ちよく踊ると、まだまだスタンスが広く、「男前」になります(笑)。

──玉野さんは出演者の持ち味も大事にされるので、そういう今の壮さんを、明るく前向きな印象を受ける人間性も含めて、引き出してくださるような気もします。

「武士っぽい、真っすぐだ」とはよく言われますが、私としては、場面ごとに違う色を見せたいですね。

──地元・関西での公演についてはいかがですか?

うれしいですね。私、出身は兵庫なのですが育ちは大阪で、大阪の雑踏にものすごく安らぐんです。当たり前のように関西弁を話しているところが最高! 今はすっかり都民ですが、周りが東京弁を喋っていると「ほんまにそう思ってる?」と訊きたくなります(笑)。

──今回は若手からベテランまで多彩なメンバーが揃っています。宝塚時代3度の組替えを経験された壮さんは、どんなカンパニーでも自然に入っていかれるのでしょうか?

もともと「来るもの拒まず、去る者追わず」という性格なので、自然にその場にいますね。グループも絶対作らないです。そういうところは男っぽいのかな。とにかくショーが久しぶりなので、それを楽しんでいる私をご覧いただきたいです。そして少人数だからこそ、カンパニーの団結力を出せたらと思います。

(Lmaga.jp)

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