【大阪・現地ルポ】アイドルの運営は本当にヤバイのか?

取材・文/田辺ユウキ

アイドルグループの運営はいったいどんな存在?

「アイドルはなぜ、地下で夢を見るのか!?」をテーマに、大阪のアイドル事情について昨年から不定期で現地ルポを届けてきた。そんななか、アイドル事情に詳しいインタビュアー・吉田豪氏が「まともな(女性アイドルの)運営は2割くらい」とのコメントをテレビ番組で発言し、SNSを中心に物議を醸した。

その真意については、吉田氏のこれまでのツイートや関連記事をさかのぼって判断して欲しい。ただ実際、運営スタッフやプロデューサーが所属タレントに手を出したり(色恋関連)、金銭トラブルが発生したり、本意ではない企画が実行されるなど、アイドル本人やファンを裏切る出来事が起こっている。

誰もがアイドルを名乗り、個人でも活動ができるこの時代。運営がつく必要性はどれくらいあるのだろうか。アイドルに無縁な方は、運営、プロデューサーとはそもそも何をしているものなのかと疑問を持つはず。「かわいい女の子とお近づきになりたいだけでは?」と感じる人もいるだろう。テレビなどで報道されるアイドル事情は、関東地方ばかり。そこで今回は、大阪を軸に活動するアイドル・グループのスタッフに取材をおこなった。

タレント事務所「ツーマンセル」を経営する石川ケンイチさんがプロデュースしているのは、「お弁当」を中心に日本独自の文化を発信する(オベントイドール)。もともと、広告代理店から出資などサポートを受ける形でグループ結成の話が進んでいたが、「外国人観光客をターゲットに、とある場所でステージ・パフォーマンスをするはずが、デビュー前に企画そのものが白紙になってしまって・・・(苦笑)。今さら引き返せない状況だったので、将来的に地域や企業とコラボをしてもらえるように、頑張っていこうと意を決しました」といきなり苦境に立たされたという。

石川さんの業務は、運営資金の割り振り、ライブのブッキング、プロモーション、メンバーのスケジュール管理、物販スタッフ、楽曲のプランニングなど「作曲、グッズデザイン、ダンスや歌のレッスン以外は全部自分でやっています」と大忙し。大手事務所のように大勢のスタッフを雇っているわけではなく、自力の運営とあって潤沢な環境とは言えない。

ただ、「まずメンバーに金銭的負担がかからないようにしています。レッスンは無料。決して高額ではありませんが、ギャランティも『1ステージにつき幾ら』という風に固定金額をそれぞれに渡しています。大きな成長があったり、それぞれにファンがたくさん付いたりすれば、それに応じてギャランティも調整していきます。チェキなど物販の売り上げに対する歩合性(バック性)のグループも多いかもしれませんが、うちはトータルで評価していくことで、総合的な能力アップを計っています」と現状を話してくれた。

トラブルを起こすのではなく、対応するのが運営

広告代理店「ダイフク企画」に勤める谷垣篤さんは、大阪の天神橋筋商店街とその界隈を拠点とする(テンシックス)を運営。同社が制作するテレビ番組内の企画として、グループを結成。番組スポンサーである企業のバックアップを受けて活動している。

谷垣さんの業務も石川さんとほぼ同じだが、「大企業がサポートしてくださっていることは、ほかのグループに比べて恵まれていると思います」という。宣伝面が行き届かなかったり、アイドル本人に自腹を切らせたりする運営も少なくないなか、「地上波のテレビ番組への出演、ラジオCMでの楽曲使用など、さまざまなプロモーションが展開できています。メンバーが6人もいるので毎月の運営資金に余裕はありませんが、レッスン代や交通費などはメンバーが負担しなくても良いようにできています」と、土台がきっちりしていることの強みを話した。

また、谷垣さんが何度も口にしたのが、「責任と信用」の問題。「誰でもアイドルになれる時代だからこそ、運営会社の後ろ盾があることは、そのアイドルに対する信用度の点で大事なのではないでしょうか。仕事柄、得体の知れないタレントや運営スタッフに重要な役割は任せられません。金銭面や意見の行き違いなど問題が起こったとき、会社間であれば対処できることが、個人レベルだと難しい場合が多い」とトラブル対応について違いがあるという。

Obento Idoleは2017年、AbemaTVの『矢口真里の火曜The NIGHT』にゲスト出演。さらに、食や日本の文化に関連した企業などとのコラボ実現の可能性が高まっている。TEN6も、天神橋筋商店街の公認グループではないが、大阪名物・天神祭のギャルみこしや天神天満花娘に選ばれるなど、地域貢献の幅が広がってきている。

そんな石川さん、谷垣さんに、冒頭の吉田豪氏のコメントについてどのように感じたか尋ねてみたところ、両者ともに「トラブルが続出しているし、環境作りを怠り、売るつもりがない運営もいるのでおっしゃられることは分かります」と理解を示した。

アイドルビジネスには、それぞれの判断力が必要

石川さんは、「大人が正しいと思ってやっていることでも、誤解が生じたりする。また、ライブでは口パクだったりしても、ミュージックビデオや衣装は素晴らしかったり。金銭、センス、人間性などすべてが完ぺきに揃っている状況は稀。そういう部分では、まともな運営は確かに2割もいないかも。ただObento Idoleについては、なんとかアイドル活動だけで生計を立てさせてあげたい。それが自分なりの運営目標です」と毎日試行錯誤している。

谷垣さんは、「まともの基準は人それぞれですが、確かに誰でもアイドル運営を名乗れるし、趣味の延長でやっている人たちもいます。というか、世のなか的にはそういうイメージが先行している。実際に、会社や事務所として運営をしているところが少なすぎるから、2割という数字になるのかもしれない。どれだけかわいくて歌やダンスがうまくても、信用のできる人のもとでやっているかどうかは、もっとも重要。アイドルをやる上では、そこをちゃんと見極めて欲しい」と注意を促す。

最後に、石川さん、谷垣さんが共通して語るのが、「関西は関東に比べて業界が狭い。だから悪い噂はすぐ広がる。そんななか、一生懸命やっているところは決して少なくはない」ということ。お金のやり取りが発生する以上、大なり小なりアイドルはビジネスである。個人の運用ではまかない切れないところが多く出てくる。そこで頼りたくなるのが、オトナの力。だが、アイドルを単なる食い物として扱うブラックな運営は、間違いなく存在する。それぞれの判断力がより必要になるだろう。

(Lmaga.jp)

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