京都で、文化財保護支える便利堂の企画展

創業130周年を迎える美術印刷の老舗「便利堂」が手掛けてきた文化財の写真撮影と複製の歴史をたどる展覧会『至宝をうつす』が、12月16日から「京都文化博物館」(京都市中京区)でおこなわれます。

京都の「便利堂」といえば、美術品のポストカードや美術書が有名です。しかし同社には「コロタイプ」という製版技法を駆使した古美術品の複製という、もう一つの重要な事業があります。貴重な美術品や文字資料の複製は、古来から人の手による臨写や模写でおこなわれてきました。ところが19世紀中頃に写真が登場すると、文化財はカメラで撮影されるようになります。昭和24年(1949)には、奈良・法隆寺の金堂壁画が焼損するという大事件がありました。しかし、その14年前に便利堂が焼損前の壁画を撮影しており、文化財を撮影しておくことの重要性が証明されたのです。ちなみにこの時のガラス乾板(感光する写真乳剤を塗ったガラス板)は重要文化財に指定されています。

コロタイプも便利堂が得意とする分野です。この技法は写真製版としては最も古いものですが、自然な濃淡や諧調の表現に優れており、国宝・重要文化財の絵画・書跡などの複製に利用されています。大変な手間と技術力を必要とするため世間一般ではほとんど使われませんが、文化財保護ではほかに代えられない技術です。

本展では序章と4つの章で、便利堂が手掛けてきた文化財の写真撮影と複製の歴史をたどります。法隆寺金堂壁画や高松塚古墳の撮影といった代表的な仕事を振り返るほか、便利堂が製作した文化財複製の展示も。独自の視点から文化財保護について考える絶好の機会です。期間は2018年1月28日まで、料金は一般1000円。

文/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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