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松井玲奈、アイドルから女優への脱皮「芝居がしたくて芸能界に入った」

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映画祭『MOOSIC LAB 2015』で史上初の6冠を獲得、一躍注目を集めた弱冠25歳の酒井麻衣監督の商業デビュー作『はらはらなのか。』。12歳の原菜乃華が冴えない子役・原ナノカを演じ、ファンタジーとドキュメンタリーの狭間でさまざまな経験を通して成長していく物語だ。そのナノカが運命的に出会う喫茶店の店主・リナ役には、元SKE48の松井玲奈。かつてアイドルとして一世を風靡するも、ドラマ『ニーチェ先生』、舞台『新・幕末純情伝』などで、そのイメージを次々と限界突破。女優として注目を集める松井玲奈に、話を訊いた。

写真/上地智


「脚本を読んだとき、『どうしたらいいのかな?』と」(松井玲奈)

──1991年生まれの酒井監督とは同世代なんですよね。

そうですね、25歳で同い年です。

──これまで、ドラマや映画の現場で、同い年の監督・ディレクターと仕事をする機会って?。

多くはないですね。でも、私がデビューした頃、クリエイターや作り手を目指していた方々が、学校を卒業したりとか、自分が挑戦できる年になって、今は少しずつ増えてきましたね。

──同世代のクリエイターと作品を作っていくことの面白さ、刺激などはありますか?

酒井さんと初めてお会いしたとき、同い年の監督さんが出てくるようになったんだといううれしさはありましたね。で、お話をしていると、すごく感性が豊かだな、と。アニメだったりゲームだったり、同じカルチャーを通ってきているなかで、ひとつひとつの捉え方が自分と違う角度だったりして、お話していてとっても楽しいです。

──今回の映画は、主人公のナノカが、ファンタジックでリアルな世界を通して変化していくお話であると同時に、酒井監督はファンタジーと現実の狭間で揺れる作り手としての葛藤も描いていると思いました。

表現者の葛藤、ですか。

──たとえば、「お芝居って結局、ウソじゃないですか」というナノカの台詞が中盤にもありますが、訴求したいテーマがあって、それを演出しようとすると、どうしても作り物の世界になってしまい、ファンタジックな世界観が特徴の酒井監督は、特にそれが顕著になります。作られた世界から浮かび上がるテーマ、感情すら虚像になってしまうというか。

私はまだ、あまりそういうことに直面したことがないんですけど、お芝居自体は作られたものであっても、ステキだなって思うお芝居って、気持ちのどこかに本物があるからこそ、うれしかったりとか、悲しかったり、涙が出たりするんじゃないかなって。観てる側もそうですし、もちろん演じている側もそう思います。たとえば、ひとりの役者さんが涙を流していても、それを本当の涙だと思う人もいるし、ウソの涙だって思う人もいるので、その捉え方の違いはすごく面白くもあり、難しい部分でもあるのかなって。

──ちょっとややこしいことをお聞きしたのは、12歳の女の子が主人公のファンタジックな物語ながら、ちゃんと大人もリアルに共感できる作品になっていると思ったので。ファンタジーを夢物語で終わらせない、監督の意志が強く表現されているなと思いまして。それを、同世代の松井さんが演じる側としてどう捉えているのかな、と。

そうですね。最初、脚本を読んだとき、「どうしたらいいのかな?」という悩みもあったんです。透明ナノカちゃんという、もうひとりのナノカが出てくるような、自分のなかに憧れの世界がある女の子が現実に直面していくお話で、ちょっとファンタジーっぽい部分があって。自分は現実側に強くいた方がいいのか、ナノカの夢の方に寄り添っていた方がいいのか。リナって役柄が、すごく間に居るような存在だったので。

──なるほど。

それと、酒井さんが「どんなおとぎ話にも、元になった人が絶対いたはずだ。だから嘘じゃない」って話をしてて。それを聞いたとき、すごく納得するところがあって。今回、ファンタジックな物語ではあるんですが、ナノカ役もリナ役も、キャストに近いというか、当て書きして脚本を書いてるからこそ、現実にも訴えてくる作品として成立しているんじゃないかな、というのは思いましたね。

──酒井監督とは同い年で感性も近い、なおかつ通ってきたカルチャーも似てるということで、あうんの呼吸な場面も多かったですか?

最初はやっぱりわからないことも多かったんですけど、撮影をしていくうちに、だんだんお互いに分かってくると言うか、その感じがすごく楽しかったですね。



「最初は居場所がないような感じがしていた」(松井玲奈)

──今回の物語は、松井さんが音楽ユニット・チャラン・ポ・ランタンとコラボしたシングル『シャボン』(2016年)を酒井監督が聞いて完成したと聞きましたが。

酒井さんが私のことを知っていてくださっていて、脚本に行き詰まっているときに『シャボン』を見たんだそうです。ナノカと関係をもつ新しいキャラクターとして、私をモデルにしたリナが生まれたとき、脚本の筆がまた進むようになったと。それを後から聞いたときは「ああ、うれしいな」って思いましたね。とはいえ、自分のすごくパーソナルな部分というより、アイドルの松井玲奈をイメージして書いてるんですね。なのでナノカちゃんと接するときも、「後輩に想いを伝えたり、注意したりしたときのことを思い出して演じて欲しいです」と言われていたので、自分でありながら、ちょっと自分とも違うところもありましたね。

──リナというのは、物語を導く上で重要な役どころではあるんですが、ファンタジー側のお母さんのようでもあるし、現実世界のお姉さんでもある、すごく難しい距離感で演じられていましたね。

そうですね。先輩が後輩を見守る関係でありながら、でも、ナノカにとって居ないお母さんにも見えて欲しいとは言われていたので。監督だけでなく、お母さん役の松本まりかさんも一緒になって、作品のことを話したりしましたね。なので、まりかさんの力も大きかったです。

──ナノカ役の原菜乃華さんとはどうでしたか?

普通に、「最近、学校でなにしてるの?」とか、日常的な会話が多かったですね。最初はお互い人見知りで距離があったんですけど(笑)、でも、リナとナノカが近づいていくように、自分たちも距離も縮まって、すごく作品とリンクする不思議な感覚でしたね。

──ラストのシーンは、酒井監督は相当苦労されたということでしたが。

私はそのあたりのお話、あまり聞いていなくて。ただ、脚本と出来上がったものとでは、核になる部分が違うというか。最初はナノカの物語だったんですけど、最後の最後で、原菜乃華ちゃんのドキュメンタリーを見ているような感覚にさせられる映画だなって。ただ、セリフを変えずに、見せ方をちょっと変えるだけで、話の主軸がこんなにもガラッと変わるんだなと。ファンタジックなところから、より現実に近い作品になったなあと、初号試写を見たときに思いましたね。

──子役女優の原菜乃華さんの成長を後押しする映画でありつつ、酒井監督の想いも強く込められているからか、大人も共感できる映画になりましたね。

酒井さんも、自分自身が子どものときに直面した想い、真実なのかウソなのか、夢を見ていいのか、夢って叶うのか、そういう気持ちを映画に盛り込んでいると言っていて。私も分かるなってところがありましたし、大人の方もハッとさせられるような、真っ直ぐな作品になったと思いますね。

──それと、松井さん出演の映画としては立て続けに、『笑う招き猫』もあります。清水富美加さんと漫才コンビを演じた「しゃべくり倒し」のガールズ・ムービーですが、こちらの方はまたガラリと印象が変わりますね。

周りの人にも、「今までにない役で、殻を破ったよね」って言っていただけますし、作品としても、諦めるとはどういうことかを描いているので、自分が今直面している問題だったり、自分が歩いている道に迷いが出たときとか、かなり刺さる言葉や状況が多いんじゃないかなと思います。出てくるキャラクターがみんな、なにかにつまずいたり、諦めたり、それでも続けようと思ったり・・・漫才コンビのお話ですが、そういう葛藤を描いた映画でもあるので。

──メガホンをとった飯塚監督は、2016年にドラマ『神奈川県厚木市ランドリー茅ヶ崎』でもご一緒していますが、監督はどんな方ですか。

毎回、いろんなことを教えていただけるので、一緒に撮影をすると、背筋が伸びるというか。とても作品に対して誠実な監督さんだなって思ってますね。

──飯塚監督といえば、映画『風俗行ったら人生変わったwww』やドラマ『荒川アンダー ザ ブリッジ 』などが有名ですが、作風からして現場は和気あいあいとした雰囲気なのかなと勝手に思っていました。

そういうときもありますけど、締めるところはしっかり締めてくれるというか。私はもともとアイドルで、今はお芝居をやりたくてそういう活動をしていますが、最初はどこに行っても居場所がないような感じがしていたんですね。それを、「君たちは俳優部なんだから、俳優部としてちゃんと仕事をしよう」というスタンスで、「お前もチームのひとりなんだから、ちゃんと自覚を持て」と面と向かって言ってもらえるおかげで、すごく背筋が伸びるなと思っていつも現場に行ってました。

──そもそもSKE48を卒業した後、いろんな道があると思うんですが、なぜそのなかで女優を選んだんですか?

私はもともと芝居がしたくて芸能界に入っていたので。アイドル志望じゃなく、お芝居というものを勉強するために、ステージに立っていたということですかね。

──アイドルを経験をしたからこそ、お芝居に生きている部分もある?

舞台度胸みたいなものは、アイドルとしてずっとステージに立っていたからこそあるものだなって思いますね。基本的には人見知りなんですけど(笑)。歌も表現のひとつだと思ってアイドルをやっていたので、勉強になることは多かったです。

──今回の『はらはらなのか。』『笑う招き猫』もそうですが、ドラマ『ニーチェ先生』、舞台『新・幕末純情伝』など、アイドル時代のイメージにとらわれない、女優・松井玲奈の底知れぬポテンシャルを楽しみにしている人も多いはずです。すごく期待してます。

ありがとうございます。がんばります!


(エルマガジン)

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