谷村美月「キツイ女と思われる?」

終戦後の兵庫県神戸市を舞台に、子ども服作りに邁進する4人の女性たちの姿を描くNHKの連続テレビ小説『べっぴんさん』。半年もの長丁場のうちすでに約1/3が放送され、現在ヒロインのすみれと女学校時代の友人・君枝と良子の3人に加え、元看護師・明美の4人が会社創設に奮闘している。なかでも貧しい家庭で育ち、ほかの3人とは境遇の違う明美を演じているのが、来年女優デビュー15周年を迎える谷村美月。数々の映画やテレビドラマで活躍する谷村を、評論家・ミルクマン斉藤が直撃した。

取材・文/ミルクマン斉藤 写真/渡邉一生

「カメラが生き物に見えたことがある」(谷村美月)

──今や日本映画界では特別な存在感を放つ・・・といいますか、どんな作品でも出てくるだけで画面がキリリと締まる谷村さんですが、デビューは朝ドラの『まんてん』(2002年)だったんですね。

そうですね、女優デビューという形は朝ドラでした。

──でも役の大きさといい、出番の多さといい、今回は格段に違うと思うのですけれども。

大変なことはいっぱいあったんですけど、そんなの忘れてしまうくらいバーッと撮っちゃうので、あまり「ああだったな、こうだったな」と残ってないかも知れないですね。結構、「はい、はい、はい」って感じです(笑)。撮った瞬間は「これで良いのかな?」と思ったまま終わったりしますけど、帰ったらもうそんなことは忘れて「次!」、みたいな。

──また明日、同じテンポで撮影があるんですもんね。朝ドラ経験者の方は口をそろえて、その凄まじい速度での撮影が延々と続くのが大変だとおっしゃってますね。

程よいリズムというのが全然見つからないんです。慣れるようで慣れない。撮っていくスピードもそうですけど、そもそもあんなに沢山のカメラで撮らないじゃないですか? 5台はある。あんなに何台ものカメラに囲まれたことは今までのドラマではなかったな、と。そういえばカメラがなんか生き物に見えたことがありました。普通のカメラではなくて、巻いてあげたりとかする(高さを調整できる)やつだったので。それがまた生物に見えて(笑)。

──あはは。でも複数台のカメラで演技を押さえるその効果はとても発揮されてますよね。台詞の数が驚くほど少ないぶん、状況を言葉で説明するよりも、表情の微妙な変化だけで語ってしまうようなシーンがとても多いですから。この丁寧な仕事のクオリティを保持したまま、撮りこぼしなく効率よく進めていくのに、複数のカメラは必要不可欠かもですね。昔は朝ドラといえば「時計代わり」なんて悪口もあったものですが(笑)。それを許さない気迫というか、きっと受け入れてくれるだろうという視聴者に対する信頼さえ感じます。

私もこれ、流し観できないなぁ、と思って。観るなら観る!ってしないといけないドラマだなと。

「自分がしてもらったことをしていきたい」(谷村美月)

──全体的に言葉数が少ないのに、とりわけ明美役は要となる言葉をズバッと言う、というのが役のスタイルとして顕著に割り振られているから、その重要性は大きいんですよね。だいたいその後の展開を導いていくことになっている。

朝ドラというものが、いつからそういうテイストになったのかは判らないですけれども、私がむかしヒロインのオーディションを受けたときなんかは、すごい長台詞の台本が来たんですよ。うわー、こんだけ喋るんだと思って、これがずっと続くのは無理だなと(笑)。それに比べたら今回は、脚本家の渡辺千穂さんのテイストなのかも知れないですけど、わりとキャラクターがぽつぽつぽつとしゃべることの方が多いので。でも、私はそれが好きなんです。映画(の出演)が多かったからでしょうかね。

──渡辺さんの脚本は初めてですか?

前にいちど、LaLa TVの『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(2014年)でご一緒したんですが、その時は何人かがバーで掛け合いを延々とするドラマで、ずーっと誰かが喋りっぱなしだったんです。だから今回の台本をいただいたときは「おぉ~」って。

──今回、「四つ葉のクローバー」ユニットのひと葉として、芳根京子さん、百田夏菜子さん、土村芳さんの誰かと常に絡む役ですよね。女優としては実際の年齢以上に、ほかのお三方より遥かにキャリアを積まれていると思うのですけれども。

キャリア云々はあまり思ってないですけれど、自分は年上の役者さんと仕事することが多かったので、いろんな面で支えてもらっていたんだなぁとは改めて思いますね。自分がしてもらったことをこれから自分もしていきたいし、今、そういう立場に自分はいるのかなぁ、と。

「明美さんは結構キツイなと思っていた」(谷村美月)

──ドラマでは第1回目の冒頭から、四つ葉のクローバーの意味するものが「勇気」「愛情」「信頼」「希望」だと語られます。明美という役はそのどれに当たると思いますか?

うーん、あまり考えてないんですよね(笑)。でも前にそういう質問をいただいたことがあって、ほかの3人が「愛情」だって言ってたみたいです。私としては、四つ葉のクローバーとは言ってくれるけれど、もともとは3人で(学生時代に)お裁縫クラブを作ったということが大きいと思うので、やっぱり「3-1」な気がするんです。

──確かにそうですね。仲良しグループに収まってしまいそうな3人だけど、明美の言葉がタガを締めるというか。言い換えれば、お嬢様たちの「お裁縫クラブ」が「一企業」として、一般大衆に受け入れられ影響を与え伝播していくのに必要な意識変革を促すのが明美の役割になってるな、と。

視聴者の方からもそういう言葉をいただいていて。明美さんというキャラがいなかったら見ていてウズウズしていたとか(笑)。でも私はそういうところ、結構キツいなと思って演ってはいたんですよ。まだ3人と仲良くなる前に撮ることが多かったので。もうちょっと仲が良くなってからのシーンから撮りたいな、という思いはありました。

──そんな明美と3人との関係性がどう変化していくのか変化しないのか・・・どうも、まだ完結していないし、撮了してもいないドラマについてお訊きするのはけっこうもどかしいですね。映画についてインタビューするときとはどうも勝手が違って(笑)。

私も最初の台本をもらって読んだときに同じようなことを思ったので。最初「これで進むのかな」と若干疑問ではあったのですけれども、そのうち共演者さんがしっかり動かしてくれているんだなぁ、と感じてちょっと安心しました。たぶん視聴者の方にも、最初は主人公の思い通りにならない役だから「ホンマきつい女やなぁ」みたいな感じで受け取られかねないと思ったんですけど、それからいろいろ進展してきてそうでもなくなっていると思います。私自身はコンスタントに変わらない気持ちでいようと思っています。

(Lmaga.jp)

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