ケイバ熱盛ブログ「因縁の舞台で」(5月8日)

 こんにちは。谷厩舎を勝手に“母厩舎”と呼んでいる栗東・松浦です。この仕事をしていると、デビューからともに戦ってきた馬の勝利は、まるで自分のことのようにうれしいです。記者冥利に尽きるといつも感謝しております。

 本日の東京9R立夏Sで、木埜山賢厩務員が担当するダンツキャッスルが快勝。この馬の能力の高さを思えばかなり遠回りしましたが、5歳にしてようやくオープン入りを果たしました。その瞬間、これまでの彼の歴史が走馬燈のように頭を駆け巡りました。

 さかのぼること、あれは19年6月15日。その週の東西トレセンは“グリーンカル問題”で揺れていました。と飼料から禁止薬物が検出されたことで、出走予定馬のうち156頭が競走除外となる異常事態に。そんな中、東京に担当馬2頭を連れて行く予定だった彼にとっては、想像もつかない悲しい週末が待っていました。

 レース当日。「すごく雨が降って、ダートコースはカチカチ。嫌な予感がした」とのちに振り返った木埜山さんの不安が的中。土曜の障害未勝利戦に出走した担当馬のメイクアップが、障害飛越後に故障を発症し、競走を中止-。安楽死の処置が取られました。その悲しい最期は以前、デイリースポーツオンラインのオピニオンDに投稿した“壮絶だったメイクアップの最期 現場のリアルな声を伝えたい”に記しました。興味のある方はぜひ一読を。

 悪夢はまだ続く。心の整理がつかぬまま臨んだ翌日のユニコーンS。6番人気に支持されたダンツキャッスルが、まるで悲しみに暮れる木埜山厩務員を励ますように3着に力走してみせました。しかしながらその代償は大きく、レース後に右前種子骨の骨折が判明。約1年に及ぶ長期休養を余儀なくされました。

 期待馬が土曜に安楽死、そして日曜には大ケガ…。これほどまでのどん底を味わったホースマンに、私はこれまで出会ったことがありません。ましてグリーンカルの件では除外された156頭の騎手、調教師、馬主など関係者に、条件等に応じて一定額の交付金(出走レース3着賞金相当+出走手当)を支給。つまり、一生懸命走った末に大きな代償を被ったメイクとキャッスルはいわば“走り損”になってしまったのです。「あの日、開催が中止になっていればこんなことには…」。無念の言葉が、今でも耳から離れません。

 あれから2年-。木埜山さんもキャッスルも、よくここまで立ち直ったと思います。奇遇にも、立夏Sが行われた東京ダート1600メートルは、あのユニコーンSと同じ舞台。この勝利を、天国にいるメイクアップもきっと祝福してくれていることでしょう。因縁の舞台で復活を遂げたこのコンビのさらなる活躍を期待しています。

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