ホーム > 競馬・レース >10プレイバック > スプリンターズS・G1

スプリンターズS・GI

純・香港勢で決めた

ウルトラV

2010/10/03 中山競馬場

▼スプリンターズS・G1
1着 ウルトラファンタジー  H.ライ  
2着 キンシャサノキセキ 四位 洋文 ハナ
3着 サンカルロ 吉田 豊 1/2

 これがスプリント王国の底力だ。香港勢2頭のうち、前評判で劣っていた10番人気ウルトラファンタジーが力強く逃走。外国馬としては06年テイクオーバーターゲット(豪州)、香港馬では05年サイレントウィットネス以来の勝利を決めた。2位入線のダッシャーゴーゴーは4着に降着。昨年の覇者キンシャサノキセキが2着、サンカルロが3着に繰り上がった。

ウルトラファンタジー

ゴール前激しく競り合うウルトラファンタジー(左奥)とダッシャーゴーゴー(左手前)だったが審議の結果ダッシャーゴーゴーは降着に

 

スプリント王国の“伏兵”

あっ逃げ切った

 

 底力見せた 血の入れ替えが見られず、停滞化がささやかれる日本のスプリント界。1番人気も香港馬グリーンバーディーに譲る中、“第二の矢”が力強く逃走を決めた。G1未勝利の10番人気ウルトラファンタジー。540キロの巨漢を揺らしながら歓喜のゴールへ飛び込んだ。


 単騎逃げ以外では危うさを露呈するというのが戦前の評価。誰よりも特性を知る陣営は、好スタートからきっちりハナを奪った。勝負どころでローレルゲレイロに並びかけられても動じることなく、ゴール前でもダッシャーゴーゴーの猛追をしのぐ。随所に底力を見せ、さすが短距離王国と日本のファンをうならせた。

 

 自身もG1初勝利の鞍上・ライはVに至るまでの心境を振り返る。「馬場が湿ったら駄目な馬。最初は天気のこともあったし、どうしようかと。でも日に日に天候が良くなった。返し馬で馬も落ち着いていて、“これは行ける”と思ったんだ」。まだあどけなさの残る26歳は今回が初来日。「最後は“神様”という感じ。勝った時は“きょうはオレの日だ”って思った」と異国の地で屈託のない笑みを浮かべた。

 

 純・香港勢での勝利が陣営の喜びを倍増させた。過去に日本G1を制したサイレントウィットネス、フェアリーキングプローン(00年安田記念)、ブリッシュラック(06年安田記念)は騎手や調教師に欧州人等を含む混成チーム。「心して地元スタッフを集めた。初来日でこれ以上ない喜びだ。ゴール前は上下に飛び上がっていたよ」と歴史的Vにイウ師は胸を張る。

 

 師は世界的スプリンターのセイクリッドキングダムも管理。いわば第二勢力が制したのだから、再来日を視野に入れるのは当然だろう。「セイクリッドも来年、来られるように」と“2頭出し”をにおわせれば、ライも「また騎手として日本に戻りたい」と意欲を燃やす。層の厚さを見せつけた香港勢。円高の日本は最高の稼ぎ場だ。

 

 

 

 

ウルトラファンタジーとH・ライ

スプリンターズSを制したウルトラファンタジーとH・ライ(左から2人目)

 

 

 

 

キンシャサ 夢散2着

春秋スプリントG1制覇ならず


 春のスプリント王キンシャサノキセキは2着。春秋制覇の夢は消えた。テンには行けなかったものの外を徐々に押し上げ、4角では前を射程圏に。鞍上のステッキにこたえてジリジリと伸びたが、3位入線が精一杯だった。「一回使えていたらなあ。久々の分なのかイラついていたし、道中も掛かってしまった」。四位は残念そうにつぶやいた。
 大一番へ向けての叩き台となるはずのセントウルSは、阪神競馬場に到着した後にセン痛のアクシデント。出走取消を余儀なくされた。幸い症状は軽く、すぐに調教は再開されたが、ぶっつけ本番はやはり不利。目に見えない部分で影響が残ってしまった。
 それでも2着。2位入線のダッシャーゴーゴーの失格降着による繰り上がりだったとはいえ、連は確保。ファンの馬券には貢献した。「決して悲観するような内容ではなかった。春のタイトルホースとして、内容のある競馬ができたと思う。年齢的な衰えもないし、まだまだやれるよ」と四位は胸を張る。これで終わったわけではない。今後もスプリント界の王道を、まっすぐに突き進む。

 

 

サンカルロ

不利に泣き3着

 

 痛恨の不利だった。直線で内ラチ沿いにできた進路に突っ込もうとしたサンカルロだったが、ダッシャーゴーゴーの内斜行により、手綱を引っ張り体勢を崩すアクシデント。手応えは抜群だっただけに、吉田豊は0秒3差の繰り上がり3着という結果に唇をかみしめる。「外を回すつもりはなかった。(スペースに)入り切っていれば際どかったけど…」と悔しさをにじませた。

 

 

ダッシャー降着

2位入線も4着

 

 重苦しい空気に包まれた。2位入線のダッシャーゴーゴーは最後の直線走路で内側に斜行し、4位入線のサンカルロの進路を妨害。長い審議の末、4着降着の判定が下された。G1での降着は今年の天皇賞・春(トーセンクラウン11位入線→18着降着)以来。開催日4日間の騎乗停止となった川田は「迷惑をかけた関係者とファンの皆様に申し訳なく思います」と声を絞り出した。
 国内外の強豪が一堂に会した舞台で、高いパフォーマンスを見せた。3歳馬唯一の参戦だったが、セントウルS制覇はフロックではなかった。安田師は「状態は攻め馬から良かった。古馬が相手だったが、よく頑張った。結果は残念だが馬をたたえたい」と振り返る。次走は未定だが「1200メートルが合っているので(レースを)絞っていきたい。次に向けて調教していきます」と前を向いた。





ウルトラファンタジー…8歳。父エンコスタデラゴ、母ベルアングレーズ(母の父サーアイヴァー)。馬主 T・ラム氏。生産地・豪州 エルドン・パーク・スタッド。戦績・48戦9勝(海外47戦8勝)。重賞・10年スプリントC(香港G2)に続いて2勝目。総収得賞金・205、402、000円(海外約107、000、000円)。P・イウ調教師、H・ライ騎手ともに初勝利。

Copyright(C) 2011 デイリースポーツ/神戸新聞社 All Rights Reserved.
ホームページに掲載の記事、写真などの無断転載、加工しての使用などは一切禁止します。ご注意下さい。
当サイトは「Microsoft Internet Explorer 4.x」「Netscape Navigator/Communicator 6.x」以上を推奨しています
Email : dsmaster@daily.co.jp