桜花賞・G1

アパパネ

桜冠奪取

2010/4/11 阪神競馬場

▼桜花賞・G1
1着 アパパネ 蛯名正義  
2着 オウケンサクラ 安藤勝己 1/2
3着 エーシンリターンズ 福永祐一 クビ

 四半世紀ぶりの快挙―。1番人気に推された蛯名騎乗の2歳女王アパパネが、レースレコードの1分33秒3で優勝。昨年のブエナビスタに続き、史上9頭目の阪神JF馬によるVを成し遂げた。関東所属騎手の桜花賞制覇は25年ぶり。2着は逃げた3番人気オウケンサクラで、3着は11番人気のエーシンリターンズ。4着のショウリュウムーンまでの上位4頭が、オークス(5月23日・東京)の優先出走権を獲得した。

アパパネ

馬場の真ん中から突き抜けるアパパネ(左から2頭目)

 

やったネ!!蛯名

9度目挑戦初戴冠

 

 仁川の桜の下、関東の意地が咲いた。蛯名が四半世紀ぶりの快挙を目指してムチを振るう。鞍上の気持ちに応えるため、2歳女王アパパネが力強く脚を伸ばしていく。逃げるオウケンサクラをゴール前で捕らえた瞬間、重い扉は開かれた。


 「馬場が良くて前が止まらない。流れに乗りたいと思っていた」と判断し、5番手を確保。やや掛かり気味だったとはいえ、ポジションは理想的だった。直線は必死に追うのみ。「何とか前を捕まえたい。いいタイミングで前に出ることができた」。ほぼ完ぺきなレースぶりで85年エルプスの木藤隆行元騎手以来、25年ぶりの関東所属騎手による桜制覇を達成した。

 

 夢にまで見た瞬間でもある。「桜と景色。子どものころから華やいでいるなあ、と思っていたんだ。勝ってみたい気持ちはすごくあった」と振り返る桜の舞台は今回が9回目の挑戦。過去には04年アズマサンダース、08年エフティマイアで2着と涙をのんだ。「ましてや1番人気の馬に乗せてもらって…。こんなことはもうないんじゃないかという気持ちで頑張った」。思いは昇華した。


 関東を引っ張るトップジョッキーは言う。「最初から東が駄目とは思わない。いろんな方法がある。東西でしのぎを削った方が面白い」。2番人気アプリコットフィズもまた、自身が主戦を務めた馬。複雑だったであろう胸中は、あえて口にしない。「僕らは与えられたことをするだけ」という仕事人だからこそ、そして切に西高東低の打破を願ったからこそ、神様もほほ笑んだのだろう。

 

厩舎も快挙を支えた。当日の馬体重はプラス6キロで臨んだ始動戦のチューリップ賞から、さらにプラス2キロ。「すべて順調にきていた。筋力が増えた分」と栗東留学のノウハウを知る国枝師に焦りはなかった。自身初のクラシックV、そして7勝目にして初の1番人気でのG1制覇。「緊張したけどなあ」と笑顔で喜びをかみしめた。

 

次走は府中の杜、オークスへ。「距離は心配してもしょうがない。対応できるように」と師が言えば、蛯名も「またチャレンジするつもりで」と表情を引き締める。待ち受けるのは未知の距離。それでも、歴史に名を刻んだ強力なスタッフのスクラムなら難しい挑戦ではない。

 

 

 

蛯名

Vへエスコートした蛯名は馬上で会心の笑み

 


【金子オーナー】

 

 会心の勝利にオーナーの金子真人氏(64)も大満足。かつては父キングカメハメハ、母ソルティビッドもともに所有。「キングカメハメハの産駒で桜を獲れたのがうれしいです」とニコニコ顔。ディープインパクトを所有していたことでも知られる名馬主。天皇賞・春(5月2日・京都)にはフォゲッタブルもスタンバイ。「いい流れですね」と上昇機運を喜んだ。

 


【NF代表吉田勝己氏】

 

 2歳女王による期待通りの勝利に、ノーザンファーム代表の吉田勝己氏は納得の表情を見せた。「スタートが良かったですね。馬もすごく良くなっていたと思う」。前哨戦のチューリップ賞では2着に敗れたが、本番では単勝2・8倍の1番人気を背負って出走。昨年のブエナビスタに続いての桜制圧に「人気に応えられるのが一番ですね」と目尻を下げていた。

 

 

 

 

サクラ粘って2着 樫で大輪咲かす驚異の二枚腰で女王苦しめた


 世代屈指のタフネスが女王を苦しめた。3番人気のオウケンサクラが逃げて2着に粘り込んだ。
 ゲートがあくと、押し出される形で自然と先手を奪う。「行く馬がいれば下げようと思っていたが、他馬もこなかった」と安藤勝。前半3Fを35秒6の絶妙なペースで通過し、マイペースを貫いて長い直線の攻防へ。迫るライバルに、懸命の右ステッキで抵抗。ラスト2Fで脅威の二枚腰を発揮し後続を引き離した。
 勝利をつかみかけた瞬間、外から猛然と襲いかかる影。勝利の女神はゴール寸前で2歳女王にほほ笑んだ。「前に行ってバテないタイプ。いい流れだったと思う。最後も伸びていたが、勝った馬はいい位置で競馬をしていたからね」。桜花賞4勝目、連覇を狙った名手は悔しさをにじませる。
 中1週でフラワーCを制し、中2週での決戦。音無師は厳しいローテにも不安はなかった。「本当は行かないレースをしようと思っていたんだろうけど、行く馬もいなかったので行ったんだと思う。(最後は)内にモタれていた」と振り返る。レースの上がり3Fが34秒4。「これで差し切られては仕方がない。(オークスの)優先権を獲れて良かった」と府中へと気持ちを切り替えた。
 福井明オーナーも「よく頑張ってくれたが、負けは負け。オークスで巻き返せるように頑張りたい」と前を向く。陣営の熱き思いを胸に、樫ではヒロインの座を譲らない。

 

 

リターンズ 低評価に反発3着

 

 大健闘だ。積極策から勝機をうかがったエーシンリターンズが、11番人気の低評価に反発して3着に善戦。持ち前の粘り腰を発揮し、ゴール寸前まで上位馬を苦しめた。
 道中は好発を決めたオウケンサクラとレディアルバローザの直後に取りつき、好位3番手でじっと待機。直線に入って満を持して追い出した。ラスト1Fを過ぎても、まだ手応えは十分。しかし、最後の最後で重賞ウイナーの底力に屈した。

 

 

ショウリュウムーン 伸び届かず4着  

 

 底力は見せた。ショウリュウムーンは4着。直線はしぶとく伸びたが、届かなかった。「モタれたけど、それがこの馬の走りだからね。馬の間に入ろうとすると頭を上げていたし、内枠がいいところも悪いところもあった」と佐藤哲。遅生まれだけに伸びしろを残している。「オークスはチャンスだと思う。モタれ癖がもう少し解消してほしいね」と前を見据えた。

 

 

アプリコットフィズ 5着もサバサバ  

 

 2番人気のアプリコットフィズは5着。初の遠征競馬で初めて連対を外した。横山典は「あの位置で捕まえ切れなかったのだから仕方がない。負けたといっても(勝ち馬は)すぐそこだし」とサバサバとした表情。「オークスは自分の庭で戦えるから頑張ってくれるんじゃないかな」と鞍上が言えば、小島太師も「今度は府中だからね」と樫での逆転を誓っていた。





アパパネ…牝3歳。父キングカメハメハ、母ソルティビッド(母の父ソルトレイク)。馬主・金子真人ホールディングス(株)。生産者・北海道安平町 ノーザンファーム。戦績・6戦4勝。重賞・09年阪神JFに続き2勝目。総収得賞金・211、523、000円。国枝栄調教師、蛯名正義騎手ともに初勝利。

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