【ボート】児島マスターズリーグ第2戦 スピンオフドラマ~丸尾義孝編~

 りりしい目元が印象的な丸尾義孝
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 「ボートレース記者コラム 仕事・賭け事・独り言」

 児島ボートで開催されたマスターズリーグ第2戦は村田修次(東京)がイン逃げで優勝。エース機を引きながらまさかの苦戦を強いられた3月児島のリベンジを果たした。

 45歳以上のベテラン勢が集結するマスターズは同世代間で火花バチバチ。今大会は主役をしのぐ活躍を見せるバイプレーヤーも登場し、予選は大混戦。物語は村田の優勝で完結したが、それぞれの人生がギュッと凝縮されたような人間ドラマが繰り広げられた。

 最近は主人公以外の人物にスポットを当て、別角度からストーリーを展開する配信用のスピンオフドラマが多い。マスターズは一人一人の個性が強く、今大会だけで何通りもの物語がある。私はV争いを追い掛ける一方で、どんどんV争いから遠ざかっていく丸尾義孝(54)=徳島・61期・A2=の姿を見守り続けていた。

 登録番号3333の丸尾の誕生日は、この大会初日の6月6日。引いたエンジンは63、ボートも63。同じ番号のエンジンとボートを引く確率は低い。今回は丸尾一人だけだ。しかも、3と6ばかり並んでいる。長い付き合いになるが、誕生日にレース場で会うのも初めてだ。

 初日の紙面は決まり!!メインレースの1号艇である主役格・石川真二(福岡)の横に自信を持って丸尾の濃い顔の写真を掲載。見出しは「丸尾、誕生日に連勝を狙う」だった。だが、初日の着順は3、6着。確かに、3、6には縁があった。

 初日にジャジャーンと取り上げておきながら、その後は丸尾の名前が紙面から消えた。最終日の紙面は優勝戦1号艇の村田が中心。逆転対抗格として児島V4の実績を持つ山一鉄也(福岡)の記事を載せた。

 そして、私のコラムはこの内容。(以下抜粋)【初日が誕生日で紙面に大きく取り上げた丸尾は機力不足に苦戦。5日目にしてようやく白星を手にした。途中帰郷者は8人も出たが、毎日整備とペラ調整に取り組む姿を見て、何があっても最後まで走り抜くと思っていた。「見てくれているファンの人がいる。最後までレースを全うする」と濃い顔で熱い言葉をくれた】。

 行数の関係で詳しい内容は掲載できなかったが、最終日の朝、関係者の一人からメッセージが来た。「実直な丸尾さんらしい、いい話ですね」と。実直。誠実で正直。律義なこと。分かってくれる人が私以外にもいたとうれしかった。

 20、30歳代の丸尾はマスコミ受けのいい選手だった。何でもこなせる好選手であり、ユーモアのセンスもある。「もう、やめたんや」とスタンスを変えたのは40歳以降。だから今の若手記者は丸尾は気難しい人だと思っているはずだ。だが、私は知っている。それはある意味、演技。まぁ、自分に近い方にシフトしたとも言えるが、いい人の役を降りたと私は感じた。成績不振で口数が少なくなることもあるが、それは愚痴を言いたくないからだ。最後まで走り抜く姿勢が多くを物語っている。

 「もう児島には来んから会うことないわ」と捨てぜりふを残して去って行ったが、私には「次はリベンジしたるわ」に脳内変換される。なんだかんだ言って、私の記事を誰よりも読んでいる。何ならデスクよりチェックが厳しい。一度、思い切り丸尾について書いてみたかった。30年来の付き合いだ。これでも書き足りない。私と同じで、SNSに距離を置く丸尾にはこの記事はバレないだろう。仲良しの林美憲(徳島)が伝えなければの話だが…。ひとまず、長編のスピンオフ~丸尾義孝編~はこれにて完結。次回にこうご期待。(児島ボート担当・野白由貴子)

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