【ボート】HOTEIのビートに乗せて山本浩輔が疾走
「ボート記者コラム・仕事 賭け事 独り言」
日本を代表するギタリスト・布袋寅泰のファンはアスリートの世界にも多いが、ボート界では長崎支部の山本浩輔(42)=84期・B1=が第一人者だろう。ピット内で着るウエアやファンからの横断幕は、布袋のギターに描かれていると同様の「Gデザイン」。ヘルメットは何と直筆サイン入りだ。
きっかけは中学3年生の時に初めて聞いた“HOTEI”サウンド。圧巻のギターテクニックから奏でられる8ビートのロックンロールに山本少年の心はわしづかみにされた。
もちろん興味は1988年に惜しまれつつ解散した伝説のロックバンド「BOOWY」時代までプレイバック。発売されたCDを購入し、ライブに足を運ぶ-。筋金入りのファン道を貫いている。
「布袋さんの声は魂に響きますね。歌詞も曲も気持ちを高めて盛り上げてくれるので、レース前には結構聞いています」と選手にとっては心強い存在。
中でもお気に入りの曲は「ロシアンルーレット」。イチかバチかの勝負に立ち向かう、白熱のレースの世界にもってこいのナンバーだ。
ファンとして最高の思い出は18年10月に行われたヨーロッパツアー。最終日のロンドン公演に、東京出発のファンツアーに応募して見事当選。伝統あるロンドンの劇場で存分にライブを堪能した。
「僕の斜め前の席に布袋さんの奥さんの今井美樹さんと娘さんがいてめっちゃキレイ。僕の娘と年齢は同じくらいだけどオーラが違いましたね」と布袋ファミリーとの遭遇もプレミアムな思い出のひとつとなっている。
ライブ翌日にはロンドン市内のカフェで「MEET&GREET」と呼ばれる交流会に参加した。その時手にしていたのは現在も使用しているヘルメットだ。
直筆のサインをもらえるチャンスがあるかどうか…。わずかな期待に胸を膨らませていると、主催者から「今回のツアーが大成功を収めたということで、記念におひとりさまに1枚写真とサインを1点お願いします」とサプライズの発表。布袋自身と直接触れ合える貴重な瞬間がやってきた。
山本の登録番号は4004番だが、ヘルメットに自然と布袋が書いた0の数字は憧れのBOØWYと同じデザイン。そして職業をボートレーサーと告げると「ケガをしないように頑張って!」とダイレクトに激励の言葉を受け取った。「ただでさえオーラがあるのに、すごかったですね」と歓喜の場面を振り返る。
「去年の3月くらいに塗装とかを終えてそのヘルメットを初下ろししました。その直後に走った4月のまるがめで優勝戦に乗れて、パワーをもらった感じでしたね」とレースでは絶大な効果をもたらした。
その威力をモノにして、選手としてはどうしても立ちたい舞台がある。99年5月のデビュー以来、いまだに足を踏み入れていない「優勝」のステージだ。
「それはもう本当にしたいけどなかなかですね。同じ長崎支部の中村辰也が今年正月、一緒のレースで初優勝して、そのあと2月にもすぐ優勝。やっぱり自信というかリズムでしょうね」と後輩の活躍に目を細める。
「最近はレース前に曲を聴く余裕がなくてルーティンが壊れかけている。布袋さんのニューアルバムが発売されるので、それを聞いてテンションを上げていかないと」と新たなHOTEIサウンドのエネルギーを胸に「サレンダー」の白旗を掲げる気持ちは一切ない。フライングだって、過ぎれば昨日。自分を貫けば最後に笑うのは山本だ。(関西ボート担当・保田叔久)