【児島SGコラム】準優は宣言通りのカド一撃 菊地孝平がグランドチャンピオンの頂上へ!

 「野白由貴子のMかSか?キング&クイーン」

 菊地孝平と茅原悠紀が山仲間であり、公私ともに親交があることはよく知られている。支部も年齢も違うが、茅原は菊地に心酔している。数年前、茅原はこう言っていた。「菊地さんのそばにいるだけで強くなれる気がする」と。私が思うに、それは言葉の力だ。菊地の頭の回転の速さは有名だが、言葉の魔術師だと感じる。簡潔でインパクトのある言葉をベストのタイミングで発し、その場の空気をガラリと変える。

 ピットで時々会うだけの私にも、「菊地名言集」や「菊地名場面」が数多くある。お気に入りは、ピット離れで失敗した直後、記者に囲まれた際のセリフ。「失敗は失敗として反省する。だが、人は守りに入って挑戦しなくなると成長しない。僕は成長し続けたい。だからチャレンジする」。失敗を認めて言い訳はしない。挑戦した結果の失敗はのちの研究材料となり、新たな戦法へ進化を遂げる。

 取材陣には紳士的な菊地だが、後輩がへらへらしているとビシッと厳しい言葉をぶち込む。それは16年12月の児島64周年。菊地が準優10Rの1号艇で優出を決めたあと、12R6号艇の新田雄史が3着で3連単5万円台の高配当が出た。12Rの6号艇は予選18位。ギリギリ予選をクリアしての準優3着だ。女性記者(私ではない)の取材に対し新田は、「いやぁ、準優6号艇で3着なら上出来っすよ」とちょっとニヤニヤしていた。すると、その場所から遠い位置にいたはずの菊地からドスの利いた声が飛んできた。「雄史~、3着で満足してんじゃねえぞぉ」。後ろ姿で表情は見えず、声も聞こえてはいない。それなのに菊地には新田が言いそうなことは丸わかりなのだ。新田はビクッとして苦笑していた。

 桐生順平が優勝した17年3月の児島クラシックの舞台裏ではこんな光景を見た。コロナ禍ではなく、選手との接触も自由だった当時だ。よく選手にサインをもらう関係者がいた。選手はファンのためのその手の依頼は断らない。サインおじさん(私が命名)が菊地に、ボートに取り付ける古いネームプレートにサインを頼んだ。

 私は「SGで?」と思いつつ黙って見ていた。すると菊地はプレートを見てこう言った。「残念ながらこのプレートにはサインできないんですよ」と。見れば「菊地」ではなく「菊池」のプレートだ。失礼にもほどがある。私なら「ごめんなさい」とすぐに回収する。だが、間を置いて菊地はこう続けた。「じゃあ、僕が地に直しましょうかね」とその場にしゃがみ込み、サインペンで池を地に書き換えた。見事なレタリング技術だ。私だけでも、菊地にまつわるエピソードには事欠かない。全体を見て、物事を判断する。頭の回転の速さには驚くばかりだ。

 山登りのルートは気象条件等によって毎回異なる。茅原によると、そのルートを決定するのは菊地だとか。行き足から伸び抜群の36号機を菊地が引き当てたとき、最短ルートで頂点を極めると思ったが、今回は予選でルートを見誤った感もある。

 だが4日目、確実に頂上を見据えた菊地の目は輝きを増していた。「いい仕事しまっせ」の宣言通り、見事に準優でまくり切ったのだから喜びもひとしおだ。SGV6へ準備は整った。茅原の思いをリュックに詰めて、菊地がさっそうとグラチャンの頂上を目指す。

 12R 足もSも完璧な菊地の自在速攻戦。②①、②④流し。(児島ボート担当)

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