【児島SGコラム】地元SGで無念の予選落ち グッドルーザー・茅原悠紀は真のヒーロー

 「野白由貴子のMかSか?キング&クイーン」

 ボートレース界のトップに君臨するSG常連選手が集結するグランドチャンピオン。そもそも、SGを走っていなければ出場権は勝ち取れない。今大会、地元岡山支部で出場権を勝ち取ったのは茅原悠紀ただ一人だった。昨年後半はF2となり、苦しい状況下でグランプリ出場も決めた。

 今大会を見据えて戦ったゴールデンウイークの鷲羽杯(オール岡山)は圧倒的な強さを見せつけ優勝戦1号艇。優勝戦もイン速攻で先頭を走っていたが、2周2Mで振り込み6着に後退。天国から地獄を味わった。レース後は皆でリプレイを見て検証。魔の2周2Mを見た瞬間、茅原は「いかん、これはいかん」と頭を抱えてその場に座り込んだ。

 実はその前日、茅原は準優で逃げて1分45秒3という破格の好タイムを出していた。優勝は茅原で間違いなし。見どころはタイムの更新。私はそう思い、インタビューでそれに触れた。茅原は「いやいや、満潮なんで…」と苦笑していたが、全力のパフォーマンスが彼の真骨頂。それがあだになったか、優勝戦はまさかの6着となってしまった。

 レース後、私は声を掛けるべきか、そっとしておくべきか迷い、ピットを行ったり来たり。けしかけた私には敗者の弁を伝える義務がある。意を決して声を掛けた。私の口から飛び出したのは「ごめん、変なこと背負わせて」という言葉。茅原は「いやいや、それは違います」とキッパリ。タイムを狙って失敗したわけではないこと。調整が合っていないと1周1Mで気づき、慎重なターンを心掛けた結果であったことを冷静に説明した上、ファンの方々に申し訳なかったと話してくれた。

 私はその姿に、ドラマのセリフで聞いたばかりの『グッドルーザー』という言葉が重なった。今やロス現象が起き、最終回後も話題沸騰のドラマ『大豆田とわ子と3人の元夫』の中で出てきた言葉だ。勝った者だけがすごいのではない。敗れても言い訳をせず、自己と向き合う。それができる者はグッドルーザーとして新たな挑戦ができる。あの日の茅原も、残念ながら予選落ちに終わった今大会の茅原も立派な態度だった。

 茅原のファン層は主に子どもたち。グランプリVで購入したランボルギーニで話題となり、近所の小学生が「見せてくださ~い」と自宅を訪ねてきたという。茅原は一人一人を乗せて、近所をドライブ。当時小学校4年生だった少年は、茅原の背中を追ってボートレーサーを目指しているらしい。そのことがうれしいと、開催直前のテレビ出演時に茅原は語っていた。勝ってかっこいい姿だけでなく、負けっぷりの良さ、潔さも勝負の世界では大事。茅原は地元の子どもたちにとってヒーローだ。これからも夢とロマンを与える存在であり続けるだろう。

 8R 茅原が華麗に舞う。イン速攻で①②、①⑥流し。

(児島ボート担当)

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