グラスワンダーを育てた男 “名門・尾形3代目”尾形充弘の軌跡【1】

 日本の競馬界に大きな足跡を残した尾形藤吉を祖父に持つ尾形充弘元調教師(70)が、2月いっぱいで定年を迎え35年以上におよぶ調教師生活に別れを告げた。祖父・藤吉、父・盛次(元調教師)の流れを引き継ぐ“尾形3代目”として競馬の盛り上げに貢献し、日本調教師会の会長を務めるなど要職を歴任。3月からはデイリースポーツ『うま屋』の“スーパーバイザー”に就任する大物ホースマンの軌跡に迫った。

 2月25日、中山競馬8R。ニシノストーリーを出走させた尾形充弘は、管理馬が無事にゴール板を通過すると安堵(あんど)の表情を浮かべた。調教師としてのラストデーとなったこの日、尾形は中山で2頭、阪神で2頭を出走させたが、残念ながら勝ち星を挙げることはできなかった。

 それでも「馬もケガなく頑張ってくれた。もう少し感傷的になるかなと思ったけど、気持ちはすがすがしいですよ」と話した。負傷で休養中の吉田豊も駆け付けるなど、多くの関係者に見送られ、「うれしいね。中山競馬場では大きいレースも勝たせてもらったし、サークル全体に感謝しています」と満足そうに振り返った。

 前日の24日には中山2Rでシャイニーロケットが勝ち、史上35人目となるJRA通算800勝を達成。ラストウイークで区切りのメモリアル勝利を決めた。レース直後から関係者の祝福攻めにあい、「王手をかけてから、なかなか届かなかったけどホッとしました。これで胸のつかえが取れました」と7馬身差の快勝劇に穏やかな笑みを浮かべた。

 有馬記念連覇(98、99年)などG1・4勝を挙げたグラスワンダーをはじめ、数々の名馬を育て上げてきた尾形だが、大学卒業後は情報産業系の一般企業に就職している。

 「馬の仕事はやるつもりはなかった」

 そんな尾形が祖父・尾形藤吉のひと言で競馬の世界に飛び込むことになる。26歳のときだった。(文中敬称略)

 ◆尾形充弘(おがた・みつひろ) 1947(昭和22)年9月27日生まれ、大阪府出身。75年に尾形藤吉厩舎で調教助手となり、81年からは尾形盛次厩舎に所属。82年3月に調教師免許を取得し、同年10月に開業。18年2月に定年により引退。JRA通算800勝(うち重賞23勝)、G1はグラスワンダーでの98、99年有馬記念連覇など4勝。10~12年には日本調教師会の会長を務めた。

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