16時間断食ダイエットを半年続けたのに痩せない→やり方に問題あり!?【糖尿病専門医が解説】

Aさんは、16時間断食ダイエットを始めてから半年が経つ。SNSの情報によると、朝食を抜いて16時間の空腹を作ることで、古くなった細胞が分解・再利用される「オートファジー」の仕組みが活性化し、若返りや脂肪燃焼効果が期待できるそうだ。

Aさんは情報通りにおこなっていたが、半年経っても体重はまったく減る様子がみられない。それどころか以前より疲れやすくなった気がして、Aさんはかかりつけ医に相談してみることにした。

そこで判明したのが、Aさんの驚きの食生活だ。じつはAさんは、16時間断食したごほうびとしていつも山盛りの白米を食べていたのだ。そして夕飯も「16時間食べないようにしないと」との思いから、ラーメンやパスタを大盛りにして食べているという。

それを聞いた医師は「この方法じゃ痩せない」と忠告することになった。ではAさんが断食ダイエットで痩せられなかった原因は食生活だけだったのだろうか。そもそも16時間断食は本当に効果があるのだろうか。新宿にある藤保クリニックの院長で、糖尿病専門医でもある飯島康弘さんに話を聞いた。

-16時間断食をしているのに、まったく痩せない人がいるのはなぜでしょうか?

まず大前提として、16時間断食は「やれば誰でも痩せる魔法のダイエット」ではありません。痩せる方もいますが、その主な理由は、断食という時間の区切りそのものの力というより、結果的に1日の食べる量が減ったから、という見方が現時点では有力です。Aさんが痩せない理由は、まさにそこが抜け落ちているからです。外来でも、痩せない方には共通したパターンがあります。

1つ目は、食べていい時間の「ごほうび食い」です。Aさんと同じように「16時間我慢したのだから」と、白米を山盛りにしたり、夕食でラーメンやパスタを大盛りにしたりする。これでは、せっかく食べない時間をつくっても、1日の総摂取エネルギーは減りません。むしろ増えていることすらあります。

2つ目は、たんぱく質不足と筋肉量低下のリスクです。朝食を抜くと、たんぱく質をとる機会も減りがちです。食事内容によっては筋肉量が落ちやすくなり、疲れやすさや、長期的には痩せにくさにつながることがあります。Aさんが「以前より疲れやすくなった」と感じているなら、単に体重だけでなく、食事の中身や筋肉量にも目を向ける必要があります。

3つ目は、睡眠の乱れです。食事を夜遅い時間に寄せすぎると、寝つきや睡眠の質が悪くなることがあります。睡眠不足は食欲を乱しやすく、血糖コントロールにも悪影響を及ぼします。

つまり、Aさんが痩せないのは、意志が弱いからではありません。やり方の中に、痩せない仕組みが入り込んでいるだけなのです。

-そもそも16時間断食をすると、オートファジーが活性化されるというのは本当ですか?

オートファジー自体は、本物の、とても重要な仕組みです。細胞が自分の中の古くなった部品を分解し、掃除して再利用する働きで、この研究はノーベル賞にもつながりました。そこに疑いの余地はありません。

問題は、「16時間断食でオートファジーが活性化し、若返る・痩せる」という話の多くが、動物実験や基礎研究の結果を、人間のダイエット効果に大きく広げて語っている点です。

マウスなどの実験で観察された現象が、そのまま人間の体でも同じように起こり、しかも体重減少や若返りにつながる、とまでは現時点でははっきり証明されていません。人間で、何時間の絶食で、どの組織に、どの程度オートファジーが起こるのか。それが体重や健康寿命にどう結びつくのか。ここはまだ研究の途上です。

そのため、「オートファジーのために、つらい断食を頑張らなければ」と気負う必要は、今のところありません。オートファジーという言葉の響きやイメージが先行してしまっている、というのが実情だと考えています。

-16時間断食が向いている人と、避けたほうがよい人の特徴を教えてください

16時間断食は、それ自体が悪い方法というわけではありません。合う人が、無理なく続けられるなら、体重管理の選択肢の1つにはなります。

たとえばもともと朝食を食べなくても体調が崩れにくい人、生活リズムが安定していて食べる時間を決めやすい人、食べていい時間帯に食べ過ぎず、またたんぱく質・野菜・主食をバランスよくとれる人や、「時間を決める」ほうが間食を減らしやすい人には向いているといえるでしょう。

一方で避けたほうがよい、あるいは特に注意が必要な人もいます。もっとも注意が必要なのは、糖尿病で薬を使っている人です。とくにインスリン、SU薬、グリニド薬などを使っている場合、食べない時間が長く続くと低血糖の危険があります。また、SGLT2阻害薬を使っている方では、脱水や体調不良、極端な糖質制限が重なると、ケトアシドーシスにも注意が必要です。

ほかにも成長期のお子さん、妊娠中・授乳中の方、高齢の方でフレイルやサルコペニアが心配な方、過去に摂食障害があった方も避けたほうがよいでしょう。

-もし16時間断食ダイエットをおこなう場合、気をつけるべきポイントはありますか?

やってみたいという方は、次の5つを意識してみてください。1つ目は、食べていい時間に「ごほうび食い」をしないこと。断食の最大の落とし穴がここです。空腹の反動で食べ過ぎれば、1日の総摂取エネルギーは減らず、痩せません。「我慢したぶん食べていい」ではなく、「いつも通りをふつうに食べる」が基本です。

2つ目は、たんぱく質をしっかりとること。筋肉を守るために、食べていい時間帯に、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などを意識して取り入れてください。体重だけを見ていると、脂肪ではなく筋肉が落ちていることに気づきにくいので注意が必要です。

3つ目は、主食や脂質をとりすぎないこと。白米やラーメン、パスタを大盛りにしては本末転倒です。野菜やおかずを先に食べ、主食は適量にとどめると、血糖の急上昇も防ぎやすくなります。

4つ目は、水分と体調変化に気を配ること。食べない時間が長くなると、食事から入る水分も減りがちです。めまい、冷や汗、強いだるさ、動悸、ふらつきがあれば、無理に続けないでください。糖尿病治療薬を使っている方は、血糖測定や薬の調整が必要になることがあります。

5つ目は、睡眠を大切にすること。食事を夜遅くに寄せすぎないようにし、しっかり眠ることで、食欲のホルモンも血糖も安定しやすくなります。

そして何より、つらいと感じたら無理に続けないことです。ダイエット法に「絶対の正解」はありません。3食きちんと食べたほうが痩せる人もいます。流行に飛びつくより、自分の体と生活に合う方法を、無理なく続けることがいちばんの近道です。

◆飯島康弘(いいじま・やすひろ) 医師/糖尿病専門医・指導医、内分泌代謝科専門医、認定内科医

藤保クリニック(新宿)院長。東京医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 客員研究員。肥満症専門外来も担当。オンラインで「新宿・血糖オタクの学校(メディノト)」を運営し、糖尿病の最新知見を暮らしの行動に翻訳する発信を続けている。

(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)

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