泉房穂氏が中島みゆきの歌に込めた思い「自分はどうなってもいい」恩師の遺志継ぎ、国民の手に政治を戻す

 兵庫県明石市の市長を12年間務めた泉房穂氏(60)が4月に任期を終え、この半年間はフリーな立場で活躍している。現政権への不信が高まる中、“国政の救世主”的な存在として期待する声もあり、今後の動向が注目されている。その泉氏がこのほど都内でトークイベントを行い、熱い思いを吐露した。

 泉氏は市長在任時に子育て政策の推進などで全国的に注目され、今春の“卒業”後も地元明石を拠点に、全国各地での講演や首長選応援、SNSでの発信、書籍の出版や雑誌での対談、テレビやYouTube番組出演など多忙な日々を過ごしている。その生き様を描いた漫画や映画化の動きもある。

 今月2日、泉氏は東京・新宿のトークライブハウス「ロフトプラスワン」で自著「社会の変え方 日本の政治をあきらめていたすべての人へ」(ライツ社)出版記念と、志半ばで凶刃に倒れた元衆議院議員・石井紘基氏の没後21年を追悼するイベントを開催した(配信のアーカイブは16日まで視聴可能)。

 石井氏は政治家としての原点だ。泉氏が25歳だった1988年に出版された石井氏の著書「つながればパワー 政治改革への私の直言」(創樹社)に感動し、手紙で思いを伝えたことが出会いのきっかけ。テレビ局の職を辞して秘書となり、さらに石井氏のすすめで司法試験を受けて弁護士に。2002年に石井氏が殺害され、翌年、遺志を継いで衆議院議員となった。

 「石井さんとの出会いがなければ弁護士になることはなかった。『君は血気盛んで、いずれは政治家になるだろうが、世の中は矛盾に満ちあふれている。弁護士になって困っている人のために尽くせ。それをやった上でないと、いい政治家にはなれない』と言われました。来年、私は石井さんの享年である61歳になります。その年には新たな動きをしていきたいと思っています」

 恩師が命を懸けて追ったテーマは「現在進行形」で今につながっているという。

 「石井さんが追及したのは、国民が働いて負担したお金がどこに消えているのかという問題。石井さんはその『闇』をクリアにしようと動いて命を失った。その状況は今も変わっていない。私が子どもの頃には2割だった日本の国民負担率は5割にも膨らんでいるのに、なぜ金がないのか。その5割の金はどう使われているのか?金は余っているはずなのに、有効的に使われていない」

 「官僚国家の日本では税金の無駄遣いを(あえて)“競争”していている状況があると、明石市長だった12年間で実感した。税金を無駄遣いすればするほど、そこに差額が生まれ、その金が流れて政治が動く。国民の負担を減らし、国民の手元にお金を残す政治の転換がキーワードであって、もはや与野党対決などでなく、国民の負担を増やす政治か、国民を助ける政治かが争点になる」

 「在野の人」となった今、何を思う。

 「私、ぶっちゃけ、幸せです。貧乏な漁師の小せがれが10歳の時、(障害のある)弟が困っている時に『なんで助けてくれへんねん』と悔しい思いをして、この街を優しい街にしたいと思って50年。明石は市民が誇りを持てる街になった。もう私がいなくても大丈夫。自分の人生でやるべきことはやり遂げた。あとは余力です」

 泉氏は会場入り前にジャーナリスト・田原総一朗氏と書籍化される予定の対談を行っていた。田原氏はその場で、かつてテレビ朝日系「朝まで生テレビ!」のスタッフだった縁もある泉氏に「(政権交代の)シナリオを書け」と注文したという。注目される「国政復帰」について、泉氏は明言を避けたが、発言の行間からその可能性を示唆する思いが汲み取れた。

 「昨年、140通の殺害予告がありました。いついつまでに市長を辞めなければ『殺す』と。その時、『殺されてもいい』と思った。『しゃあない。覚悟を決めて政治をやってきたから、本望や』と。それで、朝起きたら感謝するんですよ。『まだ、生きてるわ』と。明石市長を終えた今、まだ命がある。国の政治があまりにもひどいから、60歳からのセカンドステージは国民のために自分の役割を果たしたい。総理になりたいとか、そんなセコいことは思わないです。自分のことなんかどうでもいい」

 「若者が給料を気にせずにプロポーズして結婚できるか。2人目、3人目の子どもを生んでも、お金を気にせず国の支援で大学まで行かせられるか。ポイントは、そこなんですよ。そのために自分をどう使うか。『余生』というのかな。人生、一周終わって、まだ命ある者としてご奉公させてもらって、死んだらゆっくり寝たいと思ってます」

 政治家のあるべき姿を語った。

 「自分を消して、市民の苦しみを我がこととして受け止めること。市民が撃たれそうになったら、前に出て『俺を撃て』と言えること。私は中島みゆきさんの『空と君のあいだに』という歌が大好きなんですけど、特に『君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる』というところ。市民が喜ぶんだったら、自分なんかどうなってもいいんです」

 3時間半を超えたイベント終盤、泉氏は感極まって声を震わせ、涙を流した。「ごめん、泣いちゃった」。最後に照れ笑いした。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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