忍たまファン殺到も地元民が知らない尼崎の“聖地巡礼”事情 町おこし狙う「尾浜うどんのおばちゃん」

今年放送30周年を迎える長寿アニメ『忍たま乱太郎』(NHK)。30代の筆者にとっても小さい頃何度となく観て親しみのあるアニメだが、そんな『忍たま乱太郎』の聖地となっている場所があることをご存じだろうか。兵庫県尼崎市だ。

『忍たま乱太郎』の原作漫画『落第忍者乱太郎』の著者、尼子騒兵衛さんは尼崎出身。地元を愛するがゆえの遊び心からか、キャラクター名の多くは尼崎の地名が由来している。忍たまファンには好きなキャラクターの由来になった土地を訪れるため、尼崎に”聖地巡礼”に来る人が多いのだ。

そんな忍たま需要を町おこしに生かそうと奮闘する人がいる。尼崎で生まれ育ち、現在はうどん店『尾浜うどん 風車の郷』を経営する弥七さん(58歳)だ。弥七さんは登場人物の尾浜勘右衛門(おはま・かんえもん)が尼崎市尾浜町に由来していること、くせ毛で『うどん髪』と呼ばれることからインスピレーションを得て現在主力メニューとなっている『尾浜うどん』を作り忍たまファンの間で話題に。それまで地域住民が9割だった客層が、ここ数年は9割が忍たまファンになったそうだ。

弥七さんが忍たまで町おこしができると思ったきっかけは忍たまファンたちの言葉。「全国から訪れる忍クラさん(忍たまクラスターの略・忍たまファン)が口を揃えて、尼崎の人が忍たまのことを知らなくて驚いたと言うんです。遠路はるばる来てくれているのに、供給が無いなんて訳分からへんと思いました」

『尾浜うどん 風車の郷』は10人ほどしか入らない小さな店で、尼崎で忍たまイベントがある時には200人以上入店を断ったことがあるという。せっかく遠方から尼崎を訪れたのに尾浜うどん以外に忍たまファンを受け入れてくれる場所がなく、泣く泣くチェーン店で食事を済ませたという声を何度も聞いたそうだ。

「忍たまがキッカケで尼崎に来てくれた人をガッカリさせて帰すなんて関西の商人魂が許さない。目一杯楽しんで帰ってほしい」という思いから弥七さんは今年4月から市内の飲食店や施設に呼びかけ『#尼崎スタンプラリー』を企画(8月31日まで)。尼崎を訪れた忍たまファンが尼崎の人や店と触れ合える仕組みを作ろうと模索している。

スタンプラリー企画は早くも効果が現れているようだ。加盟店の一つで「次屋」バス停前にある「喫茶Cute」のママ、由美さんは語る。「作者が尼崎出身とは知っていましたが、尼崎にちなんだ名前が多いことは弥七さんに聞いて初めて知りました。次屋も『次屋三之助』というキャラクターの名前の由来になってるんですね。疑い半分でスタンプラリーに協力したんですが、すぐにファンの方が来ましたね。ほぼ毎日1人は来るので驚いています」と語る。

今回、筆者が取材した限りでも、尼崎に長年住んでいるにも関わらず忍たまを意識しないまま過ごしている人が多かった。「作者が尼崎だと言うことはどこかしらで聞いたことはあるけど、ファンが尼崎に来てるのはアンタ(筆者)に聞いて初めて知ったわ」(30代女性、西田さん)

8年来の忍たまファン、マミーさんは語る。「支店や暖簾分けという訳でもないのに複数のお店と連携できるのは、長年尼崎で人脈を築き、数年に渡って多くのファンの声を熱心に聴いてきた弥七さんだからこそ。いろんな人や食べ物、史跡と出会うことができれば忍たまファンはきっと尼崎を好きになります。尼崎の人にもっと忍たまを認知してほしいです」

尼崎での認知度アップは弥七さんのもっとも願う所。訪れているファンを積極的に受け入れることで個人店が盛り上がれば街全体が活気付く。巡り巡って全ての人がウィン・ウィンとなることだろう。

「尼崎ってこんなにいい街だったんだと思ってもらえると女将冥利、アマ冥利につきます。これからも様々な事に挑戦していきたい」取材中も、次の企画を練りながらうどん出汁を作っていた弥七さん。“尾浜うどんのおばちゃん”こと、弥七さんの挑戦はまだまだ続く。

『尾浜うどん 風車の郷』

所在地:尼崎市尾浜町3丁目24-15

公式ホームページ:ohamaudon.com

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