「クレしん」最新作に登場する「クレイジーキャッツ」のネタとは?今も生きる伝説グループの魅力

 日本の芸能史に大きな足跡を残した「クレイジーキャッツ」。東宝でシリーズ化された映画の第1作「ニッポン無責任時代」公開から今年で60年となる。NHK文化センター青山教室(東京)で今月15日から6月にかけて開催される「クレイジーキャッツの音楽史」講座(全4回)の講師を務める娯楽映画研究家の佐藤利明氏が、よろず~ニュースの取材に対し、その魅力や7人のメンバーについて解説した。(文中敬称略)

 佐藤氏は「ジャズドラマーのハナ肇をリーダーに、ギターの植木等、トロンボーンの谷啓、ベースの犬塚弘、サックスの安田伸、ピアノの石橋エータローと桜井センリという粋なジャズマンが大真面目にコントや笑いに取り組んだ空前絶後のコミック・グループです」と説明。さらに「ザ・ピーナッツとクレイジーキャッツを中心とした日本テレビ系『シャボン玉ホリデー』(1961年放送開始)で多くの人は『スーダラ節』『ハイそれまでョ』などの『クレイジーソング』と出会いました。団塊世代の多くのクリエイターは、その笑いに魅せられて『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)や『今夜は最高!』(日本テレビ系)などを生み出した。現在のバラエティー番組の原型となったのです」と付け加えた。

 佐藤氏は7人のメンバーを紹介した(カッコ内は記者メモ)。

 〈植木等〉「デビュー曲『スーダラ節』(61年)の大ヒットと、『ニッポン無責任時代』(62年)で演じた『無責任男』は日本の芸能史においては、戦前のエノケンこと榎本健一に匹敵するインパクトがありました。方向性は違いますが、石原裕次郎、長嶋茂雄らと並ぶ、戦後を象徴するスターです」(※「スーダラ節」は星野源らもカバー。植木による大滝詠一の名曲「FUN×4」の唯一無二のカバーも必聴)

 〈ハナ肇〉「一言で言うと『庶民的な親分』タイプ。猪突猛進なキャラクターを生かしたのが、山田洋次監督。『馬鹿シリーズ』で、後の『寅さん』に通じる『時代に取り残された男』の悲哀をパワフルに演じた。69年末には『ゲバゲバ90分』(日本テレビ系)の『アッと驚く為五郎』が一世を風びした」(※フジテレビ系「新春かくし芸大会」で銅像にふんした姿は正月の風物詩。ドリフメンバーの名付け親で、高木ブーは記者の取材に「お前はブーでいいんだよ…って」と証言)

 〈谷啓〉「子供たちに絶大な人気。『ガチョーン』『ビローン』『ムヒョー』など意味不明の擬音が流行語に。ハリウッド映画のコメディアン、ダニー・ケイを敬愛して芸名を付け、譜面にギャグを書いて音楽コントのレベルアップに貢献」(※東宝の主演映画「奇々怪々 俺は誰だ?!」など不条理な世界でも異彩を放った“第3の男”。スチャダラパーとのコラボなど平成のサブカル界でも音楽センスも発揮。映画「釣りバカ日誌」シリーズの佐々木次長でもおなじみ)

 〈桜井センリ〉「石橋エータローの病気休養で急きょメンバーに。『女形』を楽しそうに演じ、洗面器で頭を叩かれてもニコニコ。『センリばあさん』のキャラクターで出演した『キンチョール』CMが大ヒット。山田洋次監督は脇役として起用」(※ロンドン生まれ。早大政経学部中退。石橋復帰後のピアノ連弾が注目。CM発の流行語は「ルーチョンキ」)

 〈安田伸〉「映画『嵐を呼ぶ男』(57年)に出演。『シャボン玉ホリデー』では、なべおさみとの『キントト映画』コントで、なべの暴君的映画監督に『ヤスダ~』と怒鳴られながらも、忠実に仕事に取り組む助監督役で大受け。晩年は大林宣彦監督作品の常連となり、森繁久彌の『屋根の上のバイオリン弾き』にも出演」(※東京芸大出身。愛妻家で「ミヨコー!」というギャグも)

 〈石橋エータロー〉「昭和20年代、伝説のジャズピアニストとして渡米計画もあったほど。父は『笛吹童子』の作曲家・福田蘭堂。クレイジー参加直後から『女形』で笑いを取っていた。70年に引退して料理研究家になったが、しばしば舞台やテレビで『元クレイジー』として共演」(※父が開業し、夫人が切り盛りした渋谷の小料理店「三魚洞」は休業を経て現在も営業)

 〈犬塚弘〉「戦後まもなく、IBMに入社するも『アメリカ人上司と大ゲンカ』して会社を辞めてジャズマンに。ハナから誘われて前身バンドに参加。結成時からのメンバーにして、今も健在。俳優としても山田洋次監督作品の常連で、井上ひさしのこまつ座の舞台にも参加」(※今年3月で93歳に。12年の桜井死去によって唯一の存命メンバーとなり「最後のクレイジー」と称される)

 継承されるネタの例として、佐藤氏は「コントの『洗面器』です。進駐軍のキャンプ周りの頃に、笑いのオチとして『何か音が出るもの』と谷が考案。とにかく頭を叩けば『オチになる』と。それが『金盥(だらい)』までエスカレート。『クレヨンしんちゃん』の最新作映画では、この『金盤』ギャグが随所に出てくる」と指摘。クレイジーは今も生きている。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

サブカル系最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス