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欠損した乳房や手指を美しく補うエピテーゼ「自分のコンプレックスをおしゃれに」日本での認知広げたい

コロナ渦が猛威をふるっていた時期、病床が足りず緊急でなければ受診や手術を後回しにされる患者がいたという。乳がん患者もその一つ。受診が遅れたり、受診できてもすぐ手術が出来ず胸を失くされてしまったという人の話を聞いた。その際「エピテーゼ」というものを初めて知った。エピテーゼとは小さな身体の欠損の外観を補うために装着するオーダーメイドの装身具だ。機能はしないが審美性にすぐれる。乳房エピテーゼは"手術の要らない乳房再建"ともいわれ、装着したまま装着したまま入浴もできるらしい。指の場合だと外出先で手洗いもでき、衛生面も万全だ。

エピテーゼを施す技術者(エピテニスト)で、その普及活動にも携わるエピテみやび代表の田村雅美さんにお話を聞いた。

野中:従来の義指などとエピテーゼにはどのような違いがあるのでしょうか?

田村:義指は労災保険を使用し、病院で制作します。素材は国が決めたもので硬く、審美を求めたものではありません。

野中:私がエピテーゼを知ったの義乳からですが、田村さんは他にどのようなエピテーゼを作られていますか?

田村さん:事故や病気により指を切断された方、生まれつきお指が短い短指症(たんししょう)の方、乳がんでお胸をなくされた方等に製作しています。「見た目」と「こころ」を回復する人工ボディをオーダーメイドでお創りし、サロンにてご提供しております。

また、性同一障害FtM、生まれた性別は女性で性自認が男性の方にも男性器を製作しています。

野中:なにか装着しているとは気付かない作品ばかりですね。

田村:弊社では作品や商品としてではなくお客様のボディーをお創りさせていただいてます。デリケートなお悩みですから1日2名様限定のプライベートサロンのワントップサービスです。お客様と数回にわたるヒアリングをし、不安に思われる事やご利用環境をお聞きします。指でしたら曲げる角度、柔らかさ、色、ほくろ、血管、ネイルの有無など細かに再現していきます。

野中:ネイルの有無まで反映していただけるんですね。

田村さん:指先がキラキラしていたら自分をご機嫌にしてあげられるじゃないですか。「こうしたらお喜びになるかも」という女性目線でエピテーゼの試着からネイルチップや指輪の紹介、保管箱をジュエリーケースにしたり。足の指でしたらサンダルの試着などをして自分に合うイメージを掴んでいただけるようにしています。

野中:あらかじめイメージや着用感を知れるのはとても嬉しいですね。

田村:私がお創りするのはエピテーゼという人工物ですが、お客様の新たな人生の門出やコンプレックスを軽減するための美容・ファッションとしてご提供しています。

野中:どのような経緯でエピテーゼを知る方が多いでしょうか?

田村:以前は新聞やテレビ等のメディアを見て。最近はInstagramなどのSNSを見てのお問い合わせが多くなりました。

野中:田村さんがエピテーゼを作り、普及活動をされるようになった経緯をお聞かせください。

田村:ターニングポイントは2つありました。まずは歯科技工士時代に技術向上のため向かった米国で初めてエピテーゼを見たことです。社員研修で訪れた大学病院で、顔の左半分(目、頬、耳)を失くした元兵士であろう若い男性を見ました。精巧なエピテーゼのマスクを作っていて、出来あがった時、家族と泣きながら抱き合って幸せを噛み締めていたのが印象に残りました。それまでの私は病院で手術を受ければたいていのことは元通りになると思い込んでいたのですが、そうではないことを知りました。

次は、帰国しエピテーゼのスクールに通っていた頃の出来事です。少しエピテーゼを作れるようになり作品を周囲の人たちに見せていると、友人が複雑な表情を浮かべ「ちょっと前に乳がんで胸を失くしたところなの」と言いました。乳がんで胸を切除した本人もエピテーゼの存在を知らなかったのです。病院の先生からも教えてもらえなかったと聞き、衝撃を感じました。だから病院と提携してサービスを提供するというより、お客様が直接来られるプライベートサロンでゆっくり施術させていただきたいなと思い、今の形になりました。

「もっと早く知っていたら人生が違っていたのかもしれない。苦しみが少なかったかもしれない。あなた、作れるなら私のように知らない人に向けてやりなさいよ」一念発起してエピテーゼの事業を始めようと思ったのは、友人のこの言葉がきっかけです。

野中:エピテーゼについてインターネットで調べても情報はまだまだ少ない状態です。田村さんのご活動は非常に重要ですね。

田村:日本ではエピテーゼはまだまだ認識がなく理解されてませんが、身体の欠損でコンプレックスを抱えている方は数万人に上ります。エピテーゼをメイクやファッションのように、自分のコンプレックスをおしゃれに魅せられる選択肢として広めていきたいです。

◇ ◇

「エピテーゼを作るエピテニスト育成にも力を入れ、今後は全国から世界へとフランチャイズ展開して各地に根付いたサロンへと成長していきたいです」と田村さん。エピテーゼの持つ明るい可能性に期待したい。

(よろず~ニュース特約・野中 比喩)

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