鍋持参でコンビニおでん 脱プラ背景に店と客が“ウィンウィン”に 汁物を鍋で持ち歩く心構えも伝授

 大手コンビニエンスストアのローソンは、14日から東京都、埼玉県、千葉県の約30店舗でフタのついた鍋などの容器を持参しておでんを購入すると、5個ごとに39円割り引きになる「おでん鍋割セール」を始めた。容器のプラスチック素材削減が目的で、10月から全国展開を予定。環境破壊につながるプラスチックごみを削減する「脱プラ」の動きが「コンビニおでん」にまで影響を及ぼしている。流通アナリストの渡辺広明氏はよろず~ニュースの取材に対し、その背景や意義を解説した。

 鍋を抱えてコンビニに立ち寄り、おでんを入れて持ち帰る…。実は以前からこうした取り組みはあったという。

 渡辺氏は「その原型は、昔からコンビニおでんがよく売れている店舗において、家庭の夕食需要として、大きな鍋を持って買いに来る顧客からきている。20年前、セブン-イレブンの函館エリアの店では、この販売で1日2000個以上を売る店があったと業界関係者から聞いたことがある」と指摘。その上で、同氏は「今回はプラスチックごみ削減を第一の目的として、顧客はおでんを安く買えるとともに、店舗側も容器・フタなどの消耗品のコスト負担がなくなり、顧客と店舗ともにメリットがあるウィンウィンの施策となっている」と解説した。

 コロナ禍でコンビニ業界も転機を迎える中、レジ袋に続き、無料提供されていたプラスチック製品もポイント還元、有料化、木製素材変更の対象になることが検討されている。環境省と経済産業省はスプーン、フォーク、ナイフ、ストロー、宿泊施設のくしやカミソリ、歯ブラシ、クリーニング店のハンガーなど12種類について対策を義務づける方針を今年8月に打ち出し、6月に成立した「プラスチック資源循環促進法」が施行される来年4月の導入を掲げる。

 今回の「おでん鍋」もその流れに位置付けられそうだ。さらに、コロナ禍で広がる家飲み需要も後押しする。渡辺氏は「おでんはおつまみ需要として秋冬シーズンのキラーアイテムとなる。気温が18度以下になるとおでんが売れるのでまさに、これからハイシーズン突入」と付け加えた。

 渡辺氏は「コンビニは社会の変化に適合して業績を伸ばしてきたが、コロナ禍で売り上げが厳しくなった大きな曲がり角で、人口減やSDGs(持続可能な開発目標)に寄り添ったコンビニに生まれ変わるターニングポイントの時期になっている。店舗数と来店客が多いコンビニで、今回のおでん施策のように小さな取り組みが積み重なれば、レジ袋の有料化のように日本人のSDGsの行動変容を後押しするきっかけとなる。セルフレジやセミセルフレジの導入などもあり、コンビニの買い物スタイルがここ数年で大きく変化していきそうだ」と総括した。

 それでも、気になることがあった。「おでん鍋」をどう持ち帰るかだ。従来のプラスチック容器であれば、カッチリと閉まるフタがあり、さらにテープで固定されている。そのままレジ袋に入れて持ち帰るのに問題はなかった。ただ、鍋となると、フタをしたとしても持ち運ぶ道中で少しでも傾くと汁がこぼれる懸念がある。そこで、鍋を手に実験してみようと、都内の自宅周辺にあるローソンを3軒回ったが、いずれも、まだ販売していなかった。

 ということで、別の店でおでんパックを買い、中身を鍋に移して外を歩いてみた。エコバッグより、鍋が容易に入る大きめのレジ袋に入れて歩いたが、鍋が傾いてきて心もとない。結局、袋から出し、洗面器を小脇に抱えた銭湯の行き帰りのごとく、鍋を抱えて家路を急いだ。何かにつまずいたらアウト。夜道ですれ違う人の視線を感じながら、鍋の角度と足元に全集中して歩いた。

 汁物を鍋に入れて持ち歩く秘伝を、神戸市のラーメン店主で格闘家の坪井将誉さんに聞いた。コロナ禍でテイクアウトのみとなった昨春、いち早く「鍋ラーメン」を導入した人だ。坪井さんは「皆様、フタを閉じて持ち帰っていただいています」とした上で、「持ち帰りの注意点は、やはり『気持ち』です」とアドバイス。こぼさないぞ!という気持ち、集中力を切らさないということか。

 実際に「鍋歩き」したことで、記者は実感した。店舗は「スープが冷めない距離」がいい。冷めても温め直せるが、緊張感を持って歩く時間が長いと疲れる。道中は短いに越したことはない。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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