打ち切り作品が電子版移籍で大逆転!『十字架のろくにん』作者「一度はダメかと思った」

 紙媒体の連載を打ち切られた作品が、移籍先の電子媒体で急上昇を果たす-コロナ禍ならではの珍しい現象が起こった。講談社は18日までに、『十字架のろくにん』を単行本3巻にして全巻に重版をかけることを発表。作者の中武士竜氏に心境を聞いた。

 息を吹き返した中武氏は「一度はダメかと思った連載ですが、本当に運良く延命措置をしていただき、皆様のおかげで生きながらえることが出来ております。ありがとうございます。その上重版という言葉を聞ける日が来るとは…」と感慨深げだった。電子版の売り上げは、紙の6.6倍と、電子オリジナル作品を除けば異例の状況となっている。

 月刊誌の「別冊少年マガジン」では『進撃の巨人』以来10年ぶりとなる絶望をテーマにしたコンペを通過し、2020年4月号で連載を開始した同作。しかし、読者アンケートが不調で、単行本1巻の売上不振を受けて誌上連載は第7話をもって終了。アプリ媒体「マガポケ」への掲載先変更を余儀なくされた。当時を「人気が芳しくないとは聞いていたのですが、初めての連載だったので、試行錯誤をするような余裕はなくて、目の前の一話一話をどう面白くするかで精一杯でした」と振り返った。掲載先変更を「“助かったー!ラッキー!”と思いました。元々は紙媒体で連載したいという気持ちが強かったので、別マガで連載できたのは嬉しかったのですが、連載が続けられる、続きが描けるチャンスがもらえた、ということで純粋に嬉しかったです」と前向きに受け止めたことが、飛躍の起点となった。

 担当の編集者は「別マガでのアンケートや、単行本の売上があまり芳しくなかったんですが、マガポケでの売上がなかなか良かったということで、別マガチーフから『終了かマガポケ移籍を選んでほしい』と告げられました。中武さんに電話して聞いたところ『移籍します!ありがとうございます!』と二つ返事だったので、その次の号から移籍させていただきました」と回想。さらに「元々僕は、この作品の最初のネームを見たときから、『売れるとしたら電子だな』と思っていたし、中武さんにも伝えていたんですが、本人の『紙媒体で連載したい』という意向が強かったので、別マガのコンペに出した、という流れでした。1巻が出るときも、紙の宣伝ではなくて、マガポケ内での宣伝にお金を割くお願いをしていて、そのときの数字が良かったおかげでマガポケ移籍できたので、“なんとか首の皮一枚つながったな…”という感じです」と続けた。結果として、この見通しは正しかったことになる。

 同作は陰惨ないじめ被害を受けた主人公・漆間俊が、加害者への復讐のため鬼と化すサスペンス劇。中武氏は「月刊誌の別マガに比べて、週刊連載のマガポケでは、1話あたりのページ数が少なく、そのために、短いスパンでちゃんと見どころが入るような話作りを意識するようになりました。それが結果的に作品に合っていたような気がします」と移籍後の変化を説明。「はじめて手応えを感じたのは、移籍して2ヶ月くらいしたときに、担当さんから『めちゃくちゃ売れてるよ』ってLINEがきたときですね。ただ、その時は“一過性のものだろうな”と思って、まだ全然不安でした。担当さんがバナーのデザインや宣伝で色々工夫して頑張ってくれていたので、その効果が出ているだけだろうな、と」。そうは言うものの、単行本2巻からの好調が続き、今回の成果に至った。

 中武氏は1993年5月25日生まれ、和歌山県出身の28歳。小学校低学年から漫画を描き始め、2016年4月発売の「マガジンSPECIAL」にて『青春最終決戦(あおはるさいしゅうけっせん)』でデビューを果たした。単行本重版分は7月上旬より流通予定。「これからも読者の皆様、『十字架のろくにん』をよろしくお願いいたします!」というシンプルな言葉に、決意を込めていた。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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