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【篠山輝信】一過性のブームで終わらせてはいけない「文庫X」

多方面で活躍している篠山輝信
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 「ボクのイチオシ=2=」

 ブームもいくぶん落ち着いたことだしもう言ってもいいと思うけど、本書「殺人犯はそこにいる」は少し前に話題になった文庫Xの正体です。

 ある書店員が、この本を少しでも多くの人に読んでもらうために、カバーをかけてあえて中身をわからなくして店に置いたのが話題になったあれです。ブームが一段落したと言っておきながら、それをあえて紹介するなんて変に思われるかもしれないけど、この本ばかりは事情が逆です。つまり、絶対に一過性のブームで終わらしてはいけないとても重大な内容だからです。

 本書は、事件ノンフィクションの大著で、冤罪事件としても有名な足利事件をはじめ北関東で起きた一連の事件を「北関東連続幼女誘拐殺人事件」としてとらえた著者の、その徹底した調査報道の詳細が描かれています。そこで見えて来る事件の全貌とは、有罪が確定しそれまで犯人とされていた方の無実、真犯人の存在、裁判で有力な証拠となったDNA型鑑定の杜撰さ、すでに死刑が執行された事件(飯塚事件)の冤罪の可能性を否定するために真犯人を捕まえようとしない法治国家の矛盾。

 本書は読み物としても抜群に面白いです。別々だと思われていた事件の共通点をみつけ一連の事件とみなし、真犯人を探すために、すでに解決済みとなっている事件の冤罪を証明していくながれ。鋭い洞察力や圧倒的な行動力、それらを生み出す著者、清水潔さんの一貫した義憤の想いは読者の胸を打ちます。そして、とうとう真犯人とおぼしき人物を特定し、直接話を聞きに行くくだりは本書の白眉です。

 事実は小説よりも奇なりと言うけれど、これが今現在の日本で起きている、という事実の圧倒的な重さに僕は読んでいて何度も手が震えました。それは、殺人犯はそこにいて僕らのすぐ近くで普通に暮らしていることへの恐怖であり、警察や検察という私たちが正義と信じる存在が抱えている矛盾への憤りであり、愛する存在を失った遺族の喪失の深さであり、何よりも、無惨に殺され幼くしてこの世を去ることになった少女たちの無念が胸に刺さるからです。

 この本を読み終えたあと、きっと誰もがこう思うはずです。すこしでも多くの人にこの本を手に取ってもらってこの事件のことを知ってもらわないと、と。文庫Xを考えた書店員じゃないけれど、そういう想いがあったからこそ僕としても自分のコラムで取り上げないわけにはいかなかったんです。

 ◆篠山輝信(しのやま あきのぶ)1983年12月10日、東京都出身。俳優。映画、舞台などに出演しつつ、NHK「あさイチ」のリポーターとして活躍。

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