【半崎美子】雪…父の反対を押し切り北海道から上京した、あの朝

 「土の中からこんにちは=2=」

 雪を見るとよみがえるのは、17年前父の反対を押し切って北海道から上京した朝の日の事です。

 札幌の大学に入学して一年、突発的に音楽に目覚めた私は大学を中退して上京したいと父に懇願しました。毎晩父が帰ってくるのを待っては、許しを得られるまであらゆる切り口で説得を試みましたが、泣いてもわめいても、結局父が首を縦に振ることはありませんでした。今思えば、幼い頃から何事も長続きせず、好奇心は旺盛なのに飽きやすい性分だった私の一大決心など、説得力は皆無です。

 一文無しの19歳が音楽で生きていくと決めて、なんのツテもなく上京するにあたり、唯一道がひらけた瞬間がありました。それは住み込みのパン屋さんで働ける事になった時です。水面下で実は応募していたのですが、ちょうど17年前の今頃、その合格通知のような電話を受けた私は、まるで歌のオーディションにでも受かったかのように飛び上がって喜びました。

 父は最後まで反対し、ほぼ家出同然で上京することになった朝、会社へ行こうと家を出た父を追い「お父さん、行ってくるからね。頑張ってくるから!!」と背中に投げた私の言葉に、父が振り返る事はありませんでした。あの晴れた雪の日の朝、悔しかったのか悲しかったのか、溢れた涙には色んな感情が混ざっていたように思います。

 住み込みのパン屋さんで週に6日働きながら曲を書き、やみくもにデモテープを各所へ持ち込んでいた当時の自分を思うと、父に認めてもらうまでは帰れないという覚悟のようなものがあったのかもしれません。

 そんな事を思い起こしながらレコーディングした「明日への序奏」という新曲は、助走を17年間続けてきた私だからこそ書ける歌があると思い形にしました。助走を長く続けられたのはきっと母の応援と父の反対があったからだと思います。

 ◆半崎美子(はんざき・よしこ)1980年12月13日生まれ、札幌市出身。札幌大学を1年で中退、歌手を目指して上京。パン屋で住み込みアルバイトをしながら音楽活動を続けた。芸能関係者にだまされた経験からレコード会社や事務所に所属せず、モールに飛び込み営業をかけるスタイルで場数を踏む。“ショッピングモールの歌姫”“泣かせ歌の女王”と称される。

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