【篠山輝信】残酷だけどあたたかみのある映画「スリー・ビルボード」

 「ボクのイチオシ=1=」

 はじめまして、篠山輝信です。アッキーって呼ばれています。これから、月イチで僕のイチオシを紹介していきます。

 記念すべき(?)連載初回に僕がどうしても紹介したいのが、2月1日から公開される映画「スリー・ビルボード」。僕は随分前からこの映画の脚本と監督をしているマーティン・マクドナーの大ファンなんです。映画監督としてはまだそこまで知られてはいないかもしれませんが、この人、演劇の作家としてはかなり有名な人で、はっきり言って存命する劇作家の中では僕は一番好きです。

 どんな作風かと言うと、人間の汚いところや残虐なところをこれでもかってぐらい強烈に描きながらも、それがあくまでもユーモラスで、最終的にはとてもあたたかみのあるドラマを書く。ものすごく簡単に言うとブラックコメディってことになるんだと思う。

 この人のお話にはわかりやすい善人とかはまず出てこないし、基本ほとんどの人が屈折していて、陰湿で、ときにはきわめて暴力的ですらある。そんなやつばかり出てくる話観たくないよって人ももちろんいらっしゃるだろうけど、でも僕は思うんだけど、結局のところ僕たち人間って多かれ少なかれそういう存在じゃないですかね?

 そういう人間の本質的な部分から絶対に目を逸らさないっていうこの作家の誠実さに僕は個人的にすごく好感がもてるし、そのうえで厭世観だけじゃなくて、ろくでもない世の中で生きている、しょうもない私たちだからこそ、見ていて笑えちゃうし、愛おしさすら感じずにはいられない。すごく残酷な話を書く作家だけど、僕はこの人の作品を観ているとなんだかすごく安心します。

 ほんとに脚本が見事だし、この映画の結末はこれまでのどの映画にもない展開を見せる。そこにはこの作家の世界への眼差しみたいなものの余韻が溢れていて、僕は大好きでした。主演のフランシス・マクドーマンドの肝っ玉母さんっぷりは圧巻だし、どのキャストの演技も素晴らしい。ほんとに度肝を抜かれる作品ですよ。必見です。

 あっ、でももしかするとデートには向かないかもしれません。一応、忠告しといたからね。

 ◆篠山輝信(しのやま あきのぶ)1983年12月10日、東京都出身。俳優。映画、舞台などに出演しつつ、NHK「あさイチ」のリポーターとして活躍。

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