【大場久美子 30】壁に耳あり障子に目あり、隣の部屋には大場久美子。
聞こえちゃうのよねー、聞いちゃうのよねー。私への一言や悪口。偶然じゃない必然。私への愛のメッセージ、私はそう思っています。
所属事務所がある日突然なくなって、私は一人きりになった。マネジャーを頼む余裕なんてなかったし、自分一人でなん役もこなした。
声を変えて本人以外の人物を演じての電話の対応。「…ひぇ!」いつも現場で優しく話をしてくれていた人の声が怖い、ガツンガツンとプレッシャーもかけてくる…。
「ひぇ!」芸能人としての私に接していた時は、ヨイショしてくれていたんだなと思った。
仕事現場には一人で行く。スタッフさんに「あれ…今日はお一人ですか?マネジャーさんは?」と聞かれるのが恥ずかしかった。
ある日、特番の収録で出演者が多く楽屋が足りず、アコーディオンカーテンで仕切られた部屋に案内された。
お化粧をしているとカーテンの隣に人がぞろぞろ入ってきた。何かの制作会議らしい。カーテン1枚だけだから嫌でも話の内容が聞こえてくる。私が一人で頑張っている事を知っていた大女優さんが、主役のドラマに私を推薦してくれていた。そのドラマのキャスティング会議だった。「…ひぇ!」会議が始まるなり私の話題だ…「○○さんが推薦してる大場久美子だけどさー、使わないとダメかなー。○○さん推薦だからなー、今大場久美子って落ち目じゃん、きついよなー役もないし」
私に聞こえていますって声を出そうか出すまいか…。でも私は黙って最後まで聞きました。広いテレビ局の中で、それもカーテン越しにこのタイミングで自分の話を聞く確率はすごい事だもの。きっと今の自分に何かを気づかせてくれるために私に聞かせてくれている言葉なんだと思ったからです。
ある時は、隣の車の空いた窓から聞こえた言葉。「大場久美子、背がちっこいよな、よくこんなトレンディードラマ出来る(出演)よな。大場久美子ってもう終わってんじゃん」
そんなたくさんの言葉に心から感謝しています。
母がよく言っていました、「人からの言葉は、自分をダイヤモンドに磨いてくれる研ぎ石」。