【大場久美子 28】無機質なマニュアルに心のしずくを一滴
私はネット販売をよく利用する。ポチッとすれば何でも自宅に届く。本当に便利な世の中だ。リクエストやメッセージも用件のみ文字で伝える。そこに人間の感情はいらないのだ。
健康器具が大好きな私は、足湯バケツを探していた。足湯をしながらマッサージバイブ機能があって、ゲルマニウムパウダーデトックスが使える商品を選んだ。「ゲルマニウムが使える」が売り文句だったが、付属で付いてきたパウダーは、ほんの数回分だった。
ネットでは同じ物を検索できず、メーカーに追加注文を問い合わせると「そのパウダーはもうありません。入荷の予定もありません。ゲルマニウムパウダーなら他社でも出していますよ。」
「必要な付属品が手に入らない商品を売っているのですか?」と質問をすると「それ以上はお答えしかねます。上司に聞かないと分かりません。」何を何度聞いてもロボットのように同じ言葉を繰り返すだけ。
普通は「ハズレな物を買っちゃったなぁ」と返品できる物は返品してそれで終わりとみんなは言うけれど…。
私は粘りましたよ3日間。入れ替わり立ち替わり苦情受け付けの方々が電話口に出てきては同じマニュアル言葉を繰り返す…。
3日目の最後に電話口に出た若そうな女性。話し続けて3時間後くらいに泣きはじめて…。泣きはじめたキッカケの私の言葉「あなたがこの商品を買ったらどんな気持ちになりますか?組織の中で答えづらいと思いますが、あなた自身の心の言葉が聞きたい」。答えは、私が感じたことと同じであること、返事まで1日時間をくださいと…。
次の日、私がリクエストしてかなわなかった社長さまとのコンタクト。彼女は社長室の扉の前で社長が出て来るのを待ち構え一言、今までのことを伝えたそうですが、社長さんからの返事はなかったそうです。私はびっくりしました。自分の首をかけてまでの彼女の行動に。
付属品なんてどうでもよかった。マニュアルではないその心の一言が聞きたかった。私は彼女の精いっぱいのお心に、ありがとうございましたと伝えると、どちらからともなく号泣になりました。