【大場久美子 20】おやじは死にました。

 2015年12月31日朝早く父は息を引き取りました。長い長いガンとの戦いが終わりました。

 余命半年と宣告されてから15年以上、時折大きくなった腫瘍を切除したり、ガンに栄養がいかないようにガン細胞のまわりの血管を塞(ふさ)いだり。

 父とは一緒に住んでいなかったのですが、腹水がたまって自分では思うように動けなくなったこと、ホームグラウンドの病院にわが家の方が近いことなどを理由に体調が落ち着くまでと引っ越してきました。その時にはすでにガンが肺に転移していて、もって3カ月ですとお医者さんには言われていましたから、自宅に戻ることはもうできないだろうと思いました。

 わが家に来て1カ月ほどでした。腹水がたまりパンパンにふくれたお腹には、食べ物が一口入る余裕もありませんでした。それでも腹水を抜こうしなかった父。自分でも調べていたんでしょうね。腹水を抜くと寿命が短くなる可能性があることを。

 担当医と本人と話し合ってもらって腹水を抜くことになり入院。入院してすぐの検査で、先生からあと3日もつか…と。一瞬にしていろいろな決断を迫られました。本人に余命を知らせるべきか、腹水を抜く必要が本当にあるのか、家に連れて帰ろうか、頭の中でたくさんの言葉が飛び交いました。

 セカンドオピニオンも含め、その時私は、3人の医師とコンタクトを取っていました。どの医師も答えは一緒でした。本人に生きたいという意思があるなら知らせない。

 真面目な父は、病気を治そうと医師の指導や薬も食事もきっちり守り、飲む水分量も排尿も毎回用紙に記入していました。余命を知っている私は、父に宣告して大好物をお腹いっぱい食べさせてあげたかった。もう必要のない大量の薬も飲ませたくなかった。でも父の生きたいという強い意志を確認したので、宣告しないことを選びました。

 一週間はもってくれるはずの抜いた腹水も、午前中抜いて夕方には元に戻っていました。「明日家に帰らないともう帰れません。」の医師の言葉に帰宅を迷いましたが、父の判断で自宅に戻りました。

 大みそかの朝、私がいつもの何気ない言葉をかけている間に父は、長い長い眠りにつきました。

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