知床観光船事故 船上プロポーズのはずが 「せめて2人一緒に見つかって」家族悲痛

 北海道・知床岬の先端付近を捜索するヘリコプター(共同通信社ヘリから)
 涙ぐむ父親の剛さん=北海道斜里町
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 北海道・知床半島沖で子ども2人を含む乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU 1(カズワン)」が消息を絶った遭難事故は25日で発生から3日目。プロポーズを予定していた若いカップルは知床の絶景を眺めに向かった海で行方が分からなくなった。家族は「せめて2人一緒に見つかってほしい」と悲痛な思いを募らせた。第1管区海上保安本部は25日、これまでに死亡が確認された11人のうち、3歳女児を含む3人の身元を公表した。

 カップルの1人は北海道北見市の鈴木智也さん。観光船が出発した斜里町の港では25日早朝、父親の剛さんら家族が訪れ、一日も早い息子の帰還を願って涙を浮かべた。

 智也さんは交際中の彼女の誕生日に当たり、智也さんの車で彼女にはサプライズで知床旅行に連れだし、船上でプロポーズする予定だった。一緒に住んでおり、旅行には指輪も持参。事故当日、剛さんは「誕生日おめでとう」と連絡、乗船前の彼女が喜んでいる様子を写した10秒程度の動画が返信されてきた。

 事故をニュースで知り、智也さんにメールを送り、電話をかけたが全くつながらず、その日のうちに知床へ。智也さんの車は運航会社の駐車場に残されたまま。「つらくて見られない」という。

 時間だけが過ぎ、剛さんは最悪の結果を覚悟しているという。10人が見つかった24日には遺体安置所に足を運んだが、智也さんと彼女の姿はなかった。剛さんにとって「2人で見つかって初めて一つ」。見つかれば「冷たい水にいたから、あったかい布団を早くかけて休ませてあげたい」と気遣いつつ「若い人の命がなぜ失われるのか、本当に許せない」と憤りを募らせた。

 運航会社への不信感や捜索状況に関する説明の少なさには怒りを覚える。社長は謝罪こそしたものの、事故当日の運航については「私は大丈夫だと思った」と釈明。「ではなぜ沖は波が高いのに出たのか」と質問した剛さんに「すいません」と答えただけだった。なぜ事故が起きたのか。なぜ波の高い中で船を出したのか。「真実をとにかく知りたい」と切に願った。

 この日、死亡が確認された、加藤七菜子ちゃん(3)=東京都葛飾区=の祖父母は涙声で名前を呼びかけた。一緒に乗ったとみられる両親は不明のまま。関係者によると、祖父母は町内の施設で七菜子ちゃんと対面して身元を確認。ひつぎに眠る姿を目にし静かに名前を呼びながら涙を流したという。

 午後からは身元が確認された遺体の引き渡しも始まり、1人の遺体が遺族とともに福島県へ。26日には別の2人の遺体もそれぞれの遺族と北海道を空路で離れる見通し。

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