柳家小三治さん死去 師匠の指摘きっかけに「落語」探求し続けた生涯

 落語家で人間国宝の柳家小三治(本名・郡山剛藏=こおりやま・たけぞう)さんが7日午後8時、心不全のため死去していたことが10日、分かった。81歳。東京都新宿区出身。落語協会が公式サイトなどで発表した。故人の遺志により、葬儀は密葬の形で、近親者のみで執り行われた。通夜、葬儀・告別式、お別れの会などは予定していない。今月2日、東京・府中の森芸術劇場での「猫の皿」が最後の高座となった。

 7日死去した落語家の柳家小三治さんは、落語とは何か、面白いとはどういうことかを問い続ける生涯を送った。

 ラジオの素人演芸番組に出ていた小三治さんは高校卒業後、五代目柳家小さんさんに入門し、頭角を現した。若き日、師匠から「おまえのはなしは面白くねえな」と指摘されたことから本格的な探求の歩みが始まった。

 当時、自分の高座は爆笑で受けていると自負もあった。小三治さんは「どこが面白くない、とかじゃなく、はなしそのものが面白くないって言う。どうすりゃいいんだって思いましたよ」と折に触れて、師匠の言葉の衝撃を振り返っていた。

 1人の演者が高座に座ったまま、老若男女、動物や神様など多くのキャラクターを演じ分け、観客を笑わせる落語。厳しい指摘を受けた小三治さんは師匠の芸を改めて見つめ、落語や笑いに詳しい俳優小沢昭一さんのラジオの語りに耳を傾けた。何がいけないのか、笑い、おかしみとは何かと自問自答を繰り返した。

 たどり着いたのは、聴いている人を笑わせようとして、あれこれ仕掛けてしまう作為の否定。思わず笑ってしまう、そんな笑いの追求だ。

 「昔はこう演じないといけないと思って、演じてました。今は人のためにやっていない」と晩年語っていた。さらに「自分が何を感じ、どう生きたいのかを皆さんに感じてほしい」とも言った。

 ある独演会で「千早ふる」の出来がすばらしく、「もう今日は落語はできません」と言って次の落語はやらなかったという逸話も。乗りに乗って気持ち良さそうに「野ざらし」を語っているのを記者も聴いたことがある。客席が浮き浮きした雰囲気に包まれ、実に幸福な時間だった。

 少し上に立川談志、三遊亭円楽(五代目)、古今亭志ん朝といった個性的な落語家がいる中、小三治さんは黙々と独自の道を歩み続けた。落語協会会長就任はファンには意外に思われたが、将来性を見込んで春風亭一之輔さんを21人抜きで真打ちに抜てきするなど、思い切ったことも進めた。

 晩年は体調が悪く、今春は一時入院。7月に開かれた取材会では「今日の高座でおしまいかなといつも思っている」と言う一方で「駄目なら駄目で、新しい自分の在り方がどこか出てくるのじゃないかという希望もある。だから、ここのところ楽しい」と話していた。どこまでも納得のいく高座を目指していた。

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