嘉門タツオ 看護師へ捧げる歌 笑い封印でコロナ禍の医療従事者に心を込めて

 シンガー・ソングライターの嘉門タツオ(61)が、コロナ禍の中、過酷な医療現場で働く看護師の人たちに思いを馳せた楽曲「看護の現場」を書き下ろし、自身のYouTube公式チャンネルで配信している。それは伯母であり、看護の第一人者と言われる川嶋みどりさん(89)=日本赤十字看護大学名誉教授=へ捧げる歌でもある。

  ◇   ◇

 あの、替え歌名人の嘉門タツオが、真面目な顔で切々と歌い上げる。まるでバラードでも口ずさむように。なんのオチもなく、笑いもない。ただひたすら、抑揚を殺して…。

 「看護の現場」は、忙しく働く看護師たちの姿が目に浮かぶ生々しいタイトル名だ。伯母の川嶋みどりさんも、その現場で働き、看護師と患者のよりよい関係性を探究。看護教育にも力を入れ、「患者は看護の最高の教師であり、ベッドサイドは最高の教室」と表現した。患者第一主義は、母親のもつ強い愛情にも通じる思いやりに満ちた精神だ。

 川嶋さんは2007年に第41回ナイチンゲール記章を受章し、当時の皇后美智子様から授与された。看護の礎を築いた伯母の努力や苦労が、新型コロナに苦しむ現実の医療現場と重なり、嘉門の心を動かした。

 「使命感としか言いようがない。川嶋先生の歌をまさか嘉門が!とか、全然オチがないやんとか言われます。笑かしてくれるのが嘉門という既成概念があるみたい。でも淡々と歌うほうが、かえってメッセージとしては伝わるのかな」

 きっかけとなったのは昨秋、出版された「看護の羅針盤 366の言葉」(ライフサポート社)という川嶋さんの著書。70年にわたる看護の経験をもとに著した130冊を超える本の中から366の珠玉の言葉を選んで編纂されたもの。読んだ瞬間、伯母の気持ちを歌にすると決めた。

 「『墓参るDAY!』『旅立ちの歌』『HEY!浄土』の終活3部作のような、笑えるけど笑いにくい歌とかね。僕もいろんな表現ができるようになってきたということで」

 母・敏子さん(87)の姉にあたり、日本赤十字看護大学名誉教授の川嶋さんを「親戚のおばちゃん」と呼ぶ嘉門は「歌のセリフはみんなおばちゃんの言葉」と言う。今では看護や介護のスタッフと交流する場を見つけ、その現実に触れる経験もしている。

 「介護をする人、される人の気持ちが少しでも分かればと。楽しく穏やかな気持ちになれるような、みなさんの背中を押すことのできる歌を歌えればと思ってます」

 子どものころから賑やかで、大人になっても「今はモーむす、だれか分からない」とか「かつお風味のふんどし!」とか、笑いのセンスを追求してきた鳥飼達夫、いや、嘉門タツオの世界観が、少しずつ変わってきている。(デイリースポーツ・宮田匡二)

 ◆嘉門タツオ(かもん・たつお)1959年3月25日生まれ。大阪府茨木市出身。高校在学中に笑福亭鶴光師匠に入門。19歳で毎日放送の人気ラジオ番組「ヤングタウン」レギュラーに。のちに破門され、ギターを引っ提げライブ活動開始。83年に「ヤンキーの兄ちゃんのうた」でデビュー。「嘉門」はサザンオールスターズ桑田佳祐の命名。2017年に「達夫」をカタカナ表記に改名した。「鼻から牛乳」「アホが見るブタのケツ」などのヒットがある。

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