将棋の藤井聡太七段（１７）が、渡辺明三冠（３６＝棋聖、棋王、王将）に挑戦する第９１期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第３局が９日、東京・都市センターホテルで指され、渡辺三冠が１４２手で勝利。通算成績を１勝２敗とした。史上最年少でのタイトル獲得に王手をかけていた藤井七段は、先手で得意の角換わり腰掛け銀を採用したが、中盤に細かいミスが出て無念の敗戦。最年少タイトル獲得は１６日に大阪市の関西将棋会館で行われる第４局に持ち越しとなった。西川和宏六段（３４）が対局を分析した。

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　これまでタイトル戦ではストレート負けを喫したことがない、さすが百戦錬磨の渡辺棋聖という将棋でした。双方研究しており、手数が７０手目を超える辺りまでは、１手１０分も使わない将棋でしたが、最後は渡辺棋聖の時間の使い方のうまさが際立ちました。

　藤井七段は得意の角換わり腰掛け銀から攻めていたような感じでしたが、７２手目の△８六歩から渡辺棋聖の反撃が始まりました。勝敗のポイントは渡辺棋聖の９０手目△９九飛としたところでしょう。藤井七段が▲９八銀と受けましたが△６七角成としました。渡辺棋聖としては相手に駒を渡せば▲５三銀成からの攻撃が怖いところでした。

　その後、渡辺棋聖は細かい攻めをつないで勝ちに結びつけました。今の将棋界で、細かい攻めをつないでいく将棋は渡辺棋聖が一番だと思います。

　藤井七段が９９手目に▲９四桂と受けましたが、あれは予定になかった１手だったと思います。ただ藤井七段もさすがというしかありません。形勢が不利になりながら、相手がひとつ間違えれば逆転しかねない緊迫した状況を作りました。それでも持ち時間を残していた渡辺棋聖の指し手は冷静で、逆転を許しませんでした。これで渡辺棋聖の１勝２敗。棋聖戦五番勝負の行方がさらに面白くなりました。