笑いに生き、喜劇人であり続けた志村さん「お笑いは世界中の人に通じる」

 デイリースポーツでコラム「タイガー&ドラゴン」を連載しているジャーナリスト、中村竜太郎氏が、志村けんさん死去を受け1日、特別寄稿した。

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 志村けんさんが亡くなった。子供の頃「全員集合」に夢中になり、以来「バカ殿様」などたくさんの番組で笑わせてもらった。

 志村さんにサシでインタビューしたのは週刊文春時代の2012年。乃木坂の事務所で会った志村さんは、世間の「爆笑コメディアン」のイメージとはまったく違い、静かでシャイな方だった。落ち着いた物腰で、丁寧な言葉使い。最初は「よく覚えてないなあ」とか「どうなんだろう」という言葉が続き、噛み合わないような空気だったが、長く会話するうちに笑いが起きるように。けれど自分のことを打ち明けて話すのは、どこか照れくさいのだろう、終始はにかんだ笑顔だった。

 最も印象的だったのは、お笑いとはなんですかという難しい質問をしたとき。タバコをプカっとひと口吸って、ちょっと考えこう語った。「お笑いはね、説明がいらないからね、だから、理屈とか、これがこう面白いとか、解説者みたいなのはあんまり好きじゃないんですよ。僕の考えではだいたい動きが7で、言葉が3の配分なんです。だからお笑いは世界中の人に通じると思うんですよね。お笑いってよくわかんないけど、元気とパワーをもらえるよね。笑ってるとさ、また頑張ろうって思えるじゃない」。

 「コント職人」と称される志村さんは「作り込んだ笑いが好きで、結局それしかできない」と言い、ストイックな姿勢を貫いてきた。高校生のときに見た映画『底抜けてんやわんや』の、ジェリー・ルイスがひとこともセリフをしゃべらないコントに影響を受け、日本では藤山寛美さんや三木のり平さん、由利徹さんら喜劇人が好きだと語った。そして同じく、東八郎さんの「芸人は本当は利口だと思わせようとしたり、文化人面したりするようになったらおしまい」という言葉に感銘を受けたという。また、「芸人(寄席の漫才師や落語家)と喜劇人(舞台中心)は俺のなかでは違うんです」と言い、「喜劇人」でありたいという気持ちを吐露した志村さん。トーク主流のテレビ界に対して批判的かと思いきや、「みんなそれぞれ『笑い』を求めてやっていることだからね」とおおらかに語り、強い“お笑い愛”が伝わってきた。ひとの気持ちがわからなくては、お笑いはできない。生前そう語っていた志村さんは「最高の喜劇人」だった。多くの笑いを届けてくれて、ありがとうございます。安らかにお眠りください。

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