厳戒態勢の米ワシントン州 1週間ぶりの買い物で見えた街の“変化”
1週間前と同じ木曜日の朝、同じ大型スーパーへ買い物に出掛けた。記者の住む米ワシントン州では州民にその3日前に新型コロナウイルス感染拡大防止策として自宅待機命令(不要不急の場合を除く。散歩や運動のための外出は可)が出たばかり。その影響なのか、前回は見つけるのに時間がかかった駐車スペースは店の入り口付近がガラ空き、駐車場まで続いていた列も短くなっていた。
前を歩く人、すれ違う人の顔を見る。マスクをしている人は微増。前回が20人に1人だったとすると、この日は15人に1人といったところか。ワシントン州の感染者数(日本時間28日現在、約3200人)は、約4万5000人のニューヨーク州、同9000人のニュージャー州、同4600人のカリフォニア州に次いで全米4番目に多い。染みついた習慣なのか、米疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインの影響なのか、自宅待機命令が出ている危機的状況でも米国人(ワシントン州民?)は意に介さず。マスクのほとんどがアジア系なのはこれまでどおり。その代わりというわけではないだろうが、医療用の薄いゴム手袋をしている人が目立つ。手からの感染を警戒しているということなのだろう。
入口前に立つホワイトボード「OUTOF STOCK(本日の品切れ)」をチェックする。
・手指除菌用ジェル
・除菌ワイプ
・ハンドソープ
・ビタミン剤
・消毒用アルコール
・テーブル用ナプキン
・トイレットペーパー
・酢
・玄米
・豆、豆製品
1週間前は入店前にトレイレットペーパー(30ロール)、除菌ワイプ(5箱)、キッチンペーパー(12本)を購入するために黄、白、赤の整理券(1家族各1枚)を配布されたが、この日は赤だけ。店員に聞いてみると「品薄の製品はその日の朝にならないと数が分からない。たとえば、トイレットペーパーだと、先週は13パレット(1パレットあたり25袋。13×25=325袋)だったけど、今日みたいに5パレット(125袋)の時もある」と説明してくれた。
注意事項を記した掲示板はこの日もあった。
-ソーシャル・ディスタンシングを守ってください(他人との間隔は6フィート=約1・8メートル)
-咳やくしゃみをする時は口を覆ってください
-係員の合図があるまで三角コーンの位置でお待ちください
「店内が混雑しないように300人になった場合はお客さまの入店を制限しています。15分ごとに除菌ワイプで売り場を拭くようにもしています」とは年配の男性店員。1週間前よりも買い物客が少ない。3日前の自宅待機命令の影響についても聞いてみると、「確かにお客様の数は減りましたね。もしかしたら、今日はシニアのお客様限定で通常より2時間早くオープンしたというのもあるのかもしれません」。
入店時に見落としていたが、ホワイトボードの下の「特別営業時間」としてこう記されていた。
「60歳以上もしくは身体障害者のお客様のために火曜日と木曜日は午前8時から9時まで営業致します」
感染拡大を防ぐため、安心して買い物ができるようにするための店側の工夫だった。
買い物から戻り、テレビでニュースを見る。
「米国の感染者数が中国とイタリアを抜いて世界最多となりました」
CDCが中国・武漢から帰国したワシントン州シアトル在住の30代の男性を米国初の新型コロナウイルス感染者として発表したのが1月21日。たった2カ月で国内の感染者数は10万人を超えてしまった。(デイリースポーツ米国駐在記者・小林信行)