電子コミック業界の今、漫画家・編集に聞く 読者コメが励み 「絶版」減る

 スマホで気軽に漫画作品を読める電子コミック市場が存在感を増している。23日には「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2018」が発表され、大賞に「かわいいひと」(白泉社、斎藤けん)が輝いた。

 運営サイドによると、読者投票の得票数のみで各賞を含め決定した“ガチンコ投票”による賞だというが、実際に支持された側は電子コミックの現状や今後についてどう考えているのか。漫画家、編集者、サイト運営側に聞いた。

 まずは漫画家の視点から。「かわいいひと」で大賞を受賞した斎藤氏は電子媒体で作品を発表する際は、紙媒体と比較して「文字が読みやすいように。コマ割りがすっきり見えるようにはしています。拡大しないぐらいでは読めるように」心がけていると話す。ストーリー面でも「(仕事などの)合間とかに読んで、ほっとしてくれること」を意識し、読み手に“やさしい”構成を意識しているという。女性部門賞を受賞した「私は天才を飼っている。」(小学館)の七尾美緒氏も「電子だときれいに出ないので、効果トーンもシンプルにするようになったかなと思います」と表現方法で工夫しているという。

 取材を受けてくれた作家全員がそうというわけではなく、女性部門賞の「永久指名おねがいします!」(ソルマーレ編集部)の著者・カナエサト氏は「感覚としてはないです」、「コタローは1人暮らし」で男性部門賞を受賞した津村マミ氏も「まったくないです」と意識をしないと語っている。ただ、カナエサト氏の場合は「最新話が配信されたら、いつも感想がついているので」と読者投稿のコメントが励みになっているといい、こうした反応がストーリーに反映される可能性は高そうだ。

 編集者の視点はどうか。津村氏の担当者は「今すぐ(漫画を)読みたいという衝動に応えられる」ことが電子コミックの最大の利点だと分析する。さらに1つヒット作が出た時に、過去作品にもスポットライトが当たるという特徴があり、七尾氏の担当者は「絶版がなくなったことも本当にうれしいなと思います」と感慨深げだった。ただ、それは裏を返せば、他の作品も市場のパイを争うライバルとして残るということになる。「過去の巨人というとんでもないライバルと永遠に戦い続けるということ」とも話していた。

 「-電子コミック大賞」を主催した「コミックシーモア」を運営するNTTソルマーレの取締役・電子書籍事業部長の加藤公隆氏は「今後はデジタルが先になったりするとも思うんです。電子ならではの売れ筋を紙の世界に持ち込みたい」と電子コミック業界の未来を語る。「コミックシーモア」の前身「コミックi」がサービスを開始したのが04年8月。当時と比べると、電子コミック市場が「完全に今は一般化しています」と自信を深めている。

 今後は、ある作品を求めに電子書店を訪れたユーザーに、いかに幅広く商品を売り込むことができるかが課題だという。

 「新しい作品との出会い方は、書店だとPOPで飾って、POPでしか目立たなかった。『この人にお勧め』というのが電子ならではかなと思います。レコメンドみたいなものは高度化すると思っていまして、その中で、電子書店としてはいかに新しい本との出会いをうまくつくってあげられるか(だと思います)」

 「-電子コミック大賞」は第1回。宝島社の「このマンガがすごい!」のようなステータスを築いていけるか。作家、編集、電子書店。それぞれの戦いはまだ、始まったばかりだ。

 【「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2018」の各賞】 ▽大賞「かわいいひと」(白泉社、斎藤けん)、▽女性部門賞 「永久指名お願いします!」(ソルマーレ編集部、カナエサト)、「私は天才を飼っている。」(小学館、七尾美緒)、▽男性部門賞 「コタローは1人ぐらし」(小学館、津村マミ)、「ラララ」(スクウェア・エニックス、金田一蓮十郎)

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