須田慎一郎氏が指摘する衆院選のポイント「自民単独過半数割れで安倍降ろしも」
第48回衆院選は10日に公示される。5年近くにわたる安倍晋三首相(自民党総裁)の政権運営を問う選挙戦。「自公両党」「希望、維新両党」「共産、立憲民主、社民など」の“3極”が競合する構図で、各党は22日の投開票に向けて臨戦態勢に入る。さまざまなメディアで活動を続けるジャーナリストの須田慎一郎氏(56)はデイリースポーツに寄稿し、予想が難しいとされる今回の選挙について、注目のポイントを指摘した。
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【須田慎一郎氏の見解】
正直言って、筆者も含めて政治記者泣かせの選挙戦になってしまった。
それというのも選挙結果が、まったく見通せない状況になってしまったからに他ならない。
改めて指摘するまでもなく解散直後、選挙戦序盤において、その“主役”の座にあったのは、間違いなく、東京の小池百合子知事が代表を務める「希望の党」だった。しかも民進党を吸収するという離れ業をやってのけ、有権者の期待も一気に膨らむこととなった。
しかしそれにしても、こんな形で4年ほど前には、曲がりなりにも政権を担っていた政党が、一夜にして消えてしまうことなど、一体誰が予想しただろうか。
まさに「一寸先は闇」を地で行くかのような動きだ。この吸収劇によって、政権交代への期待が一気に膨らむこととなったのは間違いない。
しかしそうした有権者の期待も、小池代表の「排除します」という発言をきっかけに、急速にしぼんでいくこととなった。
そもそも今回の選挙の勝敗は、どのような形で決着を見るのだろうか。その大前提となるのは、過半数ラインだ。衆院議員の定数は、465。つまり過半数ラインは、233議席となる。
そうなると自民・公明両党の獲得議席数が、トータルで233議席を下回ったならば、新たな連立パートナーを探さない限り、両党は野党に転落することになる。
安倍首相は、こうしたことを前提に勝敗ラインについて「自公で過半数」と設定したのである。
そして、その上で「過半数を取れば当然、首相指名を受ける候補として出ていく」と発言してみせた。これは、あまりにも甘い目標設定だと言わざるを得ないだろう。
なぜなら解散時において自民党は288議席、公明党は34議席、トータルで322議席を有していたからだ。つまり安倍首相の言い方では、解散時と比べて90議席近くも失っても、「勝った」ということになってしまう。
筆者とは親しい関係にある自民党幹部がこう言う。
「自・公合わせて233議席ちょっとでは、自民党内が持たないだろう。その水準では、間違いなく“安倍降ろし”が起こることになる」
この言葉の意味するところは、単に過半数ラインをクリアしただけでは、とてもではないが合格点はつけられないということに他ならない。
だとしたら、曲がりなりにも安倍政権を維持しようとするならば、どの程度の議席を獲得する必要があるのだろうか。
「自民党単独で過半数(233議席)をクリアできたならば、とりあえず安倍政権は安泰だろう」(前述の自民党幹部)
実は自民党内では、こうした声が多いのだ。言ってみれば、実質的な勝敗ラインは「自民党単独で233議席」といったところ。
果たして安倍首相は、このラインを死守することができるのかどうか。
逆に言えば、希望の党や立憲民主党は、そのライン以下に追い込むことができるのか。その点が注目ポイントになってくるだろう。(ジャーナリスト)