スカッとジャパン立役者はホラー監督

木下ほうか演じる馬場課長も人気キャラクターだ
ホラー映画の手法をバラエティーに取り入れた長江俊和監督=フジテレビ
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 視聴率不振といわれるフジテレビの中で、好調な番組が「痛快TV スカッとジャパン」(月曜、後7時)だ。6月8日放送で歴代最高の12・2%を記録するなど、コンスタントに2桁視聴率を獲得。今月17日には今夏2回目の2時間スペシャルが放送されるように、局の期待も大きい。

 番組はショートドラマを中心に構成。意地悪な上司や悪女などに、ナイスアイデアや頭脳作戦でしっぺ返しを食らわすさまを描くバラエティーだ。タイトル通り、痛快な笑いいっぱいの番組だが、実はその立役者が、ホラー映画監督であることを、ご存じだろうか。

 ショートドラマのチーフ演出を務める長江俊和氏。2003年から不定期放送されたホラーフェイクドキュメンタリー「放送禁止」は大ヒット。08、14年の映画化版のメガホンも取った。そのほかにも1997年にフジ系ドラマ「木曜の怪談’97 妖怪新聞」の演出を担当するなど、ホラー界では第一人者として知られた人物だ。

 フジ系「奇跡体験!アンビリバボー」でも再現ドラマを担当しており、同じ制作会社がつくる「スカッと-」にも、番組開始時から携わってきた。

 バラエティーとホラー監督。意外な組み合わせにも感じるが、長江監督に話を聞くと「ショートドラマにはホラーの手法が反映されている」と明かしてくれた。

 まずは登場人物。「スカッと-」のショートドラマといえば、デフォルメされた強烈なキャラクターが人気だ。木下ほうかが演じるイヤミ課長・馬場、山村紅葉演じるモンスターおばさん、小林麻耶演じるぶりっ子悪女、「ショートスカッと」と呼ばれる短編シリーズにおける津田寛治などなど…。

 長江監督は「強烈な悪役が主役で、作品を引っ張るのはホラーとの共通点」と指摘する。「13日の金曜日」のジェイソン、「エルム街の悪夢」のフレディ、日本でいえば「リング」の貞子など、人気ホラーには強烈なダークヒーローがいる。そう考えてみると「スカッと」の山村紅葉は、貞子以上の恐怖キャラと思えてくる。

 長江監督は「『スカッと』は企画段階から“役者の怪演を見せたい”という思いがあった。実力のある役者さんが自らアイデアを出して、ノリノリで悪役を演じてくれるのが面白さの最大のポイント」と明かした。

 ホラーとの共通点は、ストーリー展開にも見いだせる。

 「『スカッと』は、序盤からずっと、ムカムカさせられる嫌がらせの連続で、最後にドーンと大どんでん返しがある。ホラーは、最初からジワジワと小さい恐怖を積み重ねて、最後にドーンと最凶の恐怖がやってくる。結論は真逆ですが、構図は同じです」。

 そしてもう一つ。ホラーの手法を使っているのが「視点」だという。通常の映画などでは、場面によって、登場人物ごとの視点で描いたり、“神の視点”と呼ばれる俯瞰(ふかん)した視点で撮影されたりすることが多いが、ホラーの視点は1人称が多いという。つまり、主人公の視界から次々に恐怖が襲ってくるように撮影する。これによって、視聴者が主人公と自分が同一化しやすくなり、恐怖を味わいやすくなる効果があるという。

 長江監督は「『スカッと』も基本は1人称視点。これはドラマが視聴者の方の投稿を元にしているので、投稿者視点からぶれないようにしようという狙いです」と話し、ホラーの“視聴者同一化”と同じ効果が得られている。

 「僕が“再現ドラマ”ではなくあえて“ショートドラマ”と呼ぶのは、短くても、一流の役者による高いクオリティーのドラマを目指しているから」と長江監督。ホラー界で培ったノウハウを駆使したこだわり抜いた演出が、突き抜けた面白さにつながっている。

(デイリースポーツ・杉村峰達)

 ◆長江俊和(ながえ としかず) 1966年2月11日、大阪府吹田市生まれ。ドラマではホラー作品以外にも「富豪刑事」(05年)、「歌のおにいさん」(09年)などの演出も担当。映画では「阿波DANCE」(06年)なども手がけている。7月22日には最新小説「掲載禁止」(新潮社)を発売。

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