感動呼んだ涙の復活劇…無観客開幕戦は渡辺彩香がV 2020年女子ゴルフを振り返る

 女子ゴルフの2020-21シーズン開幕戦は昨年6月25~29日(予備日含む)に開催されたアース・モンダミンカップ(千葉・カメリアヒルズCC=パー72)だった。コロナ渦の中、無観客で行われた歴史的な大会を制したのは渡辺彩香(27)=大東建託。通算11アンダーで首位に並んだ鈴木愛とのプレーオフの末、1ホール目のバーディーで優勝をつかんだ。

 大会は荒天のために28日に予定されていた最終日が29日に順延になった。コンディション作りが難しい状況だったが、4位から出た渡辺は5バーディー、1ボギーの68を出してトップに浮上。18番パー5を使用したプレーオフでは自慢の飛距離を生かした。2打目でピンまで残り30ヤード地点まで運び、第3打をピン左奥4メートルに乗せ、下りスライスラインを見事に沈めた。

 優勝は15年樋口久子Pontaレディース以来5年ぶり、通算4勝目。インターネット中継の勝利者インタビューでは感激の涙を流すシーンが感動を呼んだ。「長かったです。ここ2、3年は結構苦しかったので…。(最後は)一番好きなラインだなと思って打ちました。入った瞬間はうれしいのと、応援してくれた人たちにようやくこたえられたという、ほっとした気持ちでした」と目を赤くしながら喜びを口にした。

 それもそのはず、この優勝は極度の不振を乗り越えての復活Vだった。フェードで250ヤードを超えるドライバーショットを攻撃の軸とし15年には年間2勝を挙げて初の賞金1億円超え。日の丸エースと期待されたが、16年リオ五輪代表を惜しいところで逃がしてから成績が低迷。18、19年はシードも喪失した。

 原因は向上心が裏目に出たことにあった。「リオに行けなかったことで自分に足りない部分を補おうとして、もっとフェードの曲がり幅を狭めてストレートっぽく打とうとか、そういう気持ちが出てきて迷いにつながった」と静かに苦しみの時期を振り返った。

 トンネル脱出のきっかけはいい意味の開き直りだった。「もう勝てないんじゃないかと悩んだこともあったけど、去年夏にやっぱり自分はフェードじゃないとダメなんだなと思った」。そこからは迷いを断ち切り、持ち球復活を目指した。オフは左へ打ち出して右へ曲がるフェードだけを練習。いきなり新シーズン開幕戦で結果を出した。

 一番好きなクラブのドライバーを気持ちよく振っての復活劇は、新生・渡辺が誕生した瞬間だった。「ホステス大会で結果を残せなかった時は自分の不甲斐なさにプロとして失格だなと思ったこともありました。今日は好きなドライバーを打って優勝がついてきてくれた。すごく楽しかった」。自分の持ち味は少しくらい曲がり幅が大きかろうと、それでも飛んでグリーンに近づくフェードボール。迷いの末に自分の宝物を再発見したことで、15年当時よりも強くたくましいプロへ飛躍するきっかけをつかんだはずだ。

 「開幕戦で幸先よく勝てたので、これからはもっともっとフェードを磨き極めたい。遠い道のりですけど、東京五輪へ向けても頑張りたい」。感激Vから半年が過ぎ、昨年9月には27歳になったが、再び夢を追いかける時間は十分に残されている。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

ゴルフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(ゴルフ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス